第12話 明かされる残酷な真実
「酒場のオーナー?
どういうこと?」
私は、頭が追いつかなかった。
だって、明らかに目の前にいるのは、酒場のオーナーだから。
「君は理解できないのかい?
もう一回言うよ。
これが、君の実の父親だよ」
私は、すでに父親に会っていたということ?
「セオリ。
信じられないかもしれないけど、君の父親なんだ。
今まで、隠していてごめん。
だけど、これには事情があるんだ」
「事情?」
「ああ。
実は、過去に母親のお腹に四つ子が身ごもっていて、その中の一人がセオリで、もう一人が今、わしが育てている子供で、もう一人は他の誰かに育ててもらっているんだ。
もう一人は、いろいろなところを転々としているよ」
どういうことだろう?
私は自分が一人っ子だと思っていたけど、まさか四つ子とは思わなかった。
母からも、そんな話は聞いたことがない。
「子供三人を先に産んで、お腹の中にいる君を連れて、彼女は人間世界に帰ったんだ。
本当は四つ子全員を育てたかったけれど、そういうわけにもいかなかった。
セオリにそのことを何度も話そうと思っていたんだけど、悩んでいたんだ。
幼い君に、残酷な真実を背負えるのかって。
受け入れられるのかって」
「何の話をしているの・・・・?」
「とにかく、聞いてほしいんだ。
四つ子のうち、三人にはそれぞれに、運命があるんだ。
いじめ寄せ、不幸寄せ、死に寄せ。
それぞれが、かなりの不幸な運命を背負うことになる。
いじめ寄せとは、いじめっ子を引き寄せてしまう運命。
不幸寄せは、その名の通りに不幸を呼び寄せてしまうんだ。
最後に、死に寄せとは、自分以外の人が次々と死んでしまうことだ。
つまり、身近で殺人事件、自殺事件、事故死、病死が起きるんだ」
こんな運命は、初めて聞いた。
だけど、もし、私がこの三つのどれかに当てはまるとしたら・・・・。
「私は、いじめ寄せだと思う。
私には、いじめられて、執着されて、ストーカーに会っているんだ。
だから、とどめをさしたわ」
「そうか。
ごめんな。
それなら、もっと早くに話しておけばよかったか・・・」
「ええ。
そういうことなら、早くに話してほしかったわ」
そう言うと、酒場のオーナーこと、実の父親は私を抱きしめた。
「え?」
突然、男の人に抱きしめられた私は、動揺した。
いくら、実の父親だとしても、一緒に暮らしたことがなければ、赤の他人であることも同然だから。
「わかっていたんだ。
君には、生まれた時からいじめ寄せの運命があるってことくらい。
だけど、わかっていながら、父親でありながら、何もできなかった。
本当にごめんな」
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