秋、蝶々。

武内ゆり

秋、蝶々。

黄色いちょうちょ、白いちょうちょが秋の空を舞っている。

 空のかなたに山があり、山の端が、紅葉やいちょうに色濃く染まっている。

 まったりとしたあたたかい午後。

 私は散歩に出かけた。

 小さな太陽に照らされて、日を惜しむように鮮やかに輝く植物達。セイタカアワダチソウやススキが地面を占拠して、大きな色のリズムをつくる。

 自然に心を溶け込ませながら、私はアスファルトの道を歩く。

 ふと横を見ると、まだ青い芝生の上に、男の子が二人遊んでいる。

 近くに中学校があるから、中学一年生だと思う。声変わり前の子供っぽい話し方で、ふんわり髪の男の子がしゃべっていた。

「ねえ、知ってる?ちょうって簡単に捕まえられるんだよ。」

「本当?」

かたい顔をしている相手。

 ふんわり髪の男の子は、パッと両手をつき出して、

「ほら。」

目の前にいた黄色い蝶を、そっと小さな両手に包み込む。

 得意顔ににっこり笑って今度は、

「いくよ。」

と言って、両手をそっと開いた。

 蝶はひらりと舞い上がり、青空に黄色い点を打ちつける。

 アスファルトの道を歩きながら、私はその様子を見ていた。

 子供達の周りには、黄色いちょうちょ、白いちょうちょが舞っている。

 まったりとしたあたたかい午後。白昼夢の心地の中、私は小さな童話に別れを告げて、いつもの道をまた歩き始める。

 そしていつのまにか、私の周りにも、黄色いちょうちょ、白いちょうちょが日を惜しむように飛び交っていた。

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秋、蝶々。 武内ゆり @yuritakeuchi

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