第11話 予想外の再会
彼の言っていることが、本当かどうか確証がない。
だけど、私は真偽が気になる。
人のことは、簡単に信用しないように生きてきた。
生きてきたけど、そんな私でも、本当だと信じたい時もある。
「私の父のいる場所を、教えて・・・?」
私は半信半疑ながらも、ペングウィーと名乗る生物に歩み寄った。
「いいとも。
そのための異世界案内人だからね」
「異世界案内人って、何の話?」
「そのままの意味だよ」
「言っていることが、変わっている。
君はさっき、魔法精霊っていう話をしていたんだよね?」
「何も矛盾することはないはずだ。
おいらは魔法精霊であり、異世界案内人。
もしかして、君は異世界に来た時のことを憶えていないのかい?」
私はそう言われ、自身の記憶をたどった。
幼い頃に精神病棟に入院した時に、看護師に「異世界に行かないか?」と言われて、気がつけば異世界に来ていた。
だけど、どうやって来たとかは憶えていない。
気がつけば、見知らぬ場所にとどりついていたんだ。
はっきりとではないけど、具体的にではないけど、私は憶えている。
幼い頃の記憶だから、もしかしたら何かと混濁しているかもしれない。
「・・・・・・・。
私は、人間の看護師に提案されたんだ。
君じゃない。
君はどこからどう見ても、人間じゃない」
「おいらの言うことを、忘れちゃったの?
異世界案内人って」
私は、必死に思考をめぐらした。
魔法精霊、異世界案内人。
ということは・・・・。
「人間と、精霊の姿をふたつ持っているということ・・・・?」
「まあ、魔法精霊であるこのペンギンの姿がおいらの本来の姿だけど、実は人間の姿にもなれるんだ。
この通りにね」
こうして、ペングウィーは人間の姿になり、看護師の格好をした女性に変身した。
「え?
ということは、つまり・・・・?」
あの時の看護師は・・・・?
「あの時の、看護師はおいらだったということだ。
久しぶりだね。
君は、確か今はセオリっていう異世界ネームなんだよね」
今、考えれば、看護師が異世界に転移させる能力を持っているわけがなかった。
だけど、今の説明で合点がいった。
「さ、君の父親のところに行こう。
君も残酷な真実かもしれないけど、そろそろ話していい年頃だろうって」
「なんでもいいけど、私は父に会いたい」
この先、ずっと会うことがないと半ば諦めかけていたところに、ようやく父に会えると安堵した。
その残酷な真実が何なのかに頭が引っかかるけど、今はそんなことどうだってよかった。
ペングウィーに案内されて向かった先は、酒場だった。
「これが君の実の父親だよ」
だけど、目の前にいたのは、異種族の森に行くことを提案した酒場のオーナーだった。
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