第2話 いろいろ教えてほしいの
「おにいちゃん、私、私。『元帥ちゃん』なの」
「お電話でてくれなかったらどうしようかと心配してたの。だから…ほっとしたの」
「え? ちゃんと出るよって? もしかしてだけど…おにいちゃんって暇なの?」
「うそうそうそうそうそなの! お願いだからお電話切らないでなの。ほんとはちゃんと分かってるの。私のために時間を作ってくれてとっても感謝してるの」
「おにいちゃんが優しいからちょっと照れちゃっただけなの。私の悪い癖なの…女の子は素直な方がモテるって『伍長ちゃん』にも言われたのに…」
「『伍長ちゃん』は私の遠い部下なの。仕事中は部下だけどプライベートではマブダチなの。『伍長ちゃん』はすごいの! 恋愛に関しては百戦錬磨なの。私としてはそんなことよりもっとお仕事頑張ってほしいの…」
「なっ! そうじゃないの! いや…そうなの…そんなんだけど…『伍長ちゃん』に恋愛相談してたんだけど、べ、別に誰か好きな人がいるとかじゃないの!」
「ちょっと、ほんのちょーっと気になる人が出来ただけで…」
「『ふーん』ってなんなのもぉ…もっと私に関心もってほしいの…むー…ふんっ何でもないの!」
「別に怒ってないの! 怒ってないもん。ほんとなの! ちなみに…おにいちゃんは怒っている女の子は好き…なの?」
「やっぱりなの! 私、全然怒ってないの!! ふぅ、危なかったなの…え、何を焦ってるのって? こっちの話だから気にしないでなの! そ、そんなことより」
「今日は地球のことをいろいろ教えてほしくてお電話したの。たくさん質問を書いてきたから今から読み上げるの」
「…と、その前に、昨日からちょっと気になっていたことがあったの。なんでおにいちゃんがお電話に出るときの挨拶は『もしもし』なの?」
「ふむふむ…『申す、申す』の略なの…だとしてなんで2回も同じことをいうの? 不思議なの」
「そっか…おにいちゃんでも分からないの…」
「え? 大事なことは2回言うルールが地球にはあるの? じゃあきっとそれなの! 『もしもし』は大事なの。なんだかすっきりしたの」
「それじゃあ気を取り直して…今日お昼寝を我慢してしこしこ考えた質問なの。こほん…えっと…第一問なの。地球でおすすめの食べ物は何ですか? なの」
「うん…? そうなの。私の任務は地球侵略なの。昨日もちゃんとそう言ったの。もしかしておにいちゃん私の話ちゃんと聞いてなかったの? むぅ」
「おすすめの食べ物は地球侵略に関係ないって? ちっちっちっ甘いの。おにいちゃん、さては侵略素人なの。食べ物はとっても大事なの。だって食料調達は現地調達することになるの。せっかくなら美味しいものを食べながらグルメに地球を侵略したいの」
「おにいちゃんは食べるの好きなの?」
「良かったの! じゃあおすすめを教えてほしいの」
「うんうん…それからそれから?…なになに…えと…えっと…ま、待って待ってなの! そんなにたくさん一度に書ききれないの。ちょっと待つの」
「うん。全部メモ出来たの。次はどんな食べ物かも教えてほしいの」
「へぇ…ふわふわ…もちもち…まろやかぁ…ぷりぷり…んー…じゅるり」
ぐぅ〜
「想像したらお腹が空いてきちゃったの。お昼寝我慢したからエネルギー消耗がいつもより早いのなんの」
「私が食いしん坊!? そんなことない…いや…ある…かも…うん…その…おにいちゃんはよく食べる女の子は…嫌い…なの?」
「そーなの?! んふふ! 私はとってもたくさん食べるの! 軍の中では誰にも負けないくらい食いしん坊な自信があるの!」
「えっ! そんなに食べると思わなかった…? もしかしておにいちゃんどん引きなの…?! どうしよう…はっ…だ、大丈夫なの! 私きっとちゃんと我慢もできるの。おにいちゃんを困らせるようなことはしないと約束するの」
「それは…だって…いつかおにいちゃんと一緒にごはんを食べることもあるかもなの。そのときにおにいちゃんに恥ずかしい思いをさせたくないの。だから私我慢するの。安心してなの」
「ち、ちなみに、おにいちゃんの一番好きな食べ物は何なの?」
「侵略とは関係ないと言われればぐうの音も出ないの…だけど、ただ純粋に知りたいだけ……じゃだめなの?」
「ふむふむ…それは美味しそうなの。教えてくれてありがとうなの! ついでに作り方も聞いておくの」
電話越しにポチポチピッと電子音が響いた。
「料理できるのかって? 今は全然出来ないの。だけど早速料理教室に予約をいれたの。我ながら勉強熱心なの」
「地球侵略はどうするのかって? はっ! 忘れてたっ…あわわ…で、でも、大丈夫なの! 侵略は得意だから料理教室通いながらでもできるの、きっと」
「それに心強いおにいちゃんもいることだしなの」
「どういう意味って…おにいちゃんはもうとっくに地球のスパイなの」
「えっ、地球の偉い人に怒られるって? 大丈夫なの。だって私は『元帥ちゃん』。私だってとっても偉いの。侵略が成功した暁にはお礼としておっきな豪邸を建てて、おにいちゃんを住まわせてあげるの」
「そしてゆくゆくは私と一緒に……はっ! な、なんでもないの。そ、そうだっ! 私、もう料理教室に行かなきゃなの」
「それじゃ、おにいちゃん、もしもし……じゃなくて…好き好き…きゃっ!…でもなくてバイバイ、そうバイバイなの!!」
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