第10話 別れあってこその出会い

 ペンギンが、空を飛んでる?

 しかも、ピンクのペンギンなんて、見たことがない。


「驚かせてしまってごめんね。


おいらは、ペングウィー。


君は?」


「セオリよ」


「セオリっていうのか。


おいらは、ここで言う魔法精霊って言うけど、君は魔力も感じないし、匂いからしてみても人間だけど、まさかあんなに強いと思わなかったぞ。


この槍からも魔力も感じられないけど、君の強さの秘訣はなんだい?」


「わからないわ。


ただ、ひたすらに修行しただけで、強くなったから」


「だけど、あれはさすがに才能とかないと、ここまでは強くなれないぞ。


どうする?


おいらと契約して、パートナーになるか?」

 


「契約って言っても、何の契約をするの?


それに、これには何かしろの代償とかあるのでは?


悪いけど、そんな怪しい勧誘なんて、乗らないわよ」


「君には、目的や願いはないのかい?」


「あったとしても、それは君がどうにかする問題ではない。


私は、これから向かうところがあるから」


「向かうって、どこへ?」


「また、遠いところに行くのよ」


「おいらも、行く~」


 なぜか、すでに浮いているペングウィーもついてきた。


「歩くと森、森しかないのに、どこまで向かうんだ?」


「どこまでってことはないのよ。


ただ、ひたすら歩くだけ。


私は、遠いところに行ければ、どこでもいいのよ」


「家出か?


これって、家出少女の発言じゃないか?」


「それもそうね。


だけど、家出少女との違いは、帰る場所があるということね。


私には、そもそも帰る場所なんてない」


 このペンギンは、どこまでついてくるのだろうか?


 ピンクのペンギンなんて初めて見るというのもあるけど、魔法精霊というのが何なのかわからないから、余計に警戒してしまう。

 そもそも、魔法精霊って何?

 私、そんな精霊がいることすら、知らなかった。


 異世界だから、いろいろな精霊がいるのだろうけど。


「ついてこなくてもいいのよ。


私には目的とかないんだし、迷子になるだけだよ」


「大丈夫さ。


おいらは、君の父親にパートナーになるように言われたから」


 私は、その瞬間足を止めて、後ろにペングウィーがいるために振り返った。


「私の父親を、知ってるの・・・・?」


「多分。


なんとなく、君がその男の娘だった気がしたから。


佐藤っていうのも、聞いたし、おいらは一部始終の様子を見てたんだぞ。


ここで、確信を得たんだ」


「佐藤なんて、苗字はいっぱいいるのに、どこで確信を得たの?」


「人間でありながら、魔力を持ってないのにかかわらず、槍だけで戦い切るのは、間違いなくあの人の娘だって」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る