第13話 元いじめっ子の人外異世界転生

 私は、抱きしめられて動揺したりはしたけれど、不思議といやな感じはしなかった。


「運命からは逃げられない。


だけど、わしは目をそむけたくなって・・・・」



「いいの。


いいのよ。


パパは、何も悪くないわ。


いじめる側が、悪いってそんなことわかりきっていることでしょ?


だから、自分をせめないで?」


 これが励ましになったかどうかは、わからない。

 

 パパは私から離れた。


「パパは、聞いたことあるかもしれないけど、子供を出しに預けてある」


「ええ」


 ここで、酒場が壊れた。

 そして、目の前にいるのは、巨大な鋭い目つきをした紫のトラだった。


「トラ?


なぜ、こんなところに?」


「うちは、トラなんて名前じゃない。


うちは、アコーソ。


異世界ネームをもらった。


佐藤をいじめるために、異世界転生を果たした」


「まずい!


怪物での異世界転生こそ、よくないものはない!」


 パパは、焦っている様子だった。


「異世界転移なんてよくある話だけど、異世界転生なんて本当にあるの?」


 ここで、ペングウィーが話しだした。


「あるに決まっている!


異世界転移と比べれば少ないかもしれないけど、異世界転生なんてある。


だけど、記憶をもったまま転生したということは、どういうことだ?」


「そんなことは、どうでもいいの。


とにかく、うちは佐藤をいじめたい。


いじめたい。


妬ましい。


佐藤は、どこ?


佐藤の気配がするけど」


「佐藤を探す前に、お医者様を探すのはどうかしら?」


「あなたは、さっきの・・・・!」


 私は、槍をかまえた。


「戦うつもりなら、引き受けるけど?」


「戦うつもりはない。


ただ、佐藤の気配を探しているだけだ」


「誰にも、私の大切な人を奪わせない。


だから、私は何度でも君と戦うわ!」


 こうして、私は槍を何回でも、トラにつきつけた。

 今は、アコーソという名前か。


 だけど、アコーソは怪力で、腕の力をふるっただけで、槍を折った。


「そんな・・・、私の槍が・・・!」


「セオリ、ここはわしに任せてくれ」


「パパ?」


「こうなったことにも、わしにも責任がある。


ペングウィーから、全て聞いてある。


だから、ここで、この場で、元カノ仇をとらせてほしいんだ」


「元カノって、ママのこと?


私はこれ以上、大切なものを失いたくない。


だから、戦わないで?


戦うのも、犠牲になるのも、私一人だけでいいわ」


「よくない。


わしも、大切な娘を失いたくないんだ。


それに、わしは子供一人をまともに育てられないだめ親なんだ。


せめて、だめ親らしく、無様に砕け散るまで守りきりたいんだ」


「パパ・・・・」

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