第15話 家族が増えたよ
出来たばかりの村で夜を過ごした一行はその後も整地をして街道を作りながら東へと開拓を進め、2つ目の村の予定地の開拓を終えてミンスターに戻ってきたのは1ヶ月後の事だった。
「ご苦労さんだった」
官僚とマーサから報告を聞いたアレックス辺境領伯が言った。彼自身これほど短時間で終わるとは思っても見なかった。報告を聞く限り完璧に仕事をしてきている。
「あそこまでやって貰ったらあとは楽です。早速移住者を募っても大丈夫です」
開発がうまくいきそうなので官僚の表情も明るい。
「ブライアンとフィル殿には世話になった」
「いえいえ、お役に立てて良かったです」
『そうそう、必要ならいつでもフィルを呼んでくれていいからね』
フィルの言葉を辺境領伯に伝えると是非またお願いするよという返事が帰ってきた。
マーサはせっかく辺境領にきたのでここの魔法師団で少し打ち合わせをしていくと言う。最後にもう一度辺境領伯からお礼を言われたブライアンとフィルは館を出るとそのまま転移の魔法で王都の自宅に戻っていった。
その後も王都とジャスパーの街を行ったり来たりしながら国内のあちこちに飛んでは人々のために尽くしたブライアン。フィルもすっかり国民の間で有名になり妖精を左肩に乗せている魔法使いのブライアンの名前は国中に轟くことになる。
そしてブライアンの名前が国中に響き渡った頃、ブライアンの自宅の住人が新たに増た。
いつの頃からかお互いに惹かれあっていた2人。マーサは自分が年上だということを気にしていたが自宅で2人で話あっていた時に肩に乗っていたフィルが。
『マーサも自分の気持ちに素直になったらいいよ』
という言葉で気持ちの整理がついた。妖精のフィルは以前からマーサの気持ちがわかっていたらしい。
シアンさんとリリィさんもマーサがブライアンの相手として一緒になることに大賛成してくれジャスパーの両親や兄も同じだった。
王都とジャスパーの2ヶ所で披露宴をしたブライアンとマーサ。
どちらの披露宴にも妖精達が皆姿を現して歓迎してくれたので今まで見たことがない程賑やかで暖かいものだった。
王都の自宅でのパーティには何と国王陛下がお忍びで参加された。元々貴族は誰も呼ばずに彼と彼女の知り合いを中心にしていたので大きな騒ぎにはならなかったが披露宴に招待されていた魔法師団や騎士団、そして情報部の連中はびっくりする。元々出席予定だったケヴィン宰相も知らなかった様でびっくりしていた。もちろん一番びっくりしたのはブライアンとマーサだ。マーサの両親も列席していたがまさか国王陛下が直々に来られるとは思ってもいなくて焦った様子になる。
「ブライアンとマーサが一緒になると聞いてケビンだけに任せて余が城の中で座っておる訳にはいくまいて」
そう言って豪快に笑う陛下。ワッツだけは知っていた様だ。してやったりの表情をしている。
皆が国王陛下に挨拶しようとするとそれを片手で制止する。
「今日の主役はブライアンとマーサだ。余は1人の参加者としてこの会を楽しませてもらう。今日は余に無用な気遣いは不要だぞ」
披露宴にはマーサの前の魔法師団長であるマシューも参加し久しぶりにブライアンらと会った。王都の自宅での披露宴は賑やかな宴になった。リビングと庭を開放し妖精達も皆姿を表して結界の中を自由に飛び回っている。皆ブライアンとマーサを祝福していた。国王陛下も普段は見せない表情で妖精達に囲まれながらパーティを楽しんでいた。
披露宴の席上国王陛下より2人の結婚を祝して王家より目録が渡された。
「ブライアン、マーサ、それにフィル殿。これからも国のためによろしく頼むぞ」
「「仰せのままに」」
頭を下げるブライアンとマーサ。
『フィルに任せておけばずっと安心だよ!』
ブライアンの左肩に乗っている妖精のフィルだけは誰の前でもいつものフィルだった。
【完】
最後までお読みいただきありがとうございいました。
当初は第1章が終わったところで完結するつもりでしたが書いていてもう少し続きを書きたくなり後日談的に第2章を書きました。
妖精と魔法使いというよくある組み合わせではありますがそこにスローライフ的な要素を入れてのんびりと日々を過ごす彼らを書いてみました。
ブライアンとフィル、彼らはまたどこかで登場させたいと思っているキャラです。
花屋敷
その魔法使いは左肩に妖精を乗せている 花屋敷 @Semboku
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