第3話   海とくじらの過去

ザシュ

何かを切る音がしたかと思うと、パシャという音がしてバラデントは消えた。パッと消えたかというよりは水に戻ったという感じだ。

僕は、くじらに駆け寄った。

「大丈夫?」

「多分な…」

くじらはなにやら驚いている様子だった。

「お前、海か?」

くじらはそう言った。

「わからない。海の中から剣が出てきたんだ。ていうか海とくじらって何?」

「そうか。何も知らないみたいだな。話したいんだが、まずは傷の手当てをしてくれないか。利き腕がやられたから思うように処置できないんだ。」

僕は応急処置をしようと剣を持って僕の服の一部をちぎろうとしたその時、僕の剣の宝珠が彼の傷に当たってしまった。だいじょうb…。その途端に宝珠が光り出した。眩しくて目を閉じた。

「は?なお…った?」

なんの跡形もなく傷は治っていた。

「やっぱり、お前は海なようだな」少し驚いた様子で彼は言った。

「じゃあ説明していこう。怪我を治してくれたことに感謝する。」

そうして彼は、海とくじらの過去について話し始めた。

「昔、まだ村での争いが絶えなかった時、人々の血や武器、憎しみが海へ流れ出ていった。そして海は荒れやがてその負の感情などを吸収できなくなってしまったんだ。そして、その感情はモンスターと化し夜の海をさまようようになった。」

「それがバラデントってことだね」

僕は会話を挟んで確認した。

「そうだ。そして、海に近い村の人々は誰かが倒さなければならないと悟った。

すると奇妙なことが起こった。ある村に双子が生まれてんだがその双子がある宝珠をそれぞれ持って生まれたんだ。1人は俺の持っているような色の宝珠、もう1人はお前の持っているような宝珠だ。そして彼らは、そのバラデントを倒すために海へ出た。ただ彼らも寿命が尽きる。だから、村の人々は彼らの血を継ぐ人たちにその宝珠を渡し、海へ出させたんだ。その後、海とくじらと名付けられ双子だった2人の家計は別れていった。ただある時事件が起こった。海が消えてしまったんだ。家計が途絶えたというよりは宝珠が消えたんだ。誰かが割ったのか、盗んだのか、失くしたのかわからないまま。そこから、くじらが一人で海のバラデントを倒すことになった。それが何年も続いた。」

「なんで村の風習が今も続いているの?」

僕は聞いた。

「もし、俺たちがバラデントを放置してしまうと大きくなってしまい波に乗って陸に上がり人々を殺してしまうからなんだ。」

「そのバラデントは人を殺したことがあるの?」

「わからない。ただ、代々そう言い伝えられているんだ。そして、その言い伝えられている中に宝珠の特徴などが書かれているんだがその海の宝珠の色や特徴がその剣の宝珠とそっくりなんだ。だからお前が海ってことになりかねない。」

「え!?でも僕、親も知らないし家もないし自分の名前もわからないんだよ。」

「そうか…。それなら、海の中の神殿に行くか…。何かわかるかもしれない。」

彼はそう言って立ち上がった。

「海に神殿があるの!さっきの過去の話には出てこなかったけれど。」

「ああ。その双子に宝珠を持たせたと言われている張本人がいるんだ。俺も何度か会って助けてもらった。悪いやつじゃないから安心しろ。」

そうくじらは言って、海に向かって歩いた。

「でも僕海で呼吸できないよ。」

「その剣を持って海へ潜ってみろ。でも宝珠はなくすな。まぁ滅多にとれたりはしないがな。」

こうして、僕とくじらは海の神殿を目指して出発した。

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海とくじら 白狐 @utubo1215

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