第1話 よいこちゃんとわるいこちゃん
「再婚~!? お父さん、今、再婚って言った!?」
夏休みの始め、朝8時。私と
お父さんが急に、「大事な話があるんだ」なんて言うから、夏休みにどこか遊びにつれていってくれるのかなって期待して続きを待っていたら。
「父さん、再婚しようと思っているんだ」
私の予想は大きく外れて、思わず食べていたコーンフレークを吹きそうになった。
それとは反対に、
「再婚~!? お父さん、今、再婚って言った!?」
「言ったよ。相手は同じ職場の上原さんっていって、双子の男の子を女手ひとつで育てている、シングルマザーだ。同じ年頃の双子を育てている者どうし、ウマがあってね。半年前から付き合ってたんだけど、
「それはいいとして。同じ年頃の双子ってなに? 正確にはいくつなの? その連れ子!」
ドンッと机を叩いて前のめりになって聞く
「お前達と同じ、10歳。小学校4年生だ」
「同い年~!? やだやだ! 同じ年の男子なんて、うるさいばっかの猿じゃん! あたし、反対だからねっ、再婚!」
「その、
再婚には反対か?」
叱られた犬みたいにシュンとして聞くお父さんをみて、私は
「わ、私はいいよ。その……再婚しても」
前髪をさわりながらそう言うと、お父さんの表情がパアッと明るくなる。
「そうか、そうか!
イスから立ち上がり私の頭をワシャワシャ撫でてくるお父さんに、
「言っとくけど、あたしは反対だからね!
お母さんが病気で死んでから、まだ3年じゃん。悪いとは思わないわけ?」
「
でもな、お前達もそろそろ大人の階段を上っていく年だろう? 母親がいた方が、なにかと相談しやすいこともあると思うんだ」
「相談しやすい事って?」
ふんっと鼻をならしながら聞く
「それは……ほら、生理とか……」
「はあ!? さいってー! 朝からデリカシー無さすぎなんですけど!」
「ほら、こうやってすぐ
「いらねーし! なんなら生理ぐらい自分でどーにかするし! お父さんはあたしを見くびりすぎ!」
キッとお父さんを睨む
「でもなあ。
上目使いでチラリと私をみる、お父さん。
これ、ノーって言えないやつだ。お父さんのすがるような視線に耐えかねて、私は下を向いて、ボソボソと話し始めた。
「……私は、お母さんがいた方がいいかなって、思ってるよ……?」
「だよなあ! さすが、
お父さんの表情が、再びパアッと明るくなる。
そんな顔されたら、本当は乗り気じゃないってこと、言いづらいな。
私達のお母さんは一人だけだし、そんな急に新しいお母さんだよって言われても、割りきれないし戸惑ってしまうだけな気がする。
「そうか、そうか。
「嫌なんですけど。」
「わがまま言わない! 少しは
「
「そうなのか、
ふたりの視線が私に集中する。
い、言いにくい。ここで本音は言いにくい。
私はうつむき、ザリザリとコーンフレークをスプーンでかき混ぜながら、のどのおくから絞り出すように声を出した。
「わ、私は、お父さんと
「
お父さんが再び私の頭をワシャワシャ撫でた。
「出たよ、他人任せ!
言って、バリボリコーンフレークを食べる
私だって、
「わ、私だってちゃんと考えて返事してるよ」
「どーだか! お父さんの圧に負けたように見えたけど?」
横目でじろりとみる
「そうなのか?
お父さんがハラハラした感じで私をみる。
こうなると私は弱い。ついつい当たり障りのないことを言ってしまうのだ、波風をたてたくなくて。
「い、嫌じゃないよ。新しい家族が増えて、楽しくなるかもだし……」
「楽しくならないかもしれないじゃん!」
横から鋭いつっこみをいれる
「
「どうせ本音なんて言わないって!
「で、でも会ってもみないうちから決めつけるのも、よ、よくないと思う……!」
「ハイハイ。いいこちゃんな回答ありがとう。悪いこちゃんなあたしは、退散しますよ~だ!」
そう言って
いいこちゃんな回答か……。結構ぐさりとくるな。私は前髪をさわりながら、
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