毎日小説No.49  私と仕事、どっちが大事なの!?

五月雨前線

1話完結

「私と仕事、どっちが大事なの?」


「……」


「ねえ、答えてよ!」


「……何なんだよこれ」


「ここ数週間はずっと残業、残業、残業でまともにお喋りすら出来てないじゃない! そして休日も寝てばっかり! 私はもっとリツ君とお喋りしたい! リツ君と色々な場所に行きたい! リツ君とあんなことやこんなことをして愛を深めたいの!」


「聞いてないぞこんなの……」


「……そっか。もう、私のことはどうでもいいんだね。そりゃそうだよね。残業する、って嘘ついて可愛い女の子とお酒飲んでたんだもんね」


「な、何だよその写真! 俺はそんなところ行ってないぞ! つーかさっきから何なんだよ! 説明書に書いてある内容と全然違うじゃねーか!」


「もういい! 私のことを愛してくれないユウ君なんて嫌いっ!!! 私は、私のことが大好きなユウ君以外見たくないのっ!!」


「お、おい! やめろ! その包丁早く下ろせ!」


「死ねええええ!!」


「ぎゃあああああ!!!」



 ***

「部長。新作のアンドロイドのテストは失敗に終わったようです」


「何だと? 1作目のJK型アンドロイドを作った時は、テストプレイで失敗なんて起きなかったはずだ。1作目の時のノウハウを引き継ぎ、さらに向上した技術で作ったのが今回の人妻型アンドロイドだぞ? 何で失敗したんだ」


「JK型アンドロイドを販売した時に、お客様からいただいたクレームを覚えていますか?」


「覚えているとも。確か、『アンドロイドが常に自分に甘えてくる。最初は楽しかったけど、ずっと甘えられると流石に飽きるし、人間的ではない』という内容だったな。事前アンケートで『甘えん坊の彼女が欲しい』という回答が多かったから、めちゃくちゃ甘えるように設定したんだがなぁ」


「そのクレームを踏まえて、新作の人妻型アンドロイドには『アメとムチ』の要素を導入しました。幾ら仲が良い恋人同士であろうとも、一緒にいる時間が増えれば必ず軋轢が生まれ、時に喧嘩に発展します。その要素を取り入れたのです。甘える時は徹底的に甘えて、たまにいざこざや喧嘩が起きる、という流れにしたかったんですが……」


「上手くいかなかったようだな」


「搭載していたAIが暴走してしまいました。恐らく、AIに機能を学習させる際、『夫の不倫に激怒して復讐する』的な展開の漫画、アニメ、小説で学習させまくった結果だと思います」


「やれやれ。それで、新作アンドロイドのテストプレイ実験に参加していた男は?」


「死にました。包丁でめった刺しです」


「よし、じゃあその男の死体は適当に始末させよう。今回の失敗を元にデータを修正し、新作の人妻型アンドロイドを完成させてくれ」


「分かりました。それにしても、現実の女性には目も向けずアンドロイドを恋人にしたがる男が激増するとは……世も末ですね」



                           完



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