『隠し味はナイショ♪』

しまった!おむすびをうっかり落としてしもうた!

「待ってくれっ!」


”ころりん”などと形容するには不相応なスピードで、坂を転げ落ちるおむすび。老体に坂道ダッシュは厳しい。が、食い下がり必死に後を追う。


…穴におむすびが!愛する婆さんが丹精込めて握ってくれたおむすび。婆さんの顔がよぎる。


「…えーいままよっ!」

意を結したお爺さんは穴に飛び込んだっ!


…ここは?


「いらっしゃい!」

威勢の良い挨拶。一枚板のテーブル。

「隠れ家的寿司屋じゃ!」


「ここなら絶対に見つからないと思ったのですが、まさかこんなに早く見つかるとは!」

「店を開く時に決めていたんですが、一組目のお客様には特別サービスをすると決めておりました」

「お代は結構ですんで食べて行って下さい!」

「何握りやしょう!」


断れない性格のお爺さん。お任せで出てきた握り寿司を口に運ぶ。

「…」


「お口に合いませんか?」


「いや…」


「正直におっしゃって下さい」


「…これも美味いとは思うが」

「婆さんのおむすびの方が…ワシは好きじゃ」


パチパチパチ…。店の奥から人影。こちらに拍手しながら近付いてくる。


「婆さん?!」


「それでこそワタシの最愛の人じゃ♪」


良かったね!末長くお幸せに!

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ヲムニヴァス【vol.1】 ヲザワリヲウタ @wozawa

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