毎日小説No.51 就職説明会でお金稼ぎ出来る件!!
五月雨前線
1話完結
「本日は企業説明会にお越しいただきありがとうございます。事前のメールでもお伝えした通り、今回の対面の説明会でしか紹介しない特別な資料を多数使用します。資料の写真撮影等、外部に資料を流出するような行為は絶対にお控えください」
黒いスーツを着た男性の社員がそう説明し、同じくスーツを纏った大量の若い男女達が神妙な面持ちで頷きを返す。
今日この場所で行われるのは大手出版社の企業説明会だ。この対面の説明会でしか紹介されない資料、さらに選考に関わる重要な情報が公開されるとあって、数多くの大学生がこの場所に足を運んでいる。一つも情報を聞き漏らすまい、と意気込む大学生達の表情はとても真剣だ。
そんな中、私は緊張を一切感じることはなく、むしろリラックスしていた。何故なら私は企業の説明を聞きにきたわけではなく、様々な情報を盗んで秘密裏に公開するために来ているのだから。
対面の説明会でしか配布されない資料をこっそりコピーし、闇サイトで公開する。さらに説明会に乗じて本社の建物の中に忍び込み、遠隔操作で様々な情報を盗んで売買する。この2つの方法で、私はかなりの額を稼いでいたのだ。
「それではまず、会社の概要から説明します。我が社はソフトウェアに関する様々な事業を展開しており、皆さんが知っている有名企業と業務提携をして様々な業務を行っています」
きたきた。私はシャーペンに搭載した超小型カメラで説明のスライドを撮影し、即闇サイトに画像のデータを流した。有名かつ人気な出版社の資料ということもあり、あっという間にPV数が伸びていく。
よしよし。この調子なら今日の資料だけで20万円は稼げそうだ。
「今回は、防犯会社と協力して行った事業をご紹介しましょう。こちらの会社、CMでよく流れている会社ですよね。この会社が独自に開発している防犯システムと、我が社の技術を融合させているのです」
撮影撮影っと。
「その事業の中で、最近開発しているのが、カンニング等の不正行為をカメラで感知し、通報する技術です。通常の人間の状態をAIが分析し、少しでも異常かつ不可解な行動をした人間をAIが詳細に調べ、悪いことをしていないかどうかチェック出来る、という確信的な技術です」
ふーん、そんな技術があるんだ。撮影撮影〜。
「これは主に教育現場から寄せられた声をもとに作成した技術です。スマートフォンをはじめとした高性能な機械がすぐに手に入るようになり、カンニング等の不正行為を摘発することはさらに難しくなってしまいました。その問題を解決するためにこの技術を作ったのです。
そして……この技術は、現在この説明会の会場にも導入されています。今この瞬間、説明会の資料を不正に外部に流している屑野郎がいますので、晒しあげてみましょうか」
え?
その瞬間、私が座っていた椅子が突然変形し、複数のロボットアームが飛び出して私の体をがっちりと掴んだ。
「え!? え!? ちょっと、なんなのよこれ!?」
「説明会の資料を外部に流す行為は禁じていたはずですよ?」
先程まで前で説明していた社員が歩み寄ってくる。アームに掴まれて身動きがとれない私を見下し、社員は嘲笑の笑みを浮かべた。
「敢えて私達が貴方に罰を下すことはしません。罰を下すのは、今この場にいる学生の皆さんの仕事です。さあ皆さん、この屑野郎の容姿をスマートフォンで撮影してSNSで拡散してください。貴方の犯した罪は、炎上という罰によって裁かれるのです」
無数のカメラのレンズが私に向けられる。シャッター音が鳴り響く中、人生が終わったことを察し私は泣いた。泣き叫んだ。
完
毎日小説No.51 就職説明会でお金稼ぎ出来る件!! 五月雨前線 @am3160
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