第2話 そういえば人間だった

1503.*.*

 私は猫だ。


1701.*.*

 数々の友猫との出会いや別れを経て、私は今、魚屋の招き猫をしている。もちろん売り物はつまみ食いしないし、一仕事終えた後に店主がくれるブリという魚の切り身は格別だ。もっと食べたい。


1702.*.*

 今年はハマチという魚がたくさん捕れるらしい。魚は種類が多くてよくわからない、ブリと同じくらいおいしかった。そういえば、口の悪い警官に虐められた。痛かったなぁ、猫vs人間だと流石に勝てないか。人間がもう少し弱くなればやり返せるのに。それはそうと、アイツは病に蝕まれながら、死んでしまえばいいのに。


1707.*.*

 マイス病という人間を次々と衰弱死させている伝染病が猛威を振るい始めた。ある街の青年が突現発症し、治療法もないらしく既に人口の一割弱が帰らぬ人となった。魔女の仕業だとお客さんが言っていた気がする(後にネズミが原因だと判明する)。魔女は命を思いのままにできて、死んでも生まれ変わるから死ぬことはないらしい。すこしだけ羨ましいかも。


1711.*.*

 魔女狩りが始まった。処刑対象は14,15歳の女性と私たち、猫。猫は魔女の使いかもしれないのだと。いい迷惑だ、本当に。


1712.*.*

 私は四つの足を必死に動かして、路地を全速力で逃げまどっている。数時間前、魚屋にも異端審問官が訪れて、店主が葛藤の末に私を引き渡そうとした。そもそも猫が魔女なんてあり得ないのに。彼のことは、信じていたのに。私を裏切る彼は、不幸になってしまえ。


 猫の飼い主も魔女に洗脳されているとして、処刑されることが決まった。


1715.*.*

 目の前に刃が迫ってきた。あぁ、死ぬのか。私の街の猫はみんな人間に処刑された。人間は大嫌い、元凶となった魔女はもっと嫌い。魔女の生まれ変わりなんてあり得ないし、魔女なんて消えてしまえ。最後に頭をよぎったのは、まだ幼かったあの頃に、飼っていたあの黒猫。私は猫のはず…、あの頃って…。

 

 そういえば人間だった。


※読んでいただきありがとうございます。あなたに幸せな今日が訪れますように。

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【3分で読み切る少女の日記】魔女狩り H4ise/ハイセ @H4ise

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