トレイン三国志
ナイト
第1話鉄道好きだった少年の物語
《プロローグ》
これは、昔々、機械文明が栄えて間もない時期の事だった。
とある国で、どちらが優れた鉄道を製作し、使用出来るか、そして、いかに速く乗客を送り届けられるかと言う争いが、3つの会社で行われていた。
そして、その3つの会社の名称は、一関、一鳴、一松で、それぞれの会社の路線名は、会社と同じ名称で、一つ線で固定されていた。
それから80年後の事、そんな時代が終わらない中、一鳴線の周辺に産まれた1人の少年の物語である。
《第一章夢見る少年》
少年は、大体5つになった頃かな?の時に、ある少年に出会った所から、物語が始まった。
この国には、5歳から教育の為に学校へ通うと言うしきたりがあった。
少年も、それに従って今日から学校へと通う事となった。
僕は、行ってきますと言って外へ出ると、
初めての経験が待って居ることへの高揚感か?はたまた不安か?いや、両方か。
何て、いろんな気持ちが高まり、胸をばくばくと高鳴らせながら、学校へと向かった。
学校へと着き、指定の教室へと入って行くと、大体、30人位かな?の同い年くらいの子が居た。
人見知りをする性格で、余り人と話さなかった少年は、こんな環境で、本当に自分を保てるのか?何て不安を駆け巡らせ、自分が人見知りである事を恨んだ。
この学校には、クラスが存在し、少年が所属するクラスも、こんな事を考えて居る間にグループが出来てしまい、話の輪に入り辛い空気と化してしまい、完全に孤立してしまった。
「はぁ。やっぱりこうなるか。まぁ、開始まで暇だし、少し寝ようかな?」
なんて思いつつ、席へと着いて、机に突っ伏し、うたた寝をし始めてしまった。
すると、
「ねぇ…‥。ねぇ‥‥。」
と、何やら遠くから声が聞こえて来て、それが段々と近づいて来た。そして、それと比例するかの様に徐々に目を覚ました少年は、
「何だ?」
と言って、気怠そうな雰囲気を醸し出し、目をゆっくりと開いて行って、顔を横に向けると、そこには、隣の席の机にちょこんと腰を掛けた少年の姿があった。
「何?」
と、目をこすりながら言うと
「さっき先生が来て、もうすぐ外に移動だって言ってたよ。」
と言われたので少年は、
「そうなんだ。教えてくれてありがとう」
と言って、頬杖を突きながら、時間まで待って居ると、
「ねぇ。もしかして、どこのグループにも入れ無かった?」
と聞かれたので少年は、
「うん。そうだけど何か悪い?」
と、返すと、
「いや。僕もそうだから、これから1人だと寂しいだろうし、はぐれもの同士、仲良くしない?」
と、初の申し出に少し戸惑いながらも内に高揚感で胸が包まれた。
そんな気持ちを押し込めつつ、
「何で?まぁ、いいけど」
興味の無さそうな、素っ気ない態度を取ってしまった事に、僕は頭を抱えてしまった。
そんな少年を横目に彼は、そんな事など気にも留めず、川の様に軽く流し、反応を示した。
「やったー。ありがとう。僕の名前は米田瑠璃」
と、名乗りつつ、喜びの気持ちを表す彼に少年は、
「僕は、五里勇人。こちらこそよろしくな」
何て、挨拶を交わしていた。
そんなこんなで初めての友達が出来た勇人は、世間話をしながら仲を深めて居ると、
ガラガラ。と言う音が聞こえて来た。その音を聞いた瑠璃は、
「じゃあ、先生が来たから」
と言って隣の席に着いた。
それから、ホームルームが始まった。
「みなさん。おはようございます。今日から、ここの担当となる、早見冬樹です。よろしく。」
なんて、軽く自己紹介を済ませると、
「それでは、先程お伝えした通り、今日は外での授業なので、皆さん校庭へ集合して下さい」
との指示があった。
それから少年達は、外へ出て広い校庭へと移動し、能力試験と称して様々な事をこなしていった。
それから、この時間が終わって休み時間に入り、教室へと戻る道中瑠璃と、こんな話をしていた。
「ねぇ。何で一人でいたの?」
さっきの事を聞かれた勇人は、
「人と話すのが苦手だから」
と言うと、
「そっかー。だから素っ気ない態度を取っていたんだね」
と、返されたので、
「そっちは何で一人でいたの?」
と、聞き返すと、
「僕ね、グループに入る努力はしたんだ。でも、好きな物を聞かれた時に、電車のフォルムと構造を見るのが好きで、そう答えたんだけど、そしたら、全然周りからは理解されないで、あれはただの乗り物だよだとか、言われて価値観の違いで、話が合わなそう。て、向こうから離れちゃったんだ。それからどこのグループでも」
と、返された勇人は、凄いな。努力出来て。僕なんか。何て、自分を卑下しつつ、まぁ、周り何てそんなもんだよね。趣味趣向が合う人、自分と似た人を仲間に入れたいと思うのが普通だもんね。楽しい方がいいし。
何て、同情した様な面持ちで、少年とはかけ離れた様な事を考えていた。
それから、教室へと辿り着き、席に着くと、勇人は、
「ねぇ。あんまり電車とか乗って来なかったし、余り興味も無かったけど、ただの乗り物じゃ無いの?」
と、尋ねると、
「まぁ。普通はそうだよね。じゃあ、今日、君に何で電車が好きになったのかを知ってもらう為に、家に来てもらっても良い?」
と、返された勇人は、何で?と言う気持ちと、初めて友達の家に上がれると言う高揚感が争い、何で?と言う気持ちが競り負けたので、
「分かった。」
と返すと、
「じゃあ、今日は多分、1時頃には学校も終わるだろうから、2時に、一鳴線の春日駅前に待ち合わせで良い?」
と聞かれ、その駅は、家から大体10分程で着くので、
「うん」
と、一つ返事で返した。すると、ガラガラ。と扉が開き、先生が来たので、
「じゃ」
と言って瑠璃は、隣の席に腰を掛ける。
それから、もう1時間程過ぎて、授業が終わり、ホームルームが始まった。
そして、それも終わると少年は、瑠璃に話しかけ、途中まで一緒に帰ろうなんて、声を掛け、承諾を得て一緒に帰る事となった。初めての経験で、嬉しい事づくしな事に喜びを覚えつつ、軽く世間話をして居ると、時の進みは早く、もう、家へと着いてしまった。
そして、驚きな事に隣は瑠璃の家だと言う事が発覚した。
「うわ。凄い偶然だね」
「ねぇ」
なんて、笑い半分で話しつつ、待ち合わせ場所についての話を再度する事となり、直接瑠璃の家へと向かい、呼び鈴を押す事に合意した。
それからと言うもの、勇人は、
「ただいま」
と、玄関へと入って行き、靴を下駄箱に入れて上がると、居間へと向かい、昼食を済ませて自分の部屋へと戻った。
それから、待ち合わせにはまだ20分ほどあり、何をするか迷って居る様子の勇人は、趣味も特に無く、暇な時は、基本寝ていたので、何か思い付くはずも無く、ただただボーっとする事を選んだ。
それから15分程経って、僕はようやく動き始めた。
着替える必要の無い勇人は、居間へと移動し、今日、友達の家に遊びに行く話をしてから、昂る心持ちからか、待ち切れずに少し早くに、朝とは違う面持ちで、
「行って来ます」
と言って、外へと出て行き、瑠璃の家の呼び鈴を鳴らした。
リーン!。と言う音が鳴り響くと、
「はーい!」
と、瑠璃の声が聞こえ、ドアが、ギー!。と、開いた。
「いらっしゃい。上がって」
と、言われるがままに、下駄箱に靴を入れて上がり、案内された部屋へと行くと、そこには、電車の模型や、分解され、中が丸見えになった電車が置いてあった。
「何これ?電車?」
と、異様な光景に口の塞がらない僕を横目に、瑠璃は、解説を始めた。
「これは、電車文明が栄え始めた時に一鳴線を初めて走っていた初代の電車なんだ。このフォルムだったり、動く仕組みだったりに、興味を持ったから、電車が好きになったんだ」
と言われた勇人は、確かにこれがどう動いて居るか気になる。
何て、子供ながらの好奇心を胸に、
「近づいてみても良い?」
と聞くと、
「良いよ。てか、気になるなら、言えば、もっと分解できるからね」
と、言われたので、
「うん。ありがとう」
と言って近付き、まじまじと見始めた。
「なんかよく分からないのが中にいっぱい詰まってるな。」
なんて言うと、
「中に入って居るのは、電気を起こすものと、電気を必要な場所に送るもの。それから電気を受け取って稼働し、タイヤとかを回すためのエネルギーへと電気を変換するものが設置されて居るんだ。良かったら動いて居るところも見る?」
と、聞かれたので、うん。と少し興味の出て来た勇人は、大きく頷いた。
すると、瑠璃は、部屋の奥の方にある、棚の上に置いてあった、ボタンやレバーの付いた箱?を取り出し、レバーを手前に倒した。
すると、ギー!ガシャン!。と動き出し、それと同時に少しだけ車両が浮かび上がった様な気がした。
それから少しすると、キーッと言う音が辺りに響き渡り、電気を変換する装置に繋がっている楔、其れから、タイヤの周りについている楔。と、この順番で徐々に上下へと動き始めた。
1.2秒ほど経つ時には、タイヤが動き始め、楔の動きと比例して、徐々に徐々に、動きを速くしていった。
「何これ?凄い。もしかしてこれって、タイヤの周りと繋がっているものと一緒にタイヤが動いてる様に見えるけど、これがタイヤを?」
何て疑問を持つ勇人に対して、瑠璃は、
「じゃあ、一度電源を止めて、この装置の中を分解して見てみる?ドライバーさえあれば、簡単に出来るから」
何て言うので、
「何か中に秘密があるの?」
と聞き返すと
「そうだけど、口で説明するのは難しいから」
と言って、電源を止め、四角いタイヤを回す為の装置の4隅に付いているネジをドライバーでクルッと取ると、蓋を開いて中を見せて来た。
外側から見るよりも、ひと回り小さい様な気がした。
そんな感覚を覚えつつ、中を覗き込むと、楔が入って居るであろう小さい箱状のもの、そしてその先端には、太い綱の様なものが繋がっていて、向かいにある透明な箱の窪みと繋がっていた。
それからその綱の周りの内壁には、線がビーッと入っており、その線の向こう側には少し、空洞が出来ていて、一回り小さく思えた事に合点がいった。そして、その線から、向かい側の線まで細く、ピンとしっかりと貼った糸が結び付けられて、綱の上を通っていた。
「何これ?どうなってんの?」
と疑問を呈すと、瑠璃はまたレバーを手前に倒し、装置が動き出した。すると、綱は、鞭の様にビシンビシン!ビシンビシン!と動き出し、それに釣られた楔も後を続くかの如く、上下へと動き始めた。
少し近付いて、窪みの中を見てみると、先端の綱の先は、縦に太い線の様な窪みが入っていて、そこに取り付けられたケースの中に固定され、そのケースが上下に動く様になって居る様に見えた。
「綱の先に繋がって居る装置によって上下に動かして、それがタイヤにまで繋がってるんだね。凄い」
何て言うと、
「凄いでしょ?それじゃあ、綱の先も見せてあげる」
なんて言って、ウキウキと、理解者が出来るかもと言う感覚で浮ついた気持ちの中、その装置を外し、綱や、配線と一緒に持って来てくれた。
そして、許諾を得て、その装置に取り付けてあるケースを外すと、ケースの裏には何やら棒の様なものが付いており、熱せられていて、とても手に持てる様なものではなかった。
「この棒、すごい熱いけど中で何が起きてるの?」
と、勇人が聞くと、瑠璃は、
「じゃあ、タイヤを動かす為の装置の本体の中も見てみる?」
と聞いて来たので、コクっと首を縦に振った。
それから瑠璃は、タイヤを動かす装置の本体の上の四隅について居るネジをドライバーで取り外し、パカッと蓋を開いた。
すると、中には縦に、複数の棒が等間隔に配置されており、歯茎の様な隙間に、歯の如し入れ込まれていた。そして、横から覗き込むと、今手に持って居るケースが埋め込まれていたであろう穴と、外側から見た窪みの意味を理解することができた。
そして、許諾を取り、上から触って見ると、触ったのは棒では無く、透明な板で、この装置は、端の二箇所の正方形の割れ目以外は全域にこれが敷き詰められ、なぜか理由を尋ねると、じゃあ、動かして見るか?と言われ、コクっと頷き、動かしてもらう事となった。
瑠璃は、勇人の手に持っていた綱とケースを取ると、それをセットし、レバーを手前に倒した。
すると、取り付けられていた棒が、上下に動き、それが限界まで上がり、下がると同時に端に付いていた二箇所の割れ目が開き、また、上がると同時に閉まっていった。そして、これを繰り返すと、ケースが何故か、原因は分からないが、ピストンの動きに合わせ、上下に動き、それが綱、そして、楔までもそれに併せて動いてしまっていた。そして、徐々にタイヤが動き始めた。
「何だこれ?どうなってんだ?」
なんて、初めて見て、その上何も知らない勇人は、段々と興味を惹かれてゆき、瑠璃を興奮気味に問いただした。
「これは、この棒が下に降りると空気穴が開いて空気を溜める。そしてその穴が閉まると中が圧迫されるから下にケースが動く。棒が上に動くと空気の流れが上向きに切り替わるから上にケースが動くんだ。因みにこの棒は、この棒を入れ込んだ窪みに電気が通っていて、その電気の反発する力とくっ付く力を利用して、上下に動く様になって居る」
なんて説明を聴いた勇人は、目から鱗が出る様な心持ちで、そうなんだ。凄い。と返した。それからまじまじと内部を見て居ると、瑠璃が、こんな事を言い始めた。
「ねぇ。これが走ってる所、白黒だけど見たい?」
なんて聞かれたので勇人は、
「見たい!見たい!」
なんて、首を振りながら返事した。
そして、瑠璃は奥の棚にまたも移動し、カメラを手に取ると、勇人の隣へ行き、カメラの電源を点け、映像を流し始めた。
すると、この部屋にある模型と同じ、カッコよく、美しい曲線を描いたフォルムの電車が、ゴー!ガジャン!なんて、凄い音を立てて、下から煙を出しつつ走って居る映像が流れ、勇人は、
「この煙も、音も、この電車を引き立てて居て、格好良さが更に際立って居て良い!」
なんて、もう虜と化している勇人は、自然とこの言葉が口から出て居た。
すると、
「ありがとう理解してくれて。理解してくれる友達が居るって良いね」
何て歯に噛む様に笑う瑠璃を見て、勇人は、ある決意をした。
「ねぇ、これからさ、鉄道好きを集めて、鉄道学校に進学してさ、学んで、自分で作った電車を走らせるのも面白そうじゃ無い?だから、ちょっとそこを目指して勉強して見ない?」
と、鉄道製作の道に進むと決意して、話を瑠璃に振ると、
「確かに!良いねそれ!じゃあこれから、よろしくね。一緒にそこ目指して頑張ろう!」
何て、子供ながらの大きな共通の夢を、胸に掲げ、運命の出会いを果たした二人が動き始めるのだった。
《第2章 仲間と好奇心》
その日の翌日の夕方頃、勇人は、瑠璃の家で、瑠璃と、鉄道の仕組みに関する本を読み勉強していた。
ただ、読んでも読んでも昨日知った事以外の事は載っておらず、それ以上の情報を集める事が難しい事を悟った二人は、頭を抱えて悩んでいた。
「これ以上の情報が欲しいのに、これ以上の情報がどこにも載っていない。もしかして、これが全てなのか、それともこれより詳しい知識は需要ないのか?」
何て、項垂れていると、瑠璃が、
「なら、勉強の事は他の方法が思い付いた時にすることにして、今は、先に出来る事をやっておこうよ?」
何て、前向きな姿勢を見せて、今の事態の解決策を提案すると、勇人は、内心どうやって?なんて考えながらも、自分には策が思い付かないので口の中に封じ込め、良いよと答えた。
「じゃあこれから、どうやって仲間を集めるかを考えよう。まず、活用出来そうな場所は、やっぱり無難に学校かな?それで、確かあの学校は、部活があって、自由に作れて自由に校庭や、廊下とかにある掲示板を利用出来るはずだから、鉄道研究部を作って貼り紙を出せば、集まって来るかな?」
「分かんないけどやって見る価値は有りそうだね」
なんて話、学校の部活の規則の確認を、昨日貰った規則の書かれた紙で確認を始めた。
「うーん。まずは、部員は最低3人か。僕達にはきついな」
何て、最初から出鼻を挫かれた様な思いをしつつも、解決策を模索していった。
「うーん、あと一人引き入れば部活は作れる。でも、どうやって集めようかな?」
そこで二人で考えていると、勇人は、ピーン!と、閃いた様子で、
「そうか。この方法を使おう」
なんて言って、また、規則の書かれた紙を取り出した。
「確かここに。あった」
なんて言って、指をさした所には、放送について書かれていた。
それを見た瑠璃は、成程と、思いつつ、一応という事で、説明を求めた。
「まず、規則では、放送は、生徒も先生も使いたい人が使えると書かれている。だから、これを利用して鉄道ファンを募ろう。だから明日、先生に放送の使用許可を取って見よう?」
と、言われた瑠璃は、うん。と、首を縦に振った。
それから、二人で台本を作り始めた。
「ねぇ。ここって、こんな感じで良いのかな?」
だとか、
「これじゃ少し難しくない?もう少し放送で伝わりやすくしないと」
なんて話し合い、試行錯誤をし続けて、ようやく完成させることのできた二人は、まだ成果は得られていないが、台本を完成させたと言う達成感がもたらす満足感を味わうことが出来た。
そして、それと同時に、明日への不安の念も、立ち込めていた。
「人、ちゃんと来るかな?」
「大丈夫だよ。多分、協力してくれる人も、きっと何人かいるよ。」
なんて励まし合い、当日を迎えた。
勇人達は、学校で授業を受け、昼の1時間休憩が入ると、教室の目の前にある職員室へ入った。
そして、案外早く許可を得る事が出来た二人は、職員室の隣に位置する放送室へと向かい、放送を開始した。
「こんにちは、瑠璃です。今回は、新たな部活を作る目的で、部員になってくれる人を集める為に、この様な時間を設けていただきました。部活の名前は鉄道研究部で、鉄道の仕組みを研究する部活です。皆さんは、鉄道の動く仕組み、分かりますか?中の電気や、線、タイヤを動かす為の装置が、協力し合って動いているんです。この様な、詳しい仕組みが知りたい。興味がある。なんて人は、放課後、校庭で待っています。」
なんて説明をして、幕を閉じた。
それから瑠璃は、少し、顔をこわばらせつつ、ふぅー。と、溜息を吐きながら言った。
「緊張したー。これで、人が集まってたら良いな。」
「そうだね」
何て、話しつつ、放課後を待ち侘びた。
それから時が経ち、放課後。
勇人達は、ホームルームが終わると、一目散に、校庭へと移動した。
そして、待つ事10分後。
「うーん。来ないな。やっぱり刺さんなかったかな?まぁ、そもそもこの学校自体、こう言うのに興味無いやつが多いからな」
と、瑠璃は、入学式の事を思い出しつつ、こんな気持ちを吐露した。
「どうだろう。とりあえず、まだ来なそうだから、そこの階段の所に座って待ってよう?」
なんて勇人が言うと、コクっと頷いて、校庭から、学校入り口まで続く階段へと移動し、座った。
それから10分位経った時の事だった。
二人は、誰か来てくれる様に、声を掛けてくれる様に待って居ると、瑠璃は、後ろから肩をぽんぽん。と叩かれた事に気づいた。
後ろを振り返ると、そこには、バッグに鉄道のキーホルダーの付いた勇人より背の高い男の人が立っていたので、その人に、
「あの、さっき、僕の肩を叩きました?なんの様ですか?」
と、瑠璃が尋ねると、この人はこう答えた。
「あの、ここで鉄道研究部が待ってると聞いたんですけど、僕は鉄道が好きなので、この部活を設立する手伝いがしたいんです。あわよくば、鉄道ファンを増やしたい。何て言う事を考えてますので。」
「じゃあ、入部してくれるの?」
と、聞くと、
「いや、君達の鉄道好きであると言う証明が出来たら、そして、その本気が伝われば、入部します」
と言われた二人は、どうやって証明しようか迷ったが、すぐに、瑠璃の家に連れて行けばあるいは?何て考えに辿り着いた。
「それじゃあ、連れて行きたい所があるので、着いて来て貰える?」
なんて言って、瑠璃の家に案内して、家の中へとあげ、鉄道部屋へと案内した。
すると、
「何これ?凄い!初期の電車じゃん。何か、本物っぽいし。何でこんなの持ってるの?」
と、珍しい物を目の当たりにして、興奮の余り少し口調を荒げてしまったが、それに気づき、恥ずかしそうにしながら丁寧な口調に戻し、尋ねると、
「秘密」
と言われてしまった。
「そうか。秘密か。まぁいいや。とりあえず、ここに入部しようかな?こんな凄い物持って居るし、本気で好きなのが伝わって来た。」
と、言われたので二人は、
「ありがとう。じゃあ、ここに名前を記入して」
と言って、入部届を記入してもらうと、それを回収して、名前と学年を確認した。
「僕の名前は勇人。で、こっちが放送で話していた瑠璃。で、君は、2年の桜門大弥だね?これからよろしくね」
と軽く挨拶をして、無事、仲間を一人引き入れる事で、一つ目の難は突破出来た。
勇人達は、抱き合うほどの喜びを胸に灯すと共に、なかなか居ない鉄道ファンを探し、仲間を増やせた事による感慨に耽っていると、桜門は、二人に疑問を投げかけて来た。
「ねぇ。これから何をする?やっぱり仕組みについての勉強?」
と、まぁ、当然の疑問を投げかけられた二人は、家にある、仕組みについての本では物足りないと感じていたのも相まって、今のところやることも無く、熟考してしまった。
それを見た桜門は、首を傾げつつ、
「まだ、勉強法、決まって無いの?」
と、更に追求すると、二人は少し気まずそうにしながらコクっと首を縦に振った。
「まぁ、今出回って居る本じゃ物足りないよね。だからさぁ、鉄道の枠を一回出てみて、それと精通している化学を勉強して、新たな仕組みだったり、構造を考えてみてもいいんじゃ無い?」
と、言われた二人は確かにそうだ。なんて事を表情で表す様にして、
「じゃあ、今日は遅いから、桜門を送っていくついでに本屋にでも寄って、化学の本を買って、明日の正式な部活始動の最初の活動として、3人でその本を読もうかな?」
と、瑠璃に言われ、勇人もそうだねと了承した。
そして、
「それじゃあ、行こうか」
と言ってその部屋を出て、瑠璃の家を後にした。
そして、桜門にどこまで送れば良いかを聞くと、春日駅と言われたので、春日駅へと向かった。
そして、桜門を見送ると、その駅前にある本屋さんへと入り、化学の本を探し始めた。
「ねぇ。まずは基礎からだよね?物資の仕組みとか、電気の仕組みとかかな?必要なのは。だから、それらが書いてありつつ、いろんな事が載って居る本を探そうか」
と、勇人に説明し、その本がありそうなコーナーを探し歩いた。
そして、これは?あれは?なんて問答を繰り返し、あーでも無いこーでも無いと、血眼になって理解しやすい分かりやすい本を探す事20分、何度も同じコーナーを見て回っていると、二人はある本に行き着いた。
「何これ?分かりやすい化学の基礎、応用、考え方?少し見てみようか。おー!分かりやすい。僕達が必要だと思ってる知識も分かりやすく細部まで、まだ知らない未知まで載ってるし、更に必要そうな知識もここに入ってる。ねぇ。瑠璃。これよく無い?」
と、声を掛けると瑠璃は、
「確かにこれは良さそう」
と、ページを捲り、判断をした。
そして二人はその本を買う事に決め、この本は、3巻まで出版されていた為、それも一緒に買う事にした。
そして、レジまで持って行くと、会計を済ませてお店を出て、帰路に着いた。
「良い本見つかって良かったね」
なんて、話しているうちに、家に到着し、それぞれの家へと入って行った。
それから次の日、二人は学校に着くと、自分の教室へと入り、机に荷物を置いて、2年の教室へと桜門を探しに足を進めた。
「どこにいるんだろうね?まだ来てないのかな?」
なんて、話しつつ10分くらい経過した時に、2年教室前の廊下に姿を表した。
「おはよう。桜門早速で悪いけど、部活の申請がしたいから、職員室まで着いて来てくれない?」
と、お願いすると、すんなりと了承してくれ、3人で職員室まで向かった。
こんこん。と、扉をノックして、ガラガラッと開けて、中へと入り、早見先生は居ますか?と、少し声を張って言うと、
「何ですか?」
と首を傾げて来てくれた。
そして、「部活の申請書類を提出しに来たんですけど」
と言って渡すと、分かりました。と言って、ハンコをパタン。と押して、書類を受理し、この学校の3階の一角にある部室エリアまで案内され、その中の、1番角の教室まで案内された。
それから、
「それじゃあ、ここが鉄道研究部の部室だから」
と言って去って行ったので、その教室の中に入ると、ホワイトボードや、本が置けそうな棚、20畳ほど有りそうな四角い教室で、それを見た3人は、めっちゃ広いじゃん。これからいろんな物を増やせたら良いな。この教室に。
何て考えていた。
それから瑠璃は、この様にして、会話を切り出した。
「ねぇ。今日の活動内容なんだけど、昨日買った本をバッグに入れて持って来たから3人で読まない?」
と言うと、バッグをガサゴソと漁り、4冊の本を取り出した。
そして3人は、「そうだね」と、口を揃えて言うと、瑠璃は、本を棚に並べ、読みたいやつをとって行ってね。と二人に伝え、3人は本を一冊ずつ取って行き、本を読み始めた。
そして、一通り本に目を通すと、勇人は、
「ねぇ、見てるだけじゃ無くてさ、ちょっとここに書かれている事を実際にやって、ここに書かれている色んな事を活用して、それを応用して何かできないかを考えて、試して見るって言うのやってみない?」
と、声をあげ、二人に問うた。それに対して二人は、そうだね。面白そう。
なんて言って、この部活の当面の方針は、化学実験に決まった。
「それじゃあさ、まず、この磁石の発電方法をやってみない?」
と、勇人が言うと、「うん。そうだね。電気の基礎も重要だもんね。なら、磁石と導線家にあるから今から家に来てやる?」
と、瑠璃が言うと、賛成。と口を揃えて2人は言った。
それから3人は、瑠璃の家へと向かうと、鉄道部屋の隣の部屋へと案内され、中に入ると鉄道部屋とは打って変わって綺麗な部屋に、黒くて冷たく、そして、水をも吸い込むテーブルが置いてあり、その前には、石製の椅子が置いてあった。
「それじゃあ、そこの椅子に腰を掛けてね」
と、瑠璃に言われたので席に座ると、瑠璃は、教室を出る前に、これが書かれていた本を持って来ていたので、そのページを開いて、テーブルの上に乗せ、部屋の壁一面に並べてある棚を漁り出し、導線3つと磁石を6つ取り出して、机の上にポン。と、優しく置いた。そして、このテーブルの下には引き出しが付いているらしく、その引き出しの中から豆電球を取り出し、テーブルの上に置いた。そして、
「よし。準備できたから始めようか。」
と言って、磁石を二つ手に取り、それを導線の先端部分に二つの磁石を近づけたり、離したりを繰り返していたので、それを2人は真似ると、近付くと光り、遠ざけると消えると言う実験結果を見た、3人は、この現象の説明に目をやった。
どうやらこの現象は、磁石がくっつく時に、磁界が発生して、それが発生すると、持ち主が力を入れて反発しても、くっつく様になり、それと同時に動力が掛かるために、エネルギーが放出され、電気となる。
と、説明がなされていた。
この説明を聞いた2人は、そもそもエネルギーとは何なのか?何が原理で放出されるのか?と、疑問を抱いていたため、それについての説明書きが無いか、ページを捲り探すと、初めのページに書かれていた。
エネルギーとは、物を動かす為に必要な、言わば、食べ物見たいな物である。
そして、エネルギーは、物質の中に存在する大まかに三種類に区分される中の、エネルギーになりうる存在である電気の素となるものに、衝撃を与える事で、物質の囲いから解放され、外界へと誘われる。そして、それはエネルギーと化す。それから道筋を電気の通す素材で作り、ゴール地点に新たなる物質を置く事で、その道筋を辿り、新たなる物質へと入り込む性質を持っているため、導線と、この性質を利用して、電気を作っている。
と、書かれていた。
そして、なるほどね。なんて理解した様な面持ちで思っていた。
それから、その本の下の方には、エネルギーの放出方法として、気になる文字が目に入った。その文字と言うのは、風。
風の力でプロペラを回す事で、エネルギーが放出される。これを風力発電と言うらしい。この文字を見た勇人は、「ねぇ、これ見て!」
と言って、その文字に指を指し、「これを使えば、無限に発電できるんじゃない?模型か何かを買って風力で発電できる様に導線とか、プロペラを取り付けて、実験してみない?」
と、勇人は、子供心を燻る様な、様々な情報で溢れて、興奮状態を隠し切れずに、息を荒げて述べていた。
そして2人は、じゃあ、やって見ようか。何て反応を示して、これの材料をどこで調達するか?そして、いつやるのかを決めて行った。
「それじゃあ、確か明日は土曜日で、授業は午前のみのはずだから、発電用のプロペラと、模型を用意しようか。じゃあ明日の待ち合わせは、春日駅に、2時集合でどう?」
と、瑠璃に言われ、特にここで意見も無いので、うん。と首を縦に振った。
そして翌日の午後2時、勇人と瑠璃は、家が隣同士の為、2人で春日駅へと向うと、すでに桜門の姿を確認することが出来た。
小走りで桜門の元まで向かい、声を掛けると、
「来たか。それじゃあ、行こうか」
と、3人の材料調達の旅が始まった。
まず3人は、駅前の探索を始めた。すると、玩具屋さんがあったので、中に入ると、入り口から見て正面に会計用のカウンターがあり、その道を除いて横一列に均一にショーケースが置かれていたので、それを見て回るも、見つかるはずも無く。
3人は、見つからないか。と、落胆して、肩を落としていたが、まだ1件目とすぐに立ち上がり、春日駅のおもちゃ屋を数軒巡った。
それでも見つからず、まぁ、しょうがないか。
なんて考えていると、瑠璃がこんな事を言い始めた。
「近くの、一関線の一関駅に行って見ない?もしかしたらあるかも」
と、言い始めたのを聞いた勇人は、無駄足になりそう。
何て気持ちを心の内に捩じ込みつつ「良いよ。」
と、答えた。
それから歩く事20分。
一関駅に到着した3人は、ある路上販売を見て、驚きを隠せず、あらわになっていた。
「風力発電用のプロペラは、要りませんか?」
と、共鳴しているかの様な、今、喉から手が出るほど欲しい商品が売っていたので3人は、一目散にそこへと駆け込み、三つ注文した。
「それじゃあ、三千円ね」
と、言われ、注意として、導線はついていないと言う事を言われた。それを見て了承して、三千円を渡し、商品を受け取った。
それから、少し一関駅前を歩いていると、模型。と書かれたお店を見つけたので、ここならありそう。と、思いながら、店内に入った。
すると、カウンターが隅にポツンと置いてあって、カウンターの内部がショーケースになっており、中に鉄道模型が入っていた。
「おー。大体10種類くらいはあるな。薄い黄色、青と白のグラデーション、緑の蛍光色、桜模様、濃いめの赤、木製、銀、水色、黒、普通の緑の全部ノーマル車両か。でも、それが良いんだよな。じゃあ、勇人、この中のどれが良い?」
と、勇人に振ると、
「じゃあ、この青と白のグラデーションが綺麗な電車かな?」
と、言うと、瑠璃は、じゃあ、これを下さい。と言って、その電車を指差し、購入した。
それから、お店の外に出ると、時刻は4時を回っていた。
勇人は、無いと思い落胆していた心が、見つけた事により、高揚感と、至福感が溢れると同時に、疲れがどっと押し寄せられながら、実験の日時を決める話に参加した。
「じゃあ、明日僕の家でこの実験する?」
と、瑠璃が聞くと、2人はうん。と良い返事をしたので、「じゃあ明日は休みだから、10時に俺の家の前に集合」
と言う事で、待ち合わせ場所が決まった。そして、荷物は瑠璃が持って帰る事となり、3人は帰路に着いた。
そして、次の日、3人は、瑠璃の家に集まって、実験を始めていた。
3人はまず、昨日買った模型を切れ目から半分に分解して、タイヤも含め部品を全て取り外した。
それから、タイヤの真ん中に穴を開けて、その穴に入れる回転部分を作り始めた。
まず、モーターの入っていた容器が瑠璃の部屋にあったので、それを使う事にして、その容器に導線を通す用の穴を開けて、内部に鉄針に穴を開け、その中の底に、円柱状で、真ん中に穴が開いている磁石を貼り付け、その磁石の穴の中に、その性質と真反対の球状磁石を入れて、その容器に導線を通して、鉄針と導線をつなぎ合わせた。
そして、鉄心の穴から球が飛び出ない様に、ひと回り小さい鉄針に、電気が通らない様に加工して、真ん中に導線が通るくらいの穴を開けた、そして、その鉄心の穴に導線を入れ込んで底まで鉄針を到達させると、球の逃げ道を無くす事に成功した。
それからもう反対側の鉄針に紐を取り付けると、それをタイヤのホイール部分に開けた穴に通して結び、抜けない様にした。
そして、そのタイヤを模型に取り付けた。
それから、球につけた導線をプロペラの下の部分に導線を通す穴があったので、そこに挿して、完成した。
「それじゃあ早速動かして見ようか」
なんて瑠璃が言うと、ふー!と、息を吹きかけ、プロペラを回し始めた。
すると、少しずつ、タイヤは動き始めたが、相当な威力が必要らしく、速くは回らなそうで、瑠璃も、辛そうな様子を見せていた。
それから、これじゃあ使い物にならないと考え、何か良い案は無いかと考えていると、勇人が、
「ねぇ、タイヤにも導線を付けてさ、タイヤの回転で電気を作るのはどう?」
と、提案され、それを採用する事にした。
まず、タイヤのホイールの穴に導線を通して、その導線を、容器についている導線に貼り付けて分岐させ、容器側に電気が流れる様に作り、完成した。
それじゃあ、やって見ようか。と、勇人は言って、電車を転がしてみると、少しずつ、少しずつ、速度が上がっていき、実験は成功した。
「おー!凄い。初めて自分で作ったけど、面白いなこれ今度は別の方法でも試して見よう?」
と、勇人は、模型ではあるが、自分の手で動かす仕組みを作る事に成功した事による、喜びを表していた。
そして、瑠璃は、「それじゃあ、次はなんの実験をしようか?」
なんて、昨日テーブルに置いておいた化学の本を広げてページを見せて言うと、
ページをめくり、元素のページを指差し、
「水素とかの集めやすい物に、簡単に集められる別の物を混ぜて、何度もくっついて離れてを繰り返せば、電気量も肥大化しそう。」
なんて言って、元素のページを読み込んでいると、勇人は、
「もしかして、ヘリウムの超流動?ってやつを使えば水素の元まで少しずつの量を移動させて、ヘリウムから電気を離して水素とくっつける。それから導線を貼り付けて、そこに更なる物質、磁石とかを設置すれば、強力な電気回路ができそうじゃ無い?」
なんて言うと、確かにそれは面白そう。なんて共感を得て、この実験をやることが決まった。
それから、材料をどうするかを話し合うと、瑠璃は、
「ヘリウムは確か、スーパーとかでも売ってるはずだからそれを使おう。水素は水に含まれていたはずだから、水を入れれば良いね」
なんて言って、スーパーまでその足で行って、帰って来た。
「ヘリウム買って来たから、実験を始めようか」
なんて言って、瑠璃は、棚まで移動し、棚から透明な蓋付き容器を三つと、容器につける管を二つ用意すると、テーブルまで移動し、容器に穴を開けて、管を通して、テープで固定した。それから、一つの管には導線を入れ、容器の真ん中辺りまで伸ばして、その先に磁石を貼り付けた。それから磁石の手前の導線を電球と繋ぎ合わせ、容器の蓋を閉めると、次は真ん中の容器を開け、水を入れ、蓋を閉めた。
それから、最後の容器の蓋を開けて、ヘリウムを、プシュー!。と入れ込み、急いで蓋を閉めると、中が雲の様になり、管を通って水エリアまで移動する様子をはっきりと見る事が出来たが、特に反発する様子も無く、変化無く終わってしまった。
「何でだろう?」
なんて思い、ページを捲ると、こんな事が書いてあった。
ヘリウムは、安定的な力を保持している為、電気の素が外界へと誘われる事はない。
と。それを見た3人は、そんなんだ。でも、それってどこで判断するんだろう?
なんて思い、そのページの下の方に目をやると、電気の素は、その場所が全て埋まると効力を失う。と、書かれていた。
それを見た3人は、そうなんだ。なんて思いつつ、また、元素一覧のページへと目をやった。
それから少し考え、勇人がこんな事を言い始めた。「酸素を使うのはどうかな?」と。これを聞いた3人は、確かに、酸素なら集めやすいし、良いかもしれない。なんて言って、じゃあ、どうやって集めるのか?なんて言う話になった。そして、「確か、この本によると、酸素はそこらへんに飛んでるって書いてあったから、もしかしたら袋で空気を集めればいけるかも」
なんて瑠璃が言って、袋と、酸素を入れる用の容器を取ってきた。それを拡げて上から下へと振りかぶり、蓋をすると、パンパンになるまで空気が溜まったので、それを、容器へと入れ、そこに水を入れてみるも、特に反応は示さず、何で?さっき書いてあった条件は守れているはずなのに。
なんて思い。それについて何か書かれていないか?なんて、ページを捲ると、水と水素。なんて言う項目があり、そこにそれについての事が書いてあった。
水は、水素、酸素が合体する事で出来る。これを行う事により、電気を発生させる事が出来る能力を持つ。
なんて書かれていた。
「じゃあ、別物なんだ。いくら水の中に水素が混ざっていても、それを使って水素の実験は出来ないのか」
なんて、勇人が言うと、じゃあ、どこで水素を手に入れるかの話へと切り替わった。
すると、瑠璃が、「ちょっと、水素がもらえる場所に、心当たりがあるんだよねちょっと行ってくるわ」
なんて言って、家を飛び出すと、ものの5分位で戻ってきた。
瑠璃は、重いボンベを背負った状態で、苦しそうで、今でも潰れそうな表情をしつつ、それを置いて、実験を始めた。
瑠璃は、もう一つ容器を持ってきて、そこの中に、導線を入れ、外側へと導線を伸ばし、電気と繋げた。それから、そこに先程の袋を使い、空気を集めた。そして、その空気を容器の中へと入れ、酸素も投入すると、最初は何ら変化は起きなかったが、少しずつ、少しずつではあるが、水へと変換していった。それから、少しではあるが、電球を光らせる事にも成功した。何回か失敗したこともあってか、疲れた様な。それでいて楽しそうな心持ちで、「やったー。成功した」なんて、笑みを浮かべながら、満足そうにしている勇人の様子を見た2人は、またなんか面白い実験をして見ようね。
なんて言ったので、元気にうん!。と答えた。
それから、暇さえあれば実験をして、失敗したり、成功したりを繰り返し、模型の改造なんかにも精を出していた3人は、知識を高め合う事で新たなるステージへと飛び立つ準備が整ったと、言える範囲まで進んだと見て差し支えない知識を掴む事が出来た。
《第3章 走り続けた少年》
そんな事があってから月日が経ち、10年後の三月。
少年たちは、15歳になって、当初の夢であった、鉄道学校への進学を果たす事が出来た3人は、喜びが立ち込め、浮かれた気分で瑠璃の家で行われた、ホームパーティに参加した。
「あれからもう10年か。いろんな事があったね。いろんな実験をして。詳しくなって。懐かしく思うよ」
なんて勇人が言うと、2人はそうだね。と、うんうんと首を縦に振っていた。
それから、思い出話に花を咲かせつつ、鉄道学校への進学を祝い合った。
それから月日が経ち、4月、勇人達は夢を叶える第一歩である鉄道学校に無事、入学する事が出来たのだった。
そして、予定表には、1年目は、鉄道製作に関する座学。
2年目は、自由登校で鉄道製作。
3年目は、運転に関する座学と、2年目に製作した鉄道での実習という予定だった。
今日から学ぶ教室へ、一歩足を踏み入れると、以前までの学校とは違い、話す人は、専門的な話で、基本は黙々と無口で本を読んでいる人が多い事を僕らは感じ取り、少し馴染めるか心配ではあったが、皆んなどこか嬉しそうな表情を浮かべていて、授業が始まると同時に、この不安は杞憂と化すのだった。
授業の始まりのチャイムが鳴ると、ガラガラガラ。と、扉の開く音が聞こえ、先生が入って来て、授業が始まった。
「さて、1時間目の授業を始める前に、自己紹介から。私は、橘桜だ。よろしくな。」
と、ニコッと笑うと、自己紹介を始め、それが終わるとすっ。と表情を変えて一気に雰囲気が変わった。
「それじゃあ1時間目は電車の仕組みと電気の仕組みを組み合わせた授業だ。基本この二つが大事になって来るから覚えて帰れよ」
と、先生が言うと、生徒も今までの砕けた様なリラックスした雰囲気と打って変わり、教室の風向きが一気に変わった。
それから、授業内容は、ほぼ実験した内容ではあったが、新しい知識を得られはしないか?と、真剣にノートを取って話を聞いていた。
そこから1年ほど経ち、鉄道製作が認められ、勇人達3人は、協力して、三つの電車をつくる事となった。
まず、学校側が各々グループに用意をしてくれる鉄道製作用教室の中へと入ると、二十畳ほどはあり、入り口から見て手前には瑠璃の家にあった様なテーブルが3台、各テーブルに椅子が3台ずつ置いてあり、壁一面に置かれている棚の中には工具などが豊富に備えられていた。
それから3人はテーブルまで行き、椅子に腰掛けると、紙を取り出して、自分の電車の構造をどうするかを書き始めた。
それから3時間ほど経過し、3人とも考えがまとまって、
見せ合いが始まった。
そして、勇人は、こんな考えを紙に記していた。
まず、立方晶窒化ホウ素で、外装を作り、内装の発電部分は、以前実験をした方法で、酸素と水素を利用する。容器の下にケースを付け、そこにヘリウムを入れる事で、ヘリウムの冷却性能も利用する。それからタイヤにも導線をつける事で、回転エネルギーを利用する。
そして、水素や酸素は、ホウ素とガラスの素を利用し容器を作りその中に保存する。と書かれていた。
そして、タイヤを動かすための電気の活用法は、これも以前実験した方法で、電気と磁石を反発させ、鉄針を回す事で鉄針に貼り付けた楔を動かし、楔とタイヤを連携させて、タイヤを動かす。そして、速度はレバーを動かす事で、楔の動きを止める機能を作るため、以前瑠璃から見せてもらった初代の電車の様に、楔の上にある壁に溝を作り、そこから速度を調整するレバーまで繋げる事で、その溝から糸を通し、レバーと連結させ、レバーを上げると糸がピンと張り、速度が出る。下げると糸が緩み、そして、楔側の糸の先に棒を繋げる事でその重みで楔の動きを抑制する仕組みを作る。
と。
これを見た2人は、どの様にして材料を調達するかの話し合いを始め、まず、窒素とホウ素は、取り敢えずお店を巡って探す事とし、他の材料は、揃えることも容易だろうと考え、まずは、学校外へ移動して、材料を集めることにした。
そして、他の材料は集まったが、案の定窒素とホウ素はどこにも無く、途方に暮れていると、瑠璃が、ある事を言い始めた。
「今思い出したけど、家にホウ素、窒素。そして、ガラスの素、あった気がする。2人は先に学校の、鉄道製作室に戻って待ってて。と言って、小走りで家へと戻って行った。
そして2人は鉄道製作室へと踵を返すと、何をすることもなく、瑠璃の帰りを待つ事1時間。タッタッタッ。と言う軽快な音が聞こえ、息を切らす音が聞こえたと同時に、あったよ。と言って、ホウ素、窒素、ガラスの素をテーブルの上に置くと、椅子に座ってへたれこんでしまった。
何はともあれこれで製作工程に入れると思った勇人は、胸を撫で下ろし、安堵すると共に。ありがとう。と、お礼の言葉を口にした。
そして、無事に製作工程へと入る事が出来た。
それから、規模は大きくなったが、内部の構造は、ホウ素とガラスの素を混ぜ、強化ガラスを作るところ以外は、以前の実験と、なんら変わらない事を行った為に、余り止まらずスムーズに作業を進める事は出来たが、外装は、少し手のかかる作業で、骨を折らせていた。
まず、ホウ素と窒素を混ぜ、外装の型をどう造るかを考えた。
「なんか良いもの無いかな?」
なんて話しつつ、部屋の中を探すも何も見つからず、第一の壁に完全に阻まれ、前進ができない様になってしまった。
こんな中、一人、何とかできないか?と、熟考している勇人は、木材屋に目を付けた。
「もしかしたらさ、学校じゃ無くて、木材屋に行けば、木で型を造れるかもしれないよ。そこそこ大きいのを買えば」
なんて事を聞いて、3人は、じゃあ、行って見ようか。
なんて外へと出て、木材屋へと赴いた。
それから、少し探し歩いていると、外エリアを発見し、出てみると、木材屋の半分くらいの大きさの木材が、一万程で売られていた。
少し高めだな。大体四つ必要だから、4万は必要かなんて思いつつ、肩を落とすと、瑠璃がぽん。と肩を叩いてきて、「少し考えてから買ったら?」
なんて言われ、この作戦は諦めようとしていた。
それから、やれる事もないし。なんて事で、今日はお帰りと言う事となり、あまりうまく行っていないと思った勇人は、とぼとぼと、帰路へと着いた。
翌日、完成出来るのかな?なんて、不安な気持ちを心の中へと封印すると、一歩前へと進み、制作室へと入った。すると、昨日見ていた木材が、4本と言う、必要数分、テーブルの上へと置いてあった。
そんな事もあって、圧迫感や、心のモヤは、すーっと晴れ、早速、この木材を使って、必要数分の板を作るために、ホウ素と窒素を、それから、ガラスの素にホウ素を入れ、強化ガラスへしてから、電車の外装と、融合させた。
それから、その型に厚みを持たせ、一部分に長方形の穴を開けた。それから穴を開けた部分にドアを取り付け、稼働できる様に溝をつけ、そのサイズに合う様にドアを作った。
それから、勇人達にとって、骨を折らせた2つ目の作業であり、時間がかかってしまう部分であった、部品を格納しておく仕切りを作り、仕切りに導線を通す作業を始めた。
まず、先ほどの作業で使用し余ったホウ素と窒素の結合体を、どの様にして仕切りの型に硬めようかを熟考するも、あまり思い付かず、外装を作る時に、仕切りが出来る様にやれば良かった。
何て気持ちを抑え込みつつ、ある結論に至った。小さい箱状の入れ物をつかえば良いと。
それから製作室の中を入念に調べた。
そして、やっぱりこの部屋には置いていないのか。
なんて、少し残念そうではあるが、当然だろうな、何て複雑な表情を見せつつ、先ほどの場所へと戻り、席へと着いて、少しの間、どうしようか?と、見つめ合い、それが終わると勇人は、テーブルにも引き出しが付いている事があると言うのを思い出した。
そして、少しテーブルの横部分を指の腹でサー。と撫でると、少し違和感を感じたため、そこを覗き込んで見ると、少し隙間があることに気づいた。
そして、その隙間に指を掛け、引っ張って見ると、
型取りに使ってね。
なんて書かれた紙に沢山の理想的な入れ物が入れてあった。それを見た勇人達は、安堵と共に、やっとの事見つけられたと言う喜びも束の間、少し止まってしまっていた作業を再開した。
ありがたく使わせていただきます。
何て、感謝の気持ちを思いつつ、幾許かの型を作り、それを先ほどの電車の内部の表面を溶かしておいて、その部分と、溶かした部分を繋ぎ合わせて少し待つ事で結合させ、それを繰り返し、導線を通す穴を開けた。
そして、それが終わり、「はぁ。疲れた。これを作るまで、色んな事があったな。材料が見つけられない時は焦ったよ。でも、後は部品を入れて、客が乗り込む場所を作るだけだ。後少し頑張ろう」
何て、勇人達は、これらの大変な作業を振り返り、最後の作業へと移った。
ネジで下部分以外を留めて、開けておいた下部分の、仕切りをつけて置いた部分に部品を入れ、下部分もねじを止めた。
この作業で大体1週間ほど掛かってしまった。
それから客が乗れる様に板を部品上部に取り付ける事で、大体1ヶ月ほど経過して製作が完了した。
「やっと製作終わった」
「そうだね」
何て溢しながら、思いっきり伸びをして、感慨に浸っていた。
それから、2人分の電車は大体3ヶ月程で制作も終わり、そんなこんなで勇人たちは、ゆっくりと自宅で休息していた。
それから月日が経ち三月、少年たちは、3年生となり、運転の授業が始まった。
そんな授業が始まってから、月日が経ち、1年後、勇人たちは無事、卒業する事が出来、学校直属の鉄道会社、一鳴線に就職する事が出来た。
「これから、俺の造った鉄道に乗客を乗せて走る事が出来るんだ。それも俺の手で運転して」
何て、これから起こりうる事へのワクワクと、夢が叶った事への幸福感を胸に、小躍りしながら会社へ向かった。
そして、会社に着くと勇人は、係員に許可を取り、倉庫の中へと入って行き、事前に運んで頂いていた自分の鉄道を、探す。
そして、見つけると一目散に駆け寄り、
「君の事はきっと、ずっと大切にするからよろしくね。」
何て声を掛けながら、鼻を撫でると勇人は、入社式の行われる会場へと足を運んだ。
そして、会場に着くと勇人は、空いている席に座り、開会の時を待っていた。
それから10分程経つと、入社式が始まった。
「これから、入社式を始めます。まずは、所長のお話です」
「はい」
それから所長は席を立ち、ダンダン!と音を立てながら、階段に登り、壇上に着くと正面を向いて、お辞儀をし、話を始めた。
「皆さんには、入社おめでとう。と言う気持ちと、入社してくれた事に関する感謝の気持ち。そして、皆さんへの期待を胸に、今日の日を、心待ちにしていました。これから、辛い事もあるかも知れませんが、一緒に頑張って行きましょう」
なんて言ってまたお辞儀をし、壇上から降りて行った。
それから、駅構内や、鉄道内で注意する事や、客への態度などの講習が会場内で行われ、その後、閉会し、その場を離れた。
そして、閉会式が終わると今日は帰宅しても良いという事になっていたので勇人は、また係員への許可を取り、倉庫内へと入って行き、自分の鉄道へと足を運び、話し掛ける。
「今日は、これから帰るから、走らせられなくてごめんね。明日から業務が始まるからよろしくね。楽しみに待ってるよ」
何て言葉を残して帰路に着いた。
そして、次の日の朝8時頃、勇人は、今日から業務が開始の為、上司との待ち合わせ場所である倉庫の中に居た。すると、
「やぁ。少し待たせてしまったかな?私は、今日から君の指導係を任された、鳥場だ。これからよろしくな」
と、少し遅れてやって来て、挨拶を交わす。
「で、取り敢えず、見て欲しいものがあるのだが」
と言って、紙を渡して来た。
「それは、今日から来月1日までのシフト表だ。この最初の君の運行時間の2時間前くらいに間に合う様に出社し、準備を整えるように。そして、ここからこの時間厳守で運転してくれ。それ以外は、製作所があるから、そこで鉄道の研究や、製作をしても構わないから」
と、言われたので勇人は、
「はい」
と、良い返事をして、シフト表を確認した。
「取り敢えず、次のシフトは10時か。初めての乗客を乗せての運転は緊張するな。」
なんて気持ちを吐露しつつ、自分の電車の元まで向かい、鼻を撫でた。
それから、自分の電車に乗り込むよう指示が上司からあったので乗り込み、時間まで待機した。
そのなこんなで3時間ほど経った少年は、シフト交代となり、休息時間となった。電車に長いこと乗っていた勇人は、ふー!と、腰を伸ばし、
「それじゃあ飯だ!」
と言って、倉庫の中は飲食は禁止と言われていたので、倉庫を出るとすぐにあるエントランスへと向かい、その入り口にある、辺りが観葉植物で彩られているソファーに腰を掛けて、弁当を開け、食べ始めた。
それから10分後、弁当を食べ終わると、
「それで、この後は、何時からだったかな?」
なんて言いながら、時間とシフトを照らし合わせる。
「次のシフトは3時からか、少し余裕があるな。少し自分の電車の掃除と座席の確認、整備をして置こうかな?」
と言って、倉庫へと向かい、入り口にいる係員に許可を取ってから中へと入り、作業を始めた。
「まずは座席の確認をーっと……」
と言ってごみなどが落ちていないかの確認を始めた。
「飯食う前に、落とし物とか、忘れ物がないか、ざっとしか車両を見なかったからな」
なんて言いながら、床や、座席に溜まっていた埃や、紙などのゴミを、上司に許可を取り、箒や、塵取り、掃除機などを借りて、掃除を始めた。
「こうやって自由に自分の電車の整備とかを出来て、道具も借りられるのは良いよなぁー。それより、半日でここまで汚れが溜まるものなのか」
なんて言いながら、最後列まで続けて行った。
そして、1時間ほど掛けて終わらせると、
「ふぅー。結構綺麗になったな。少し疲れたから、少し休むか。えと、時間は、2時10分か」
なんて言って、電車を降り、掃除用具を返すと、電車に乗り込み、運転席へと腰を掛けた。
「綺麗になって良かったな。どうだ。気持ちよかったか?」
なんて、話し掛けると、天井に手を当てて撫でた。それから、10分程の休息を取っていると、運行の合図があったので、
「また、一緒にがんばろうな」
と、電車に言葉を残し、動きを進めた。
それから、約5時間程経過して、
「ふぅー。休憩時間だ」
なんて言いながら、電車を降りて、腰を伸ばすと、次のシフトを確認した。
「お。今日のシフトはこれでおしまいみたいだな」
なんて言いながら、掃除用具を借りて、落とし物チェックや、掃除を始めた。
そして、それが終わると電車から降りて、
「お疲れ様。がんばったね明日もよろしくね」
何て電車に声を掛けて、鼻を撫でてから、片付けをした。
それから。
「それじゃあ、今日のシフトはもう無いので、帰らせて頂きます」
何て上司に声を掛けてから、帰路に着いた。
それからと言うもの、こんなような日々を過ごしつつ、更なる電車も休憩時間に造っていたのだった。
椅子は、クッション性能が高い、高反発羽毛を使おう、そして、タイヤには速度が出やすい様に、ゴム素材だが、端だけ一段高くして、微細な凹凸をつけよう。そして、後の仕組みはあの電車のままで良いな。
なんて、計画を立て、作り始めた。
それからシフトの合間を縫っての事だったからか、時間が掛かってしまい、5年程かけて、それは完成した。
「おぉ!良い仕上がりになったな。でも、流石にここ5年、休憩時間もこれに費やすのは疲れたな。これから少しの間は、休憩時間は、ちゃんと休むか」
なんて言って、疲れた様子で係員に許可を得て、倉庫の中の、自分の電車の隣へと運び込んだ。
そして、2台の電車を運転する事が出来る様になった。
「これから、一緒にがんばろうな」
何て新しい電車に声を掛けると、鼻を撫でて、その電車へと乗り込んだ。
そして、合図があり、走り出した。
「おぉー!やっぱり、改良しただけあって、速度、めっちゃ上がってる。それに、タイヤに、タイヤも改良したから少しカーブもしやすくなってる。この会社の基準値を守らなきゃいけないけど、目的地まで少し速く着けるかも!」
なんて言って、楽しそうに、交代まで、楽しそうに走り続けた。
それから、こんな感じで、前半のシフトと後半のシフトで分けて、2つの電車に乗っていた。
それから大体7年ほど経過した時の事だった。
いつもの様に、午前中に初めて製作した電車に乗って居ると、
「何か違和感があるな。速度が出しづらいし、ブレーキも効きづらくなってる。何だろう。毎回シフト終わりに整備と点検をしてたんだけどな。これだと危ないな」
と、一考し、今のままだと運行は難しいと判断し、
「あの、すみません。電車の速度が出づらくて、ブレーキも効きづらいので、一度倉庫に戻ります」
と、司令塔に一報した。
それから、倉庫へと戻ると、少年は、午後に乗る手筈だった電車へと乗り換え、
「ただいま倉庫に戻り、新しい電車へと乗り換えたので、運行再開します」
と、一報を入れ、出発した。
「少しでも遅れを短くする為に、速度を上げても良いでしょうか?」
「はい。安全に配慮した状態であれば許可します。今は周りには電車もいないでしょうし。乗客も乗せていないと思うので」
と、承諾を得たので、少しだけ速度を上げると、本来5分遅れの所を、2分遅れで目的地まで到達する事ができた。
そんな事があって、3時間程で午前のシフト、それから休憩を挟んで5時間程で、今日のシフトは終わった。
それから、倉庫へと戻り、車内の清掃、整備が終わった所で、電車の修理に取り掛かった。
そして、電車の内部に繋がる蓋を開けて中を除くと、
「なんだよこれ?一箇所、発電する部分が液漏れしてる。これは、交換かな?だが、交換するにしても、内部の真ん中にあって、そこに辿り着くのにシフトの合間にやってたら3ヶ月は掛かるぞ」
と、他に手はないかと、頭を悩ませたが、それ以外の方法は考えられず、
「しゃあない。取り敢えず、今から発電部分の交換を始めて、明日からのシフトは、新しい方の電車を運転しよう」
と決意し、修理に取り掛かった。
それから、3ヶ月ほど経過して、修理をすることは出来た。
「やったー!ようやっと修理、終わったぞー!」
なんて一人ではしゃいでいると、
「お?それ、治ったのか?だいぶ負荷が掛かる構造だろうと思ったから、治るか心配だったけど、良かったな」
と、後から来た上司から、声を掛けられたので、
「はい。僕の相棒が治ってくれて良かったです」
と、嬉しさ余り、声がうわずり気味に、話してしまった。
それから、勇人は、修理仕立ての電車に乗り込み、試運転が出来る場所まで移動して、試運転を開始した。
そして、異常がないことが分かると、安堵の声を、ふぅー。と、漏らし、倉庫へと戻り、
また、この電車に乗客を乗せて、運転出来ると、少しとろけた様な表情を見せつつ、合図を待った。
それから、今日のシフトが始まった。
だが、この電車は、日に日に壊れてしまう回数が増えて行ってしまった。
「何で、こんなに壊れる回数が増えるんだろう。まだ、寿命は来てないはずなのに」
と、頭を悩ませて考えると、上司の言っていた言葉を思い出す。
「そう言えば、負荷の掛かる構造をして居ると言ってたな。確かに、普通の電車よりは速度は出るけど、調節してるから、関係無いと思うんだけどな。でも、一応治しはしたし。もう異常も無いはずだけど、もう一回開けて、内部を確認してみるか」
何て言って、車両下部分に位置するネジを回して蓋を開け、内部の確認を始めた。
「とりあえず持ってきて置いた計画書と見比べて見るか」
と、言いながら、計画書と車両を交互に見比べて行くと、ある違和感を覚えた
「あれ?こんな所に出っ張りなんてあったっけ?」
と、発電部分の入って居るエリアを見渡すと、見覚えの無い、よく見ないと分からない程度の針の様な出っ張りが出来ていた。
「何だこれ?もしかして、発電部分が動いた時に、発電部分の上側の出っ張りが引っかかって、傷がついて、それが繰り返されて、深部まで行って、速度に異常が出たのか。最初は経年劣化かと思って居たが。違ったのか。じゃあ、原因のこの出っ張りを除去しよう」
と言って、ペンチを取り出して、作業に取り掛かった。
「あれ?中々取れないな。もしかして、ペンチじゃ無理か?なら」
と言って、上司の元へ行き、
「すみません。電動ノコギリとかってお借り出来ますか?」
と聞くと、
「何に使うの?」
と、聞き返されたので、
「電車の発電部分の上に、針の様な出っ張りが出来てしまって、発電部分を換えても換えても擦れて壊れてしまうので、その出っ張りを取り除く為に電動ノコギリを使いたいんです」
と言うと、
「分かった」
と言って、その時は貸してくれた。
それから、幾度も幾度も治すも、数日後には同じ様な状態になってしまって、埒が開かないので、何がこれの変形を促しているのかを、模索してみることにした。蓋を開け、中を覗くと、やはりまだ微細ではあるが、針の様な出っ張りは、もうすでに出来ていて、まだ、発電部分には掛かってはいないがもう時間の問題。みたいな感じだった。
だが、
「何これ」
と、発電部分を手に取ると、何か、ベチャっと、音が鳴りそうな、ベタベタ感を覚えた。そして、手には、少量ではあるが、オレンジ色の液体が、手に纏って居た。驚いた勇人は、パニックに陥り、
「何だこれ!油!やばい!」
と、声を荒げてしまい、逼迫した状況を演じる。
それから、その声に近くに居た人が気が付き、近づいて来た。
そして、
「何?どうしたの?」
と、勇人に尋ねる。
「謎の油が、この発電部分から出て来たんです。もう何が原因なんだかさっぱり…‥。」
と、声を掛けられ、少し冷静になった少年が、顔を上げると、そこには、上司の姿があった。
「あー。それは多分、ホウ素を使ったガラスを使って内部に水素だとか酸素を入れて発電していたって言ってたでしょう?水素は金属をダメにする効果があるからそれで溶けたのかも。だから、多分、もしかしたら、内部に謎の出っ張りが出来たのも、それが原因かな?もしそうだとしたら、多分内部も液まみれだろうし。走れない可能性もあるかもね」
と言われ、勇人は、
「もうこれを運転できないなんて嫌です。頑張って掃除してみます」
と言って、油を掃除する為に、雑巾や、お水を用意をして始めた。
「うわ。結構ベタついてるな。とりあえず、これ以外の部品を配線含めて取り外そう……」
と言って、部品を全て取り外し始めた。それから30分くらいして、
「よし、全ての部品を取り外して、もう危ない物は無いな」
と言って、用意して置いた水を、全体に行き渡る様、油を流し切れる様に、かけ始めた。
そして、内部を触ってみて、油がもうついて居ない事を確認すると、
「水気があると危険だからな」
と言って、雑巾を取り出し、内部の水気が無くなるまで、幾度となく拭き続けた。
それから水気が無くなると、
ある問題に直面する。そして、
「うーん。部品も油まみれなんだろうな。流石に機械の部分を水に濡らすわけにもいかないし。どうしよう」
と、一考して、ある事を思い付いた。アルコールで拭けば良いじゃんと。
そうして、材料を用意して、作業を始めた。
一連の作業を見て居た上司は、
こんな事をしても治るかは分からないのに頑張るね。気持ちは分かるけど。
と、思いながら、手を貸す事もなく、只々目を外す事もなく、じっと見つめて居た。
それから、材料が揃うと少年は、作業を開始する。
「おー。何かツルツルになってる気がする」
なんて言いながら、磨くこと、30分程、
「おー!やっと全部磨き終わった。じゃあ、最後に発電部分の交換を…‥。」
なんて、最後の部品を取り付け終わると、恐る恐る電車へと乗り込み、試運転を始め、運転は出来たが、根本的な難に対しての対処をしていないため、この電車での運転禁止命令が出されてしまった。
まぁ、仕方が無いよね。なんて思いながらも、今日のシフトはもう無いので家へと帰り、次の日会社へ行き、倉庫へ赴くと、あれ?と、昨日修理した電車が無くなっており探し始めた。だが、見つかるはずもなく、上司に聞くと、「あー。それなら昨日処分したよプレスで」
と言われ、一瞬思考停止してしまった後に、「なぜ?わざわざ何も言わずに処分する事もないでしょ?」
と、聞くと、「だって、運転も危なくてできないし、無駄に場所取るし」
と、言われてしまい、「なら、一言声かけて下さいよ!そうすれば、持ち帰るとか、他の選択肢があったかもしれないじゃ無いですか!」
と、冷静さを欠き、声を荒げると、上司は冷静に、「言っても聞かないだろうし、持ち帰るにしても、場所あるの?」
と言われ、何も言い返せずに、悶々と確かにこの処分はしょうがない。こんな作り方をした自分の自業自得だし。なんて思いと、でも、愛情をこんなに注いだ電車をあっさりと他人の手で、何の予告も無しに処分するなんて。なんて思いがすれ違い、感情が整理しきれず、負のオーラを纏いながら、シフトの時間が来て、新しい方の電車で運転を始めた。
それからシフトが終わり、帰る途中、歴史博物館と言うものが目に止まった。それを見た僕は、これだ!これを作ればもう電車を処分する事もない!なんて思い、急いで家に帰り、辞表を書くと共に、不動産屋へと赴き、立地の良さそうな広い土地のローンを組んで購入をして、木をベースに横に長めの3階建の建物を注文した。
それから、家へと帰り、建物が出来るのを待ちつつ電車を運転して、働いていた。
それから一年が経過して、完成したと言う報告があったので、内装、外装の確認を済ませ、その足で、シフトをこなす為に会社へ向かい、シフトの時を待っていると、瑠璃と桜門が話しかけて来た。
「ねぇ。なんか面白い事してるね。俺たちにも手伝わせてよ」
と、言われたので、人手が多い事に越したことは無いと考え、二つ返事でうん。と言うと、喜びつつ、今後の予定を聞いて来た。
「まずは、今日はシフトが早く上がるから、鉄道会社起業手続きを組み、電話を掛けて、一関線と、一松線にアポを取って、同盟交渉を結びに行く。それから、博物館での3会社合同展示を行い。電車の共有化を進める」
と説明を聞いた2人は、目を輝かせながら、分かった。と返事をした。
そして、シフトが終わるとすぐに会社から出て、3人で、起業申請センターへと向かった。そして、勇人は、受付表を受け取ると、直ぐにその番号が呼ばれたので、「はーい!」と言って担当の方へ向かう。すると、カウンターの前に席が置いてあり、お掛け下さい。と言われ、席に着くと、
「なんの御用でしょうか?」
と、言われたので、
「企業届けを提出しに来ました」
と言うと、「では、こちらに会社名、本人サイン、従業員サインをお願いします。」
と、言われたので、サインを始めた。
「会社名かー。うーん。」
なんて勇人は迷い、名前をゆるり桜に決めた。
それから3人のサインを書いていき、申請を通す事が出来た。
それから家へと帰り、まず、一関線へ電話を掛けた。プルルル。と言う音が鳴り終わると、ガチャ。と音が鳴り、「はい。一関線です」と、応対してくれたので、「あの、勇人と言う者ですけど、そちらの企業と、こちらの企業の同盟を結びたくて、お電話致しました。」
と、言った。すると、「そちらの企業名は何ですか?」
と書かれたので、「ゆるり桜です」と、答えると、「であれば、明日の17時に一関線の会社のカウンターに、ゆるり桜です。と申して下さい」
と言われ、了承してくれた。
それから、一松線にも電話を掛けると、同じく、17時に一関線の会社を指定された。
何故だろうと疑問に思いつつも、当日、シフトをこなし、16時頃にシフトが終わったので、3人で一関線の会社へと向かい、受付に、ゆるり桜です。と言うと、社長室へと案内された。
そして、頭を下げつつ「突然のお電話への対応、有難うございました」
と、お礼を言って、頭を上げると、そこにあった姿は、勇人のお父さんだった。
え?何で?と、驚きを隠し切れずに「あれ?お父さん?何でここに?」
と、口を開くと、「何故ってここの社長だからだよ。因みにお前から電話がかかってくる事も、ずっと、電車を作るために実験していた事も知っていた。」
と言われ、ポカンとしていると、話を続けた。
「実は、勇人達をこの業界へと足を踏み入れさせたのは、ある人物の夢を叶える為だったんだ。その人物は、鉄道業界の争いを食い止め、勇人が目標として居た、電車の共有化、博物館での展示などを目標として居た。それから、何とか頑張り、社長まで昇り詰め、2社の社長とも友好関係が築けたのだが、周りからの裏切り行為により、亀裂が入ってしまった。とりあえず、今は簡潔に説明したが、瑠璃のお爺さんの話は、また今度詳しく教えるよ。それじゃあ今度は、瑠璃のお父さんと、俺の話をするね。
そんな事があってから、俺がここに入社した時にこの話を聞かされ、そこで、そのお爺さんが出来なかった事を成し遂げようと努力して、社長にまで上り詰めた所で瑠璃の父が接触して来たんだ。あなたに鉄道の同盟に関する協力を仰ぎたいと。そこに興味を持ち、近くの喫茶店へと入り、話を聞くと、この人もまた、お爺さんが成し遂げようとした事を成し遂げ、また、鉄道会社同士交友関係を持ちたいと言う話だった。なので、何を協力して欲しいのかを聞くと、まず、一関線の社長と言う立場からの支援が欲しいとのことだった。それから息子。つまりはお前の事なんだが、瑠璃にこの一連の話をして君の息子に、電車造りや運転に興味を惹かせる様に動いて貰うから、君にも手伝って欲しいんだ。と言われて、分かった。と言って、連絡先を交換し、その場を去ったんだ。それから一松線の従業員で、子持ちで大体同い年の桜門の親にも協力を仰ぎ、お前が交渉しやすくなる様に準備を進めて行ったんだ。それから瑠璃には勇人に接触して貰い、桜門が仲間になった事、そして、いろいろな実験をしている事も分かった。そして、今欲しい物なども、揃えて打ち合わせを瑠璃と繰り返し、渡すなどをして、フォローした。本当に良くここまで頑張ってくれたよ。」
と、説明、そして労いの言葉を受けた勇人は、全てこの人達の手のひらで踊らされていた事を知ったが、別に怒りも湧くはずもなく、逆に感謝の念を抱いていた。そして、勇人のお父さんは、こう話を続けた。「それで、博物館の展示、電車の共有などの話なんだが、一関線、一松線共に、契約を結ぼう」
と、言われたので勇人は、「一松線のことも勝手に決めちゃって良いの?」
何て問うと、一松線へと電話を掛け始め、「今までの会話、聴いてたろ?大丈夫だよね?」
と言うと、ドアがギー!。と開き、「あぁ」
と言う声と共に、一松線の社長が出て来た。そして、2枚のそれについて書かれた契約書を差し出すと、快く書いてくれ、ローンの支払いなどは、社長同士が受け持ってくれる事となり、鉄道博物館の経営は、みんなで頑張ろうという事となった。
それから、一関線の会社を出ると、一鳴線へと向かい、3人で辞表を提出して、一鳴線との関係を切る事に成功した。
それからと言う物、数日掛けて、使わなくなった電車の運び出しが終わり、最後には、2人の社長から、「それじゃあ、これから反対派の勢力を潰す為に頑張ろうな」
と言われ、これからこのみんなで頑張って、この争いに終止符を打つんだ。なんて意気込みを胸に、鉄道博物館を開業し、反逆の狼煙を上げ、戦いの幕を開けたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます