第14話 親子の愛は永遠に

 何で、私は立ち止まっているのだろう?


 パパを信頼しているから?

 戦うことは、こわいから?


 どちらでもない。

 私は、自分一人で背負わなくていいことに安心の感情がある。


 安心・・・?

 こんな危機的状況の中で、どうしてこんな安堵なんてしてられるの?


 自分で、自分がわからなかった。


「これから、つらいこと、悲しいこと、待ち受けていると思う。


人生を放り投げてしないたくなる場面に出くわすかもしれない。


だけど、忘れてほしくないことが、ひとつだけあるんだ。


セオリ、それが何なのか聞いてくれるかい?」


 パパの言いたいこと?

 これから先、聞く機会があるのかどうかもわからない。


 私は迷うことなく、答えた。


「いいわ。


パパ、最後まで聞かせて」


「パパは、どんな時でも、セオリがどんな姿になろうと、愛している。


こんなパパで、ごめんな。


父親らしいこと、何もしていないのに、でかいこと言えないよな」


 パパから、伝わる。

 これは後悔なのかもしれない。

 

 だけど、私はパパを責めていない。

 この瞬間でしか出会えないけれど、やっぱり私の世界でたった一人しかいない父親だ。


 何の根拠もないけど、なぜか親子だということを実感できる。


 何も知らないけれど、娘に対する愛情だけは私にも伝わった。


「そんなことない!


パパは、私に前へ進む勇気をくれた。


だから、父親らしいことを、ほんの一瞬かもしれないけど、私は本当の親子って思える言葉をもらうことができたわ。


それができるのは、パパだけだと思うわ。


だから、私もパパを愛している」


 パパは、一瞬微笑んだ。


「そっか、ありがとう・・・・」


 こうして、不気味な紫のトラの姿をしたアコーソが口を開いた。


「話は、すんだか?


うちは、佐藤をいじめるために、手がかりを探したつもりだったけれど、今の会話にもそのような様子はなかった」


 人とは、思えない。

 私は、アコーソを最初から今も人と思ってない。

 今となっては、心も体も化け物でしかない。


「アコーソに聞きたいことがあるわ」


「うるさい、黙れ、察しろ」


 アコーソの冷たく言い放った言葉を私は、無視した。

 察するなんて、何を察してほしいのかわからなかった。


「仲間はどうしたの?


仲間と一緒に異世界転生しなかったの?」


「知らない。


うちは、佐藤以外に興味がない」


「大事な友達じゃないの?」


 幼稚園の頃にアコーソと一緒に私をいじめてきた人たちだ。

 そんな簡単に離れると思えなかった。


 だけど、アコーソは予想もしない答えを出した。


「は?


何で、うちがそんなただの幼稚園からの腐れ縁を気にしなきゃいけないの?


意味不。


あなたって、わけわかんない。


そのまま死んで魂のままでいようが、異世界転生しようが、うちに関係ない。


うちが気にするのは、佐藤だけ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いじめっ子がストーカーになったので、異世界へ逃げました 野うさぎ @kadoyomihon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ