第2話 これは昔々の物語

《第4章 願の対価》

僕は、小さい頃、とても面白い時代に生まれたと思った。

色んなカッコいいフォルムが、線路を通して、街中を走り回っている時代を。そして、それは人や、夢や、ワクワク、悲しみなどを一身に背負い、世をかけて行く姿に、一層憧れの念を抱いた。

そして、それを知った僕は、そんな希望や夢を背負って運ぶ事のお手伝いをしたい!と、幼いながら思い、何か自分に出来る事は無いか?と、考えに考えて、ある結論に至ったのだ。自分の手で、フォルムを作れば良いと。

それから僕は、一生懸命に勉強を進め、一鳴と言う、鉄道会社に入社する事が出来た。

そして、会社の中へと入り、指定の場所へ向かうと、大体六十畳ほどの広さで、その部屋で製作環境が整っていることに気づき、ここでこれから活動して行くんだ。なんて気持ちと、これからの事への想いを現場を目にして益々強めていった。

「それでは、新人社員がこの鉄道製作部に配属される事となりましたので、皆さん、自己紹介をお願いします」

と、そして、この頃は皆んな、鉄道は移動手段とし、製作に携わろうと言う気持ちを持つ人が少ない中、10人ほどの人数が集まり、1人ずつ自己紹介を始め、とうとう自分の番がやって来た。

「米田なつおです。よろしくお願いします」

なんて軽く挨拶を済ませると、グループ分けがなされ、僕は、先輩が3人、同期が僕含め2人の体制でこれから一年進める事が決まった。

「これから宜しく。俺は成瀬快斗だよ。」

「僕は、谷口悠。よろしく」

「私は、町田湊です。」

「私は、永谷秀です。これから指導、宜しくお願いします。」

と、全員からの紹介を受けた。

それから、当面の流れを聞き、了承した所で、今日は解散となった。

次の日、会社へと着くと、先輩はもう着いており、同期が来るまでの間、少し暇だった為に、ちょっとした世間話を町田先輩と始めた。

「ねぇ。何で鉄道を好きになったのですか?」

なんて聞かれ、僕は、こんな風に答えた。

「色んな人の希望だとか、夢だとか、色んな感情を運んでくれてるんだな。凄くカッコいいな。なんて、いつでも人の為に動いてくれるところを好きになりました。」

と、答えると、先輩は、「そうなんだ。だとしたら、この業界について、深く知っても傷つかないで、電車を嫌いにならないで下さいね」

なんて言葉を受け、何も知らない僕は、頭に沢山のはてなマークを浮かべながら、辞めるつもりも嫌いになるつもりも無いので、はい。と答えた。

それから、一週間が過ぎて、鉄道製作部の部長が、朝、普段はない朝礼を始めた。

「おはようございます。いつもは朝、朝礼なんてしませんが、今日は少し、皆さんに問いたい事があるので時間を頂きました。もうお気付きの方もいらっしゃるとは思いますが、また、知らないまとめサイトに、この会社の評判を下げる様な事が書いてあったので、単刀直入に聞きますが、スパイはいませんか?以前もこんな事があって、その時は、他会社のスパイが紛れ込んでいたので、問うて見たのですが、如何でしょうか?もし心当たりがある。もしくは犯人は、この後社長室へ行ってください」

なんて、長々と話していたのを聞いた僕は、他会社のスパイ?悪口?何それ?。なんて、今まで想い続けていた、綺麗事の様な気持ちを払拭するかの様な、少し黒く色付いた様な世界が垣間見え、頭の中には、部長から聞いた話がぐるぐると回り続けていた。

そして、部長の話も終わり、僕は、すぐに先輩の元へと駆けると、昨日、少し含んだ様な言い回しをしていた町田に、問いただした。すると、「あぁ。さっきの話ですね。まぁ、聞かれると思っていたので、解説していきますね。まず、この国には、鉄道会社が三つあるのは知っていますよね?」

なんて聞かれ、「一関と、一松ですか?」

と、答えると、コクッと頷き、さらに話を続けた。

「それでね、この三つの線の争いの原因は、社長との仲が悪いからなのか、昔に粗相をしてしまったからなのか、原因は、当人達にしか分からないけど、争い始めてしまったんです。そして、大まかな争い内容は、安全性と、速度をいかに上げられるか。でした。ここまでは競えば競う程技術も性能も上がって行くから良いんですが、それ以外に健全ではない部分が出てきてしまったのです。

それが、知らないサイトでの悪口、スパイ行為、電車の共有化のNGなど、乗客の事などを考えない、リテラシーの悪い会社へと成り果ててしまったのです」

こんな話を聞いた僕は、今まで感じていた概念を覆され、黒く染まってしまい、やる気を失いかけていた。

何なんだこんな世界。会社がこんなんじゃ、やる気も出ないよ。

何て思いつつ、熱が少しずつ、少しずつ、冷めて行ってしまった。

それから僕は、少しずつ、サボる頻度が増えてゆき、部長も憤りを感じる程に成り下がってしまっていた。

そんな状況を見た町田は、自分が余計な事を言ったからかな、なんて思っているのか、本人のみぞ知る事ではあるが、少し顔を歪ませつつ、近づいて来て、口を開いた。

「ねぇ。真相を知っても、大丈夫って言ってたよね?確かに、君が感じていた世界観とは違うかも知れない。頭ごっちゃになって、やめたくなるかも知れない。その気持ちも分かる。でも、君の夢を叶える為に、何でも頑張らないとでしょ。まずは、この状態を修復する為に、社長を目指したらどうです?」

なんて言われ、確かにそうだね。別に自分自身が変えていけば良いのか。なんて、気持ちが強くなっていって、気分が昂り、これからの事へのやる気を再確認した。

そんなこんなで先輩からのやる気を頂いて、この一年は、色んな事に精を出して来た。

まず、次の電車製作にあたって、発電法は…‥。

なんて、自分で構造を考え、なるべく質の高い物を作る。と言う事に重きを置く事とし、製作を開始した。

それから、約20年が経過し、40歳になった頃、ある話が僕の所に転がり込んで来た。

「ねぇ、さっき部長が呼んでたよ」

「はい。分かりました。教えてくれて、有難うございます」

何て先輩から言われた僕は、一度作業を中断して、何だろう?何て思いつつ、急ぎ足で、部長の元へと向かった。

「部長。お呼びですか?」

と、声を掛けると、「あぁ。来てくれたね。少し頼み事を聞いてくれると嬉しいのだが、部長の座を、貰ってはくれないだろうか?もし良いなら、上には俺から伝えて置くから。」

なんて、急な昇進話に、一瞬、光り物を見つけたカラスの如し、飛び掛かって了承しようとも思ったが、理由もわからずに了承するわけにもいかないと、少し冷静さを取り戻し、

「なぜ急に、そんな話を?」

なんて聞くと、「俺、後一週間でこの仕事を辞めるんだ。それでだね、最初の頃は、やる気を無くしてサボる事も多かった印象だけど、何かを皮切りに、忽然と、いつもの君の仕事の時の姿が消えて、色んな事に対し、頑張る姿勢を見せていたから君が適任かと思っている。ほかとは熱量も違うし」

なんて、少し長い説明を受けて、了承した。

それから一週間後。僕は無事、部長へと昇格する事ができた。

そんな初の役職での勤務の日、僕は、歩きながらも、街中に、花が咲き誇っているかの様な気分で、会社までの道筋を歩き、少し浮ついた面持ちで、会社へと着いた。

それから、前部長が腰を掛けていた席へと座り、みんなが来る事を、今か今かと、ウキウキとした気持ちで待ち侘びていた。

それから、10分ほど経過して、おはようございます。なんて言う声が響く事で、さらに昂る気持ちが加速した。

そして、みんなそれぞれの持ち場へと着き、作業を始めたので僕は、折角の部長と言う立場であり、何かこれを利用できる手段は無いか?と、熟考しつつ、僕も、一応鉄道製作部という事で、作業を始めた。

それから、今日の業務が終わり、家へと帰る途中、ある考えが、頭をよぎり、これならもしかしたら、目標である、鉄道業界への狼煙を挙げられるかも。なんて考え、今から起こる事への期待ばかりが膨らみ、一歩を踏み出してしまった事でもう、踵を返す事が出来ない状況へと陥ってしまう事となってしまうのに、気付けないまま、突き進んでしまうのだが、こんな話はさて置いて、家へと着くと、やはりまだ、あまり研究が進んでおらず、デジタルのイラストもない時代のパソコンを手に、何か、外部への架け橋となってくれるものは無いのか?と、インターネットの海へと潜り、探し始めた。

それから少し経過して、ある記事を見つけた。

WEBサイトの作り方。と言うサイトが目に入り、即座にクリックをすると、プログラムのコード、それの解説。と、交互に書かれており、理解がしやすかったのは、覚えている。

それから、必要スペック、必要機材についても書かれていて、正直有難い気持ちでいっぱいだった。

だが、また、ある壁へとぶつかる事となる。

それが、機材の値段だった。

この頃は、あまり機材も出回っておらず、あまり普及もしていなかったので、どうしても、値段を跳ね上げるしか選択肢が残されておらず、今はどれを買うにも手が出せない程の価格帯だったのだ。

しかし、僕が幼少期から就職する前までは、興味本意で買う人も幾許かおり、機材も出回っていたので、普通に買えた。

なので、僕はこの頃に使っていたパソコンを、今もなお使っているのである。

それから、僕がもう一つ問題視している事が、この時代は、難しい、手の出し辛いものとして扱われ、持って居るのも珍しい時代なのだ。

なので、その部分も問題視して、他の方法を考えることとした。

それから、考えに考え、ある結論に至った。

そうだ、一旦外へと出て、考えよう。すると、知見も増えて、見方も変わるかも知れないし。

なんて考えへと至り、靴を履いて一歩外へと踏み出したのだった。

それから、少し街中を散策して居ると、あるお店が目に入った。

それが書店だ。それを見た瞬間、もしかして、これなら。なんて言って、店の中へと入り、何冊かの本を購入して、踵を返した。

それから、その本を幾度となく読むことで、ある程度の知識はつき、ある手段へと僕は移った。

その次の日、会社へと行くと、部長としての職務の一つである、重役会議への参加の手続きが回って来ており、それが、大体一週間後である事が判明した。それから、議題の内容などについても書かれており、その内容が、他の会社からの嫌がらせ行為の対策についてと書かれていた。

それを見た僕は、計画を実行する為の材料は全て揃ったと考え、サインと印をさっと済ませ、提出した。

それから一週間もの間、この会社を題材にした本を書いては出版社への持ち込みを繰り返すも、中々了承は出ず、何がだめなのか?なんて考え始めるも、こんな事を考えて居る暇もない。出来るだけ書けば、どんどんと面白くなっていくだろう。なんて考えていった。

それから、会議前日、今日もまた、出版社へと向かうと、

「頑張って居るのは伝わるし、面白いと思う。この、一鳴線?のいい所だったり、この会社の根も歯もない事をインターネットに書かれて落ち込んで、やる気を無くすも先輩に喝を入れられて、更なる目標を目指して進む姿も。でも、鉄道会社と言う設定がある本は無かったと思うけど、内容が良くありそうな展開なんだよね。これで文の構成や、表現、言い回しが自分なりに出来たらいいんだけどなー。」

なんてアドバイスを今日は頂く事が出来たのだが、明日の会議での交渉の材料がなくなると思い、急ぎ足で帰路へと着き、家へと着くと、今日もらった内容を参考にして、修正をする事が出来た。

だが、次はどこへと持ち込もう。

なんて、考えていて、少しまた外へと出て、良さそうな出版社を見つけようと必死に探して居ると、座主出版と書かれた出版社が目に止まり、一目散にとその場所へと駆けて行った。

中へと入ると、受付があり、そこで、あの、持ち込みなんですけど。なんて声を掛けると、分かりました。では、こちらへとお願いいたします。なんて、その人は、受付を出ると、その場所まで案内をしてくれた。

その部屋は、少し小さめのテーブルに、向かい合う様に椅子が設置されてあった。

それから、「担当の者が来るまで席へと着いて、少々お待ちください」

なんて言われ、席へと着いて、先程修正した本をバッグから出してテーブルの上へと置き、待って居ると、ガチャリ。と、ドアが開くと共に、編集者さんが入って来たので、僕は席を立ち、よろしくお願いします。と頭を下げると、少ししてから2人同時に席へと着き、運命の時間が始まった。「では、読ませて頂きますね。」

なんて言うと、ページを一枚。また一枚と開いて行き、その度に胸の辺りから響き渡る音が、段々と速く、うるさくなって行った。

そして、読み終わると、パタン。と本を閉じて、こう言い放った。

「この本。いいと思うよ。この、ストレートで伝わりやすい文章、そして、内容は多分これノンフィクションの、エッセイでしょ?」

と言われ、「はい!その反応って事はもしかして?」

何て口にすると、「うん。手は貸すけど、もう少し、文章は、構成し直した方が良いかな?だから、そこの部分も手伝わせて貰うね。それで、売れそうなら、出版する事を約束しよう」

なんて、前向きな言葉を頂き、舞い踊りたくなる様な気持ちを込めて、「分かりました。よろしくお願いします」

と、言うと、「じゃあ、このマネジメント契約書にサインして」

なんて言われてサインをして、ウキウキとした面持ちで、お礼を済ませると外へと出て行き、帰路へ着いた。

それから次の日、重役会議が始まった。

そして、ぼくが発言する番となり、「それでは、私はこの件に対し、先週から対応に赴いていました。その内容につきましては、この会社の良き所、苦労などを皆さんに知って頂くために、出版社へと足を運び、昨日、座主出版の方と、マネジメント契約をして来たので、いつでも印象を動かせる術を手に入れました。」

なんて言って、ぼくの発表は終わった。それから、重役会議が終わると、社長から直々に呼び出されてしまった。

何だろう?もしかして、今日の発表の事か?何て重い空気を漂わせながら社長と顔を合わせると、「先ほど、重役会議で話していた事は本当か?」

なんて聞かれ、「はい」

なんて少し気分が下がった様な面持ちで、反応すると、「まぁ、普段ならもしかしたら怒ってしまうかも知れない。でも今回は、悪影響であるライバル社からの妨害を対策出来る可能性があるから別に怒りはしない。ただ、私にも手伝わせてくれ。君の本の出版の」

なんて話をしていた。それから、編集者、社長から、文章の書き方を耳にタコが出来るほど指導を受け、1年後、出版までありつける事が出来た。そして、その事について嬉しく思っていた3人は、酒屋へと行き、お酒10瓶程を社長の財布から、出して貰い、飲み会を始めた。

そんな飲み会が始まってから1時間が経過した時の事だった。社長は、ほろ酔い程度ではあるが、ある言葉を放つ事で、僕は、とても幸せな気持ちを増長して行った。

「一年前の事や、頭の回転、面白さなどが起因となって居るのだが、社長は、俺よりきっとお前の方が良い風に変わっていけるかも知れない。だからさ、経理などのお金関係は引き受けるけど、会社を回したりしてくれる?」

なんて言われ、僕の一つ目の目標である、社長になると言う夢が、ほぼ確実に叶ったことにより、心の整理がつかずにいたが、先輩の言葉を思い出し、「はい」なんて答えた。

それから、僕は、現実ではほぼあり得ないであろう事で、社長になる事が出来てしまった。

そして、それと同時にどの様にして、一松線、一関線との交友関係を深め、同盟を組める様になる為の行動を起こすかと言う、第二の壁へと当たってしまった。

何かとりあえず友好関係の築ける方法は無いのか?何て熟考して居ると、業務時間が終わり、帰路へと着いた。

それから家へと着くと、ペンと紙を取り出し、今日あった事を、まとめ始めた。

そして、その時に思ったのだが、多分、こんな本を書いていたとしても、向こうの人は、絶対に手に取らない。なら、確実に手に取らなければならない状況を作り出すほか無い

何て考え、次に出版する小説を書き始めた。

第二話 三つの鉄道会社。

何てタイトルを書き記し、二つの社長も手に取りやすい様に工夫を凝らした結果、こんなタイトルとなってしまったのだ。

そして、この本には、3つの会社の好感度を上がる様な内容を書き記した。

そんな訳で、どの様に書き記したのか、一部を抜粋して、ここにそれを書こうと思う。

まず始めに、一関線かな?一関線は、残りの2社と違って出来る限り、人数を多く雇って居る。だからこそ、車両の種類、本数などが、他と比べて少し多くなって居る。

それから、一松線は、他と比べて少数精鋭である。が、それには理由がある。その理由とは、粒揃い、様はレベルの高い技術者を対象として居る為、中々雇うことが出来ず、人数が少ないのだ。その代わりと言っては何だが、上記の事と通じて造り込みに重きを置いて居る為、スピード、安全性は、他の線と比べると、1番と言って良いほどである。

最後、三つ目の線である一鳴線では、特に目立つ取り組みはないのだが、フォルムのデザインに重きを置きつつ、その他の面は、技術者は雇って居るが、他の線と比べると、平々凡々である。なので、フォルムデザイン以外は、造り込みに置いても、車両の種類、本数においても、二つの線の中関位の実力で有ると考えて居る。

結びにはなりますが、この三つの線には、それぞれに強みが感じ取れ、この、鉄道三国志と呼ばれる争いが、早く終息して、互いに連携関係が築けることが出来れば良いのにな。何て思って居る。

と言う様な内容。そして、最後のページには、著者、一鳴線社長。と、書き記した。

それから、何処からの情報だかは皆目見当も付かないが、一関線の社内には、書店がある事を座主出版の編集者から聞いたので、そこのみでの販売とする事にした。

それから、時が過ぎて、1ヶ月後、ようやく製本作業が終わり、販売する事が出来たのだが、まだ売り始めて初日の為、まぁ、売れないのも当然かな?なんて思いつつも、黒い気が立ち込めと、次第にどんどんと色が濃く色付いてしまった。

そこから、時が過ぎて一週間後になるも、余り状況は改善せず、諦めかけていた。

「何でこんなに売れないんだろう?三つの線を題材にして居るからかな?それとも、つまらないとか?何にせよ、一旦線毎に売り出して見ようか。」

なんて言って、出版した本の内容を、線毎に分けて製本してもらい、一関線の事のみを書かれた本を、一関線会社内へと出版してもらった。

すると、少しずつではあるが、売れ始めた事により、やはり、他の線の会社が載っている本は、買いたくないのだろうな。と思った。

だが、あの本も、無駄にはしたくない為、三つの線について書かれた本は、座主出版の系列の書店へと並べる事となった。

それから、一松線のみの事が書かれた本は、一松線付近に位置する書店に置く事で、売れ行くのを待った。

すると、予期せぬ場面が起因となって、事態は急変するのだ。

「あー。3つの線が連携を結べば良いのに」

そんな事があってから、一ヶ月が経とうとして居る時に、外を歩いて居ると、こんな声が、チラホラと聴こえる様になって行った。

何で急にこんな声が聴こえる様になったんだろう?

なんて、内心疑問に思っていつつも会社へと向かい、社長室へと入った。

すると、コンコン。と音が聞こえ、誰か用があるのかな?なんて思いつつ、「入れ!」と、声を掛けると、ギー。とドアの開く音が聞こえると同時に、失礼します。と声が聞こえ、事務長が入って来た。「朝早くから申し訳ありません。社長宛に、お電話が入っております。」

なんて言われ、「分かった。それじゃあ、電話を掛け直すから、電話番号を教えてくれ」

と言って、教えてもらった番号を、掛け直した。

「もしもし、一鳴線社長の、米田です。」

なんて言うと、「あ。一関線の社長、旭です」

何て返って来た。その事に驚きつつも、「なんの御用でしょう?」

なんて言うと、「一鳴線と、同盟を結びたいのだ」

なんて、要件を言われ、思っても見ない状況に、不安の念はありつつ、喜びが勝った事により、分かりました。と答えた。

すると、「では、一鳴線へと、次週の同じ曜日に、訪問させて頂きますが、宜しいですか?」

と、聞かれたので、「はい。」

と、答えた。もうすぐ夢が叶う事への、喜びや、もうすぐこの決裂関係に終止符が打たれ、効率の良い業務へと移り変わっていく姿を想像することで、胸に期待を膨らませていた。

それから、約束の日となり、コンコン。とノックの音が響いた。どうぞ。声を掛けると、そこにいたのは、一関線の社長だった。

それから、二人は連携契約に関する書類にサインをした事で、正式な、仲間となる事が出来た。

それから、その後、「なぜ、急にこんな話を?」

と、理由を尋ねると、

「君が、本屋に出していたあの本を、いろんな人が読んで、この国全体に、鉄道会社同士、連携すれば良いのにな。なんて声が広がって来た事がきっかけで、今回の事を実行したのです」

と言われ、あー。あの本か。なんて思いつつ、「そうなんですね。有難うございます。夢の一つが叶いました。」

なんて話、このお話は、幕を閉じた。

それから一週間が経過して、今度は一松線からの電話が来たので、同じ対応をして、理由を聞くも、一関線と、同じ解が出た事で、あの本の影響力って凄いんだな。なんて思いつつ、三つの鉄道会社を結束させる事に成功した僕は、夢が叶った事による幸福感が、胸の中を駆け巡った。

一鳴線の裏側で、余り良くなさそうな、不穏な空気が流れ込んでいたのを露知らず。

次の日、会社へと向かい、社長室へと入ると、机の上に、本が置かれていた。

そのタイトルが、一鳴線社長の真実。

と言ったタイトルで、何が書かれて居るのか不安に思い。ページを捲り、読み終えると、溜息を吐き、本を机の上へと力無く置いた。

何が書かれていたかと言うと、スパイを郵便局員になりすまさせる事で、一関線社内へと入り、情報を入手した疑い。

一松線、一関線を吸収して、自分のために、駒のように使おうとして居る可能性。

まず、一つ目の理由として挙げられるものとして、郵便局には一切の記録が無いものが、一関線へと運び込まれていた。それから、なぜ、敵対関係である敵に対して、あの情報を掴めたのだろうか?

二つ目の理由としては、一つ目の話を鑑みて、そうなのでは無いか?と筆者は感じ取った。

なんて書かれていた。そして、表紙を見ると、座主出版の文字が印字されており、それを見た僕は、寝首をかかれた様な、裏切られた様な気持ちを持ったのだ。

それから、座主出版へと急いで向かい、担当の人の話を伺うと、

「あぁ。これね。実は、ここら一体の出版社は、一鳴線の元社長にお金を積まれていてね、君に破滅を迎えさせろって。だから、それ通りに行動しただけさ。多分、違う思想を持って居たから排除したかったんだろうね。」

なんて話を受け、今まで信じて居た人が、まさか。これからどうすれば?だとか、人ってこんなに簡単に堕ちるんだ。だとか、怒り、だとか、悲しみだとか、色んな感情、思いが、糸の様に絡まり、解けなくなって行ってしまい、黒く染まってしまった。

それから、座主出版を出ると、とぼとぼと会社へと向かい、社長室へと戻ると、一本の電話が掛かって来た。

その電話の内容と言うのも案の定、一関線、一松線からで、契約破棄の申し出だった。それを聞いた僕は、その申し出を呑み、二つの線の怒りを、一心に受けた。

そしてその時には、なぜ僕がこんな事を。まぁ、もうどうでも良いか。もう、働かなくても暮らせる分のお金はあるし、もう、終わりにしようかな。

なんて言って、ボロボロになってしまった僕は、一鳴線をやめた。

「とまぁ、これが、瑠璃のお爺さんが書いた、最後の本で、これがこのお爺さんが体験した全てなのだが、こんなのお爺さんが可哀想だとは思わないか?この願いを叶えてやりたいとは思わないか?勇人。」

と、一関線社長は読み聞かせた後に、こう問いかけると。「うん。そうだね。僕もそう思うよ。」

なんて、少し複雑な気持ちになりながらも反応を示し、自分は恵まれて居たんだな。と言う事を実感して、涙した。

「それからは、さっき話した通りなのだが、なぜ、瑠璃のお父さんは勇人の力を借りたいと思ったのかの説明をして居なかったね。今のこの反対派勢力が殆どの世界を何とかするには外部の力が必要だったのだ。外部の行動に対して行動を示す事が出来ないだろう。そして、君達の技術力を向上させれば、周りが辞めてしまった場合にも、手を打つ事が出来るからだったんだ。単純だろ」

説明を受けた事で、納得した勇人は、色々話してくれて有難う。なんて言って、この話は幕を閉じた。

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トレイン三国志 ナイト @24685

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