好きなもの
私は知っている
貴方の好きなものを。
けれど、私は貴方が朝
まどろみから覚めまいと
額に皺を寄せ
朝の光に照らされる
1日の始まりの顔を知らない
私は知っている
貴方の好きなことを。
けれど、私は貴方が見せる
特別な日の顔を知らない
日常に見せる顔が剥がれ
隠し切れない喜ばしい顔を知ることができない
私は知っている
貴方の好きな食べ物を。
けれど、私は貴方が夜
眼鏡を外し
枕に顔を埋め
夢の中に出掛ける時の
穏やかな顔を知らない
私の知りたい貴方は容易に見られるものではない
私は貴方の仮面を沢山知っている
けれど、貴方を司る内側を
ほんの一部も知りはしない
本当の顔を知りはしない
本当の顔を知り得はしない
けれど私は知っている
よくよく知っている
貴方のその内側に、私の姿がないことを
痛みとともに身に染み学ぶ
貴方の中に居られぬことを
ものぐさの記 沖方菊野 @kikuno
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