永遠なんてない
夕日ゆうや
永遠なんてない
ポツポツと雨が降ってくる。
霧雨のような弱い雨。
その雨の中、一人の青年が立っている。
綺麗に整えられた石に刻まれた名前。
『永遠に一緒にいようね!』
リフレインする言葉が俺の心をえぐる。
ナイフで刺されたような痛みが胸をグズグズと傷口を広げる。
墓石に添えられた花束が二つ。
「悲しいですね。あなたは大切な人を失ったようですね」
一人の妙齢の女性が柔和な笑みをたたえてそこにいた。
「失礼。一時間もそうしているから」
「一時間……。そんなにいたのか……」
俺は目線を上げることもできずに下を見続ける。その名前を。
惜しむ時間もなく時は刻まれていく。
俺、これからどうして生きていけばいいのか。
愕然と物憂げな表情を浮かべていると、妙齢の女性が話しかけてくる。
「良かったら、こちらに電話してください」
「アイ、ドル……?」
「永遠なんてない。でもこの歴史は世界に名を刻む。そうでしょう?」
妙齢の女性はにやりを笑みを浮かべる。
「あなたならできるわ」
いっそ、死んでしまおうか。
そう思っていた俺は、その言葉が引っかかる。
「ここで終わるのはやるせないじゃない? 世界に生き様を刻んでこそ、生きていた証じゃない?」
やる気も起きないが、惰性で仕事を受けることにした。
永遠なんてない、か……。
悲しい気持ちが少しでも晴れるなら……。
永遠なんてない 夕日ゆうや @PT03wing
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