知らず知らず

僕はシラスをのどに詰まらせて死んだ。

「やあ、僕は君に10年前踏みつぶされたシラスです。」


目が覚めるとそこには等身大のシラスに足が生えたものが目の前に立っていた。


「すね毛が生えてる...シラスなのに。」


「江の島のあの小道を君は覚えているね?」


「はあ。」


「その小道を抜けた先には夕日がきれいに見える知る人ぞ知るカップルたちのスポットがあっただろう。」


「はあ。」


「そこで場違いの波にさらわれて運よく岸にはね上げあられ、一息つこうとしたときに、君は僕を踏みつけた。そしてそのあと君は女の子に愛の告白を盛大に振られていいたね。」


「あー!あ、それって!」


「僕は吹き出た自分の内臓を目の前に、君が振られて悔しがる姿を冥土の土産にしてこの世を去ったんだ」


「でも、それは不可抗力だろう。」


「いや、不可抗力なんかじゃない。僕が場違いの波にさらわれたのにはわけがあったんだ。シラスが波に打ち上げられるなんてどうにもバカげた話だと思わないかね?」


「そ、そんなの...こじつけにきまってる。それと僕のシラスを詰まらせたのにどう関係があるっていうんだ!」


「僕は神様と約束をしたんだよ。シラスに生まれ変わる代わりに女やもめ(戦争未亡人)になった静子の生まれ変わりと再会をするって。」


ここまで来て男は事の全貌を理解し始めた。

「はぁ~???それで、その思いを断ち切った僕が君の怨念に殺られたってわけか!」


「どうやら、理解が速いようだね。しかし、君を呪い殺した僕がいうのもなんだが、君にチャンスがないというわけでもない。」

シラスの野郎はにやりと男を見た。


「静子の生まれ変わりに君がシラスとして、会いに行くんだ。そうすれば、前世からの思いが果たされ、君の死もリセットされる。」


「リセット..?」


「ああ、やり直しだよ。白井健斗としての人生をもう一度。」


僕は、シラス野郎の提案をよろこんで受けた。


その後どんぐり頭の少年に踏み殺されるとは知らずに...



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