隣人であるかのような。
- ★★★ Excellent!!!
この作品を読んでみて、まず感じるであろうことは「距離感の近さ」である。
あらすじ欄にある「似たような症状を抱える方は多いのだろうなと思う」という一文は正確なものだった。
タイトルにある通り、この作品は「適応障害」と診断された経緯やこれからの様子を描いたものである。
社会人の方であれば、勤務状況にしろ、起こった症状にしろ、上司様をはじめとした周りの反応にしろ、実にありふれたものだと感じられるのではないだろうか。
こう言ってはなんだが、
人(他人だけでなく自分自身も含め)の体調より、仕事の進捗を考える人もいるだろうし、現在でも昔の「精神論」がまかり通っている職場もある。
ただでさえ激務の中で、要となる人物が抜けてしまった状況に混乱する気持ちも、分からないでもない。
「お気の毒に……」と思うほどの被害者も、「この野郎……」と思うほどの加害者もいない。
そういった点も含め、このエッセイに当てはまる方々は非常に多いものと思われる。
そんな中でも、優しさは確かにあって、そのおかげで前向きな気持ちで読み終えることが出来た。(あくまでレビュー時点の話ではあるが)
心療内科に訪れた際の先生の言葉など、読んでいるこちらの心まで染みわたる場面もあり、読みごたえがある。
「隣人の書いたエッセイ」と言っても良いのではないだろうか。