秘密基地

文重

秘密基地

 失恋の痛手も癒えぬある日、グループLINEに届いたメッセージを見て美夏は仰天した。

「秘密基地をつくろう」

 と博樹が言い出したのだ。場所はもう確保してあるという。しかも自分たちでツリーハウスを造る計画だというのだ。秘密基地と聞いて、放課後ランドセルを置くや否や、博樹たちと空き地で基地ごっこをしたことを思い出した。


 「30にもなって秘密基地はないな」「ごめんね、子供がまだ小さいから」「無理、仕事忙しいし」「悪い、今回はパス」

 否定的なコメントが続く中、麻友が

「いいね、やるやる」

 と返してきた。信也からも

「力仕事なら任せろ」

 と頼もしいリプ。

「おもしろそう。私も参加させて」

 美夏もとっさにそう返していた。傷心を癒すには童心に返るのもいいかもしれない。


 週末ごとに集いやっと完成したツリーハウスの中で、4人はシャンパンで祝杯を上げた。文字通り大人の秘密基地だ。仲間に笑顔を返しながら、美夏は心地よいひとときに酔いしれた。

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秘密基地 文重 @fumie0107

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