第7話
ーー可愛い。
でも絶対使わない。
なぜこんなもの、自分は買ってしまったのだろうか。
使わないと分かっているのに、何故か捨てる事ができない。
思い出しそうで出さない脳の状態が痒くて気持ち悪く、しばらくそのまま粘っていると、ふいに玄関ドア付近でカタンと音がした。
見るとポストに郵便物が届いていた。
パステル色の花模様が角に配置された、可愛らしい封筒。私は訝った。
「手紙…?」
ご丁寧に留め方までシーリングスタンプで可愛い。
早く開きたい気持ちと破きたくないう気持ちの狭間で、どうにか綺麗に中身を取り出す事に成功した。
スマホの通知内容を見るよりもわくわくした気持ちで中の紙を引き出すと、見覚えのある便箋に丸い文字。
“佳菜子、元気?
私はそこそこ元気。
昨日たまたま佳菜子が夢に出てきて、一緒に遊んでた頃を思い出して懐かしくなったんだよね。
久しぶりに遊ばない?”
送り主はリホ。
今時手紙って、やはり昔から彼女はちょっと変わっている。
そう思いつつ、私の口元は緩んでいた。
振り返り、改めてがらんとした部屋を見渡すと、大きく深呼吸した。
ーリホなら、聞いてくれるかもしれない。
そう思うや否や、私は一旦ゴミ袋に入れた全ての物を元の位置に戻し始めた。
“引っ越し”はもう少し後で、何年後になるかは分からないけど。
歩くペースでいいよね。
♡とアナログ 金平糖 @konpe1tou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます