第2話 初顔合わせ
ギスギスしたまま、日曜日になった。
横に長い机を挟んで、両家が向かい合って座っている。
「はじめまして、
「どーもー」
ブスッとした顔は崩さずに、
「上原多香子といいます。よろしくね、
多香子さんは優しげな微笑みを浮かべて言った。病気で亡くなったお母さんとは正反対の性格だ。お母さんは
お父さんはあえて真逆の性格の人を選んだんだろうか。思わずまじまじと多香子さんをみてしまう。
「ほら、
そう言われて、私の前に座っている男の子が、多香子さんそっくりの優しげな笑顔を浮かべ、挨拶した。
「
多香子さんも美人だと思ったけど、
そのとなりに座っているのが、
「
と
ずっと
「あ、あの。私、
ペコッと頭を下げる私に、にこにこと笑顔を向けてくれる多香子さんと
ほっと安心したのもつかの間、
「あたし、ふたりの再婚、反対してます。さっきからろくに挨拶もしないで睨んでくるバカもいるし、なおさらやだ! 大体、再婚って言っても、どうせお父さんのお金目当てで再婚するんでしょ? 人の良さそうな顔して、がめついったらないわ」
それを聞いて声をあげたのが
「てめぇ、黙って聞いてれば偉そうに。大体、再婚することになったのも、テメーの親父が母さんを妊娠させたからだろ? 自分の父親の事は棚にあげてよく言うぜ!」
鼻で笑う
「はあ!? 妊娠って何よ、聞いてない!」
「言ってないもんなあ……」
頭をポリポリかいて言う、お父さん。
「おな、お腹に赤ちゃんがいるってこと?! だから再婚するの?!」
いつも堂々としている
「そうだ。順番が前後してしまったが、新しい家族として、赤ちゃんも一緒に迎えられたらと思っている。
それにすかさずつっこみをいれたのは、
「なにがめでたいんすか。脳内花畑もいいとこっすよ。どんな野郎が出てくるかと思えば、冴えないただのおっさんじゃん! 正直拍子抜けっすわ」
「ちょっと、あたしのお父さんの悪口言わないでよね! 確かに冴えないおっさんかもしれないけど、これでも管理職なんだから! お金は結構持ってるわよ。そっちこそ赤ちゃんを盾にお金目当てで迫ってるんじゃないの~?」
「んだと。部下に手を出したスケベジジイに言われたくねーわ!」
お互いに席を立ち、むむむと睨み合う
一触即発な雰囲気だ。
「
みっともない」
お父さんに言われ、渋々席に着く
「みっともないのはどっちだか!」
「いい加減にしなさい、
「こんなおっさんの何がいいわけ? 妊娠しなかったら再婚なんて話、そもそもでなかったんじゃねーの? 母さんはそれでいいわけ?」
「
「なんだよ、
私は聞いてられなくて、目をぎゅっと閉じる。きっと
「素直になってるよ、少なくともお前よりは。母さん達も困ってるだろ。もっと視野を広げて周りを見ろよ」
顔合わせのための食事会なのに空気が最悪だ。私はこういうとき、なにもできなくて縮こまるだけ。弱い自分が嫌になる。だけど今、多香子さんのお腹には赤ちゃんがいて、再婚も視野にいれて動いているんだ。私も、家族の一員としてちゃんと意見を言わないと! 私は膝に置いた手をぎゅっと握った。
「わ、私は! お姉ちゃんになるの、嫌じゃないよ。さ、最初聞いたときはビックリしたけど、でも、あの、赤ちゃんには罪はないから。だからみんなで、ゆっくり家族になっていけばいいと思うの……!」
ドキドキして顔があげられない。お願い、誰かなんとか言って!
「……いいと思う。俺も賛成」
パッと顔を上げると、
「そ、そうだよな!
お父さんがほっとした顔で言った。
「それ出されると困るんだけど」
不機嫌そうに言う
「
多香子さんの言葉を聞いて、
「……好きにすれば。どうせすぐにうまくいかなくなるだろうけど。」
「
多香子さんに抱きつかれ、慌ててもがく
「離れろよ、恥ずかしい!」
「いいじゃない、親子なんだし!
「俺は認めてねぇ! 好きにすればって言っただけだ!」
抱きつく多香子さんと照れる
「色々とごめんね。
それを聞いてふたりでふふふと笑っていると、
「なにふたりで笑ってるんだよ! 気持ちわりぃ!」
多香子さんからなんとか離れられた
「
「はあ!?」
目を見開く
「確かにあんた、子供よね!」
「てめえには言われたくないわ、このファザコン。」
「マザコンには言われたくない。」
「なんだと?」
「なによ!」
再び睨み合う
こうして始めての顔合わせが終わり、私たちはそれぞれ連絡先を交換して、家へと帰った。
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