世界中の時計を二秒早める方法、ただし誰にも気づかれないで

高黄森哉

宇宙船


 オノ・ヨーコの『grapegruit juice』の「世界中のすべての時計を二秒ずつ早めなさい。誰にも気づかれないように」を実行するためには、どうすればよいのか。


 この命令を実行するために障害となるのは、”世界中の”、という点と、”誰にも気づかれないように”、という点だろう。


 世界中の時計をいちいち二秒づつ進めるのは、途方もない労力がかかる。おそらく一人の人間は達成できないだろう。そしてそれは誰にも気づかれてはいけないのだ。


 この一文を達成するのは本当に無理であろうか? 私は不可能ではないと思う。具体的に二つの案が、今、頭に浮かんでいる。


 まず一つ目が、グリニッチ天文台の原子時計を、なんとか細工して、二秒ずらす方法である。


 問題は全ての時計がずれるわけではないこと。ただし、他の時計は、二秒ずらさなければ、正しく時計の役割を果たしているとは言えないだろう。


 それはもう時計ではないという強引な解釈。標準時に沿った時計だけが、時計だとすれば、時計は全て二秒ずれると言える。


 もう一つは浦島効果を使う方法。高速で宇宙飛行して、帰ってくれば、自分の時間はずれるのである。


 地球から宇宙に出て、帰ってくる。早い物体では、地球より時間の進みが遅い。計算でちょうど二秒ずれるようにする。


 そうすると、自分としては一分しか経過していないのに、地表では一分二秒が経過していることになる。時計は二秒ずれる。当然、誰にも気づかれない。


 宇宙船に乗りなさい。帰って来る時、丁度、二秒ずれるように(Moria Takagi)。

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世界中の時計を二秒早める方法、ただし誰にも気づかれないで 高黄森哉 @kamikawa2001

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