嫌になる程鮮やかなこの世界

如月ねこ

群青色

———ここまで来れたのも、読者様方のお陰です。

改めて、ご愛読ありがとうございました。

また、次の作品でお会いしましょう。



「それではっと」


内容確認をして投稿ボタンを押す。

自分だけの誰も知らない趣味として書いていたが、

割と長い間書いていた長編だったので少し心臓に穴が空いた感覚がした。

窓の外を見ると太陽が真上に上って、まばらに雲が浮かんでいる空。

真下を見ると空色の患者衣と真っ白なシーツ、そして少し灰色っぽい雲の陰。

見える世界はいつだってカラフルだ。世界のどこを切り取ってもそこには

何かしら色があるし、それぞれの人生がある。

対して僕はどうだろう。前に進めず、後にも戻れない。

いつもこうだ。僕の人生は止まったまま。

所詮僕の体は「欠陥品」だ。

今日も想像する。もしこの体が元気になって、

他人と同じように生活できたら。

地平線の向こうに薄く見える水平線にも、

図書館にあった本に出てきたすごく高い山にも、

クラスメイトが言っていた近くの山の隠れ家にも、

行けるようになるのだろうか。

想像したって現実は変わらない。

このの世界で僕はただ止まっているだけだ。

車椅子一つ、週一の点滴がなければ何もできない僕の人生に、

皆が言う青春、とか。出会い、とか。

そんなことがあったら。

人生は鮮烈なに変わっていくのだろうか。

病室の窓の側、ベッドの上から、

僕の人生を笑うかのように鮮やかな空を見ながら思った。


「何シケた顔してんだ黒一くろいち

「ぎゃあっ!」

不意に後ろから声が掛かってきた。

「そんな声出さなくていいだろ」

「いきなり声かけてきたからじゃん!」

「いきなりも何も、俺ノックしたぞ」

「本当〜?」

「なんでここで嘘つく必要があるんだよ」

白髪に赤いメッシュを一纏め染めているこの男子は、

僕の唯一の友達?腐れ縁?のあかだ。

「毎週毎週飽きもせずによく来れるね、別に今日来なくてもいいのに。

学校で会おうと思えば会えるでしょ?」

「いや、学校では会いにくいだろ?それに、俺は週に一回お前に合わないと死ぬからな」

「絶対嘘でしょ」

「嘘だ」

「そこは少し否定してほしかったな〜」

お互いに笑い合う。いつもは静かなこの病室だけれど、緋が来るだけで賑やかになる。

「先週あったって言う漢字テストどうだった?」

「大丈夫だったと思うか?」

「緋なら大丈夫でしょ」

「バカにしてんのか?」

学校の話をして、緋の最近の話を聞いた後、緋が聞いてきた。

「なぁ、あの…お前の…」

「あぁ、この体質のこと?」

「あぁ、そうだ。最近良くなったのかと思ってな」

「あぁ良くなってる。ワンチャン普通に保健室登校しなくても良くなるかもな」

先週の診断で、担当医の先生から言われた事だ。

続けている点滴や治療、健康な生活も相まって、少し体が強くなってきているとの事。

後1年もすれば、憧れた「普通」が手に入るかもしれない。

そう思った矢先に緋は言った。


「そうか。じゃあ来週の月曜日から一緒に学校に行くか!」


「早すぎない?」

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嫌になる程鮮やかなこの世界 如月ねこ @kisaragi-neko

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