Chapter 8
ペトラと話してから数日は、ギルドの資料室で情報収集に努めた。おおよそギルドにある資料はすべて見たので、これからは他の場所での情報収集が必要になりそうだ。
そうこうしているうちに、アースドラゴン駆除メンバーの顔合わせと合同訓練の日付となった。
集合場所はギルドの演習場らしい。ペトラと一緒に集合場所へと向かう。
「ギルドはギルドでいろいろ考えてるみたいだけど、どうなのかしらね」
「最後は自分の身は自分で守るしかないからな」
「それもそうね」
話しているうちに集合場所に到着した。まわりを見渡すと、見知った顔があった。アウラ・ブラー・ニーグの3人と、もう一人知らない女性が4人で集まっている。アウラがこちらに手を振っていたので、振り返しておいた。
「あら、色男はつらいわね」
「ペトラほどの美形に言われると反応に困るな」
「なんだか返しがこなれてて面白くないわね」
少しすると、正面の段になっているところに今回の総指揮官らしき人が立つ。
「今回のアースドラゴン駆除作戦で総指揮を執る、ギルドアルジェント支部副長、チャーリだ。それではさっそくだが、今回の作戦概要について説明させていただく」
チャーリは、ロマンスグレーの短髪をした、引き締まった体形の壮年男性だ。
「本作戦では、メンバーを補給・弱体化・攻撃の3部隊に分ける。補給部隊には全体の補助や予備部隊を担当していただく。弱体化部隊は本作戦の要だ。金属組成の変更術式が組み込まれた盾をアースドラゴンに押し当て、アースドラゴンの表面を覆う金属の弱体化を図る。弱体化できたところで、攻撃部隊の出番だ。貫通力の高い手段を用い、弱体化した装甲を貫く。以上が基本の作戦だ!質問がなければ、部隊の振り分けへと移らせていただく!」
自分たちはペトラの貫通力と、ルフスの機動力を買われ、攻撃部隊へと振り分けられた。
アウラたち4人は弱体化部隊へと振り分けられたようだ。
それからはしばらく、各部隊で連携練習だった。
巨大な質量を持つアースドラゴンは、正面が一番危険だ。
よって基本的に、各部隊はアースドラゴンの側面から攻撃することになる。
自分たち攻撃部隊は、弱体化部隊が組成を変化させてもろくした側面装甲を、迅速に攻撃することが求められる。
盾を持った弱体化部隊と入れ替わり攻撃する連携などを練習した。
翌日、アースドラゴン駆除部隊は出発した。自分たちにはルフスがあるので、3日後現地の前線基地で集合となっている。
3日の間に、自分とペトラ用に3つの装備を用意した。カエによる魔術の解析が進んだ
ことによって、従来のものより小型が進んでいる。
1つは、アースドラゴンの金属組成変更の術式を細かく組み込んだ投網。アースドラゴンへと広がるように投げ、投網の端にある魔石を強く握りこむことで魔術が発動し、投網全体で装甲の弱体化が起こる。
2つ目は、20㎝四方サイズの、2重盾を計5個。2重構造にして魔石を2つ仕込んであり、盾の表面で弱体化術式を発動後、2層目の術式で、連続して金属杭を射出する。
3つ目はエーテリック・ボムだが……これは緊急用だ。使わなくて済むことを祈る。
無事準備も間に合ったことだし、俺たちは前線基地へと出発した。
3時間後、俺とペトラは今回の作戦用に作られた前線基地へと到着した。
到着してすぐに、全体ブリーフィングだ。今回の総指揮を執るチャーリが説明をする。
「全員、全体の流れは把握しているものとして省略させていただく!今回は初動として、おとり役による浅い落とし穴への誘導を行う。かかればよし、かからなくても弱体化部隊による弱体化へと移行する。基本的に、足場の悪い森の中での作戦行動となるため、各自注意をしてくれ。それでは10分後、作戦開始とする!各自配置へと移動してくれ!」
自分たちの部隊も配置へと移動する。
50メートルほど先にアースドラゴンの巨体が見える。否応がなく緊張感が高まってゆく。
「ドガーン!!!」
おとり役が爆音を立ててアースドラゴンを誘導する。作戦開始だ。
おとり役に釣られるように移動しているアースドラゴンだったが、どうやら落とし穴に気づいたらしく、直前で減速して止まった。
「やはりこいつ、頭がいいな……」
いやな予感がする。
アースドラゴンが減速して立ち止まったタイミングで、チャーリが叫ぶ。
「弱体化部隊!突撃!」
盾を構えた弱体化部隊が、アースドラゴンの側面へと突撃する。盾の魔術が発動し、アースドラゴンの側面がボロボロと剥がれ落ちる。
「スイッチ!攻撃部隊突撃!」
攻撃部隊が突撃するよりわずかに早く、アースドラゴンが体を左右に振る。その圧倒的な質量にたまらず、攻撃部隊の一部が吹き飛ばされる。
アースドラゴンが咆哮する。見ればすでに、アースドラゴンの装甲が回復しかかっていた。
「弱体化部隊、再編制急げ!」
10秒しないうちに、弱体化部隊が再編成される。
「弱体化部隊、再突撃!」
だがアースドラゴンは再度体を横に振り、弱体化部隊の半数以上を吹き飛ばす。
吹き飛ばされる中に、アウラたちの部隊が見える。
アースドラゴンが横へと向き直り、アウラたちへと狙いを定める。
まずい。そう思った時にはすでにルフスを走らせていた。
アースドラゴンの頭部へとマイクロミサイルを放ち、注意をこちらへと向ける。
「こっちを向きやがれトカゲ野郎!」
アースドラゴンがこちらを向くと同時に、投網型の兵器を投げる。
魔石を強く握りこみ、魔術を発動させる。
発動させるとほぼ同時にアースドラゴンは投網を引きちぎっていた。
投網を引きちぎるほんの一瞬、アースドラゴンの動きが止まる。だが、その一瞬が欲しかった。
「ペトラ!」
ペトラがアースドラゴンの側面に飛び出し、2重盾を押し付ける。装甲を弱体化させ、そこに瞬時に金属の杭が飛び出す。
苦悶し、体を左右に揺らすアースドラゴン。それによってペトラも吹き飛ばされる。
「行け!ヴィル!」
ペトラの叫びが響く。コンバットモードのゆっくりとした時間の流れを感じながら、カエのガイドに従い、ルフスを走らせる。ホバーを発動し、空に向かってルフスの車輪を向ける。
そのままの勢いで、手に持った2重盾を、怯んだアースドラゴンの頭部へと押し付ける。
頭部を金属の杭に貫かれ、アースドラゴンは絶命した。
遠来のエゴノヴィ ネギ @magarinegi
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