書架《海外SF》

卯月

海外SF

愛があればあなたは何でもできますか純真だった頃のあたしへ



失ったものの全てを打ち寄せて記憶の中に浮かぶ海岸



父さんが髪を刈るのは君のため爪も歯もない哀れな娘



古き日の歌を忘れてぼくたちは大きな栗の木の下にいる



うらにわのおはかに花をそなえたらもうもどれないたびに出ます。



jack in, flip, flip, 電脳のアイスの果ての灰色の墓所



さようなら地球さよなら子供たち僕は一人でピアノを叩く



幸せな夢見て眠る犬がいて手の届かない温かな庭



無知という罪を犯して闇のなか白い子猫を抱きしめている



来年の話をしよう来年はここにいないとわかっていても



プログラムされた愛では嫌なのと泣いたあのの名はヴィルジニー



蜥蜴とかげには蜥蜴の未来始まりの真珠を探す始まりの海



蜘蛛くもの脚ぱちんぱちんと切り刻み山羊は落ちゆくくらい深淵



太陽のまっただなかに出かけようあたしたちずっと友達だよね



このドアの向こうに夏があるのなら猫のピートと越えていくのに



ああ、何て素敵な世界、神も死も自由もなくて、みんなしあわせ!



もし本を焼く日が来たらわたしにもガソリンかけて燃やせばいいわ



淋しさがわたしのかたちどろどろの幸せなんてかりたくない



あしたまた会えるでしょうかあの丘の九月は遠く過ぎたとしても



所有せざる人にはなれぬわたくしの書棚に並ぶハヤカワ文庫

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