第3話 ユラノス
そして2つ目のモノ。その説明はこうだった。
しかしそれは単体ではなんの能力も持たない。
星降り事件により、『光』『闇』『無』の
それを1箇所に集めることでそれらは融合を始め、やがてひとつになる。
ソレを手に入れた
奪い合うか、助け合うか。
要約するとこういうわけだ。
お前らは世界をひっくるめて戦争をしろ。
その含みに世界の誰もが気づいただろう。
天野
「そんな、信じれるわけないだろ」
無限資源?そんなもの信じれるわけないし、本当かもわからない。
ひとつの絶望は、科学そのものが否定された。ということ。科学者である崇人は尚更だ。だからこそ、希望も感じたのかもしれない。
新しい科学の道が開いたことに。
未だ影の声は続く。
「それからですが、あなた達が戦いをしやすくするために、1度死んだ方々には、
詳しく説明はしませんので、各自で実験でもしてみてはいかがでしょうか」
話は一段落付いたようで、影は、それではまたいつか会う日があれば。そして、
「これはささやかな祈りです」
と、その姿を溶かして消滅した。
魔法。非現実的な言葉に全世界が困惑した。それは奇跡の類だ。人間には不可能なことを現実に可能にする。いや顕現させる。
そして最後の言葉の意味。祈り。
それが今その意味の体を表した。
ロサンゼルス、ロンドン、東京の全ての星の外殻にあたる部分、つまり、金が発光し、そのからだを四方に散らした。
その光は、星の衝突により崩壊した都市を包み、巨大な光のドームを形成した。
その中にいた者は口を揃えてこう答える。
曰く、時間が戻った──と。
その光のドームは五分ほどで消滅した。その光が消えた後、そこに残っているのは崩壊以前の都市だった。
ビルは地面から天を突き、地面はコンクリートでできている。まさにそれは星降り以前の姿だった。
これが影からのささやかな祈りだった。
しかし星は完全に消滅した訳ではなく。星があった場所には、2mのテンジニウムが宙に浮かんでいた。
渋谷駅前、スクランブル交差点中心にそれは現れていた。
3ヶ国全てで超常現象は発生し、更に混乱を巻き起こした。
◈◈◈
1日後、ロサンゼルス新市街で暴動が起きた。
1人の青年が復活者3名を刺し殺した。
「なんで!なんでお前らが生き残って俺の母さんは死ななくちゃならなかったんだ!」
その悲痛な叫びから始まった行動は、既に重度の犯罪を招いていた。
青年は、黒いフードを深く被った眼球に虹色の輪が走っている男を見つけた刹那、腹をナイフで貫いた。
2人目はその隣にいた若い女。3人目は逃げ出した男の背中を一刺し、そしてもう一度、もう一度、
ナイフが肉を裂く度に吹き出す鮮血は人間のそれだった。
そして、被害者全てが復活者であった。
刃は予想よりも意外と肉にくい込み、刺しやすかったが抜きにくかった。
ぐちゃり。という鳥肌の立つような感覚が手を覆う。
青年の母親は星降り事件に巻き込まれ、焼け焦げた死体は、家族により火葬され埋葬された。それにより彼の母親が息を吹き返すことはなかった。
それによる恐怖と悲しみと、未だに生きている復活者に対する憤りがこの行動を起こさせた。
それは一種の迫害だった。
「お前らなんかが生きていていいわけないだろ!!死ね!しね!死ねよ!!」
紅い血液が作り出した人混みのブラックホールは、様々な人間の悲鳴を上げながら広がっていく。
青年はまた1人、目に輪が走っているものを目に捉えた。
「死ねよ!!母さんを、返せ……ッ」
と、竦んで体が動かない男の首にナイフを走らせる。
横一文字に捌かれた首は血の花弁を吹かせ、死に追いやった。
その時だった。
一番最初に青年に腹を刺されて死んだ男が膝をつき、立ち上がった。
「え、なんだこれ……」
完全に状況が理解出来ていないよう。
「俺、刺されて…」
「な……なんなんだよ!!なんで生きてんだよ!!」
と、青年は声を上げる。発狂に近かったそれは再び男を恐怖に落とす。
ナイフは男を睨み、青年はゆっくりと足を進める。
はァ。
「やめろ、やめてくれ、」
恐怖で手を前に突き出す。
青年は歩みを止めない。
はァ。はァ。
「やめてくれ!やめてくれよ……!!」
男をナイフの間合いに捉えた。
ナイフは素早く突き出された。
「死ねぇぇぇ!!!!」
「いやだ!死にたくない……!!」
それが世界で初めて超原能力、『ユラノス』が観測された瞬間だった。
男の突き出された掌の前に赤く光る幾何学模様の
刹那、その陣から炎が吹き出す。その業火は瞬間的に青年の体を包んだ。
「あ、あつい!なんだこれ、なんだって……」
その炎が消えたそこに残るのは、先程まで人間だった灰であった──
創造の星──ニューゲート── @tamagoto_kimi
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