オンライン句会 🖊️

上月くるを

オンライン句会 🖊️





 ある有徳の方が無料で提供してくださっているシステムを活用し、オンライン句会をスタートさせたのは、コロナ蔓延の兆しの直前、ちょうどいまごろの季節でした。


 仕事時代にお世話になった方が企業の役員を退任されるというので、駅前の居酒屋で感謝の会を開かせていただき、なんとなく幹事の(笑)ヨウコさんが花束を手配。


 混み合う小あがりでのささやかな宴席でしたが、気心の知れた人ばかりでしたので大いに盛り上がり、これを機にオンライン句会をやろうという話に発展したのです。


 現役世代は多忙で無理ということから、必然的に事務局をヨウコさんが引き受けることになり、それから月一の句会が始まりまして、現在三十六回目を数えています。




      ☔




 ほかにメール句会の事務局も承っていますが、圧倒的に手がかからないのは面倒な清記・選句一覧などの作成を自動的に行ってくれるオンラインで、労力、ほぼゼロ。


 投句や選句が遅いメンバーがひとりでもいると、〆切のギリギリまで外出できないメール句会は、出先でスマホでOKのオンラインと比較すると、ことごとくが古い。


 それに無点句の選評まで行うので延々と長時間に及ぶリアル句会はもちろん、新人事務局には先輩への忖度が不可欠(笑)のメール句会も、相当エモな面があります。


 その点、投句し、率直によいと思った句に簡潔な選評を付すだけ、いっさいの思惑や感情が入りこむ余地がないオンライン句会は、スカッと爽やかに公明正大で……。


 半年に一度のランチ会以外は俳句によって近況を知るだけの、メンバーとの適度な距離感も心地よく、「付かず離れず」が淡々と継続する大事な要素と感じています。




      🥸




 はるかむかし、仕事の関係で児童文学作家やその卵たちの集まりに招待されたことがありますが、ゲストとして立ち会うのが居たたまれないほど猛烈な酷評会でした。


 それが何十年もの伝統だそうで、翌年、指導格の高名な作家が同席したときはさらに苛烈な(たぶんに自己アピールの)批評が飛び交い、恐ろしい世界に慄きました。


 いずれも厳めしい顔をした高齢の作家連が宿の褞袍どてらで胡坐をかいている上座に娘や息子ほどの新人がオズオズと進み出ますと、あろうことか、人格までの全否定。💧


 真っ赤になって肩をふるわせる卵ちゃんはまだいいほうで、若々しい頬にはらはら涙をこぼして集中攻撃に堪えている卵ちゃん……見させられる、こちらの胸が痛い。


 その記憶が生々しかったので初めてリアル句会に参加したとき緊張はしましたが、「川柳だ」「図鑑の丸写し」などのきびしい講評にもそこまでは驚きませんでした。




      🍃




 ですが、新人なりの歳月を重ねたいまは思います、文芸に絶対評価はあり得ない。

 如何に新人の拙い作品であろうと、質朴なリスペクトは基本中の基本だよね~と。


 ただし、威勢のいい某人気俳人さんの(笑)「何でもあり」喧伝の影響もあってかややもすれば俳句への敬意を逸している場合がありますが、むろん、論外です。🦮




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