どうしてもその箱を開けたい。

男は、その箱を開けてみた。

中には何もない。

30分が経ち、男はまたその箱があけたくなった。

さっきはタイミングが悪かっただけだ。

もしかしたら、あの後すぐ箱に何か入ったかもしれない。

1分後か2分後か、とにかくこの間にその可能性はうんと上がったはずだ。

男は箱をあけた。

蓋を閉じ、庭に放り投げる。

ふとした瞬間が大事なのである。

例えばそれは手を洗っている時、あるいは読みかけの本を読んでいる最中など。

箱の方からこちらへやってくるのでは?

男は根気よく待った。

耐えかねて庭に目をやると、箱にはテントウムシが一匹張り付いて動かない。

男はネコがその箱に目を止めているのに気づいた。

ネコは飯のあてにならないと踏むと去っていった。

よし今かと思い箱に駆け寄る。

男はどうしても箱を開けたい。

もはや箱に何も入っていないというだけでも確認したいのだ。

しかし、それを確認してしまえば再びこの箱をめぐって悶々とした時を過ごす羽目になることも男は理解していた。

「弱ったなァ。」

男ははくしゃっくしゃっと頭をかいた。

やけくそで箱を開けてみる。

すると何かある。

みるとそれは包み紙に入った質素なチョコレートだった。

男はそのチョコレートをつまんで確認し、すぐまた箱に戻した。

戻した箱をまた開けてみる。

チョコレートである。

男はそのチョコレートを妹に上げた。


「これを私に?」

妹はあどけない表情で男を見た。


「あぁ。チョコレートが好きだろう。」


妹は、目を輝かせ大事に包み紙からチョコレートを取り出すとほっぺたを膨らませそれはおいしそうにほおばった。


これでよかったとおも負った。

しかし、最後にもう一度箱を開けてみたい。


中身は空だった。



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キモコイ短編集 ジャンパーてっつん @Tomorrow1102

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