第3話  最後の刻……

 俺がこの二人に引きずられて5分もしないうちに二人の足が止まった。たぶんだが、崖についたのだろう。


「うわぁおっかないよな……この崖の下いつみてもそこが見えねぇぜ」


「当たり前です。この崖の下は深層とも呼ばれていて僕たちがそこに行ったら数分も生きられないんですよ。この上層からの深さは最低でも300mもあるんです。」


「それもそうか。それじゃあそろそろこいつを捨てようぜ」


「ええそうですね。」


 二人はそういうと俺の両足を下ろして胴体を崖近くまで寄せた。


「すでに死んでるかもしれねぇかもだけど、一つだけ言わせろ。いいか!俺はお前の面が大っ嫌いだったんだよ!ちょっと顔がいいだけで女どもに声を掛けられまくりやがって………だからよ、お前をズタズタにして、その顔にも一生残りそうな傷をつけた時はすげぇ興奮したんだ。」


「ふむ…では僕も一言いいますかね。僕はね、あなたのスキルが覚醒するのが今か今かと待ち侘びていたんですよ。なのに……最後まで覚醒せずに僕たちに寄生して…まあでも、今回の実験で少しだけあなたが役に立ったのでこれから楽に死なせてあげますよ」


 この二人の言っていることが半分以上聞き取れなくなっているが、それでもわかる。こいつらは俺をここへ突き落として、何かしらの理由をつけて俺を事故死にさせる気なのだろう。でもそれでいい。そろそろ頭も回らなくなってきたから遅から早かれ俺は死ぬ。それが力尽きて死ぬか崖から落ちて死ぬかの違いしかないのだから。


「んじゃあな、海斗。これからお前に会わなくていいと思うとせいせいするぜ」


 そして俺は横腹を蹴られて崖へ真っ逆さまに落ちた。




 母さん、父さん、陽奈ひな………ごめん、絶対に帰るって約束していたのに…守れそうにないや…







 そして俺の意識がなくなろうとしている時、不思議な声が聞こえた。


『青年、お前はまだ生きたいか?生きたいのであれば、私が力を貸そう。生きたくないのなら、そのまま重力に従って死ね』


 あんた……は…


『私に質問している場合ではないだろう。早く答えろ。生きたいか、死にたいのか』


 まだ生きることができるのなら……俺は生きたい。そしてまた、これからも……家族と過ごしたい……


『ふふふふ、いいだろう!呼べ、私の名を!そして願え、己が何を望むかを!』


 俺はこれからもずっと家族で楽しく過ごしたい……あいつらなんてどうでもいい。ただ……





  また家族と一緒に居たい…



 だから!



 「不死フェニ………クス…!」


『覚醒条件の解放によりスキルが覚醒しました』


『スキルが覚醒したことにより、スキル『#//@,(・|:8』が覚醒スキル『神獣テイマー』へとなりました』


『『不死鳥・フェニックス』との仮契約を確認』


『マスターの救命のため、不死鳥フェニックスへの召喚要請……了承されました』


『了承されたことにより、不死鳥フェニックスを即時召喚します』



 そんな声が頭の中で響き渡ったかと思うと、あたり一面が赤い爛々と輝く炎へと変わり、俺はその炎へと取り込まれた……










 ただ1人つ言えることは……その炎はとても暖かくて……心地よかった





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神獣に愛されし者 蒼華 @amagamiraimu

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