第3話 気まずい
佐々木家はいつも賑やかだ。
だが、今日は少し違う。
「気まずい。」
私は佐々木明美。
高校3年生。
この家の長女です。
今、この家には私と父しかいません。
だから、気まずいのです。
自分で言うのもなんですが、私は今絶賛反抗期中。
父との仲は険悪です。
特に何かの出来事が原因というわけではないのですが、なぜか父親が生理的に受け付けないのです。
それなのに今日は母が弟と妹を連れてデパートに出かけていて、家には私と父しかいません。
私も一緒についていこうと思ったのですが、来週中間試験があるため、母から家で勉強するように言われてしまいました。
図書館で勉強しようとも思ったのですが、今日図書館は臨時休業。
家で勉強するしかありません。
お昼は母が用意していってくれました。
佐々木家では食事を自分の部屋に持っていくのは禁止。
リビングにある食卓で食べなくてはいけません。
そう、私は今から父と2人でランチタイムなのです。
「はー。気まずい。」
リビングに行くと、もう食卓に昼食が置かれていて、父が私を待っていました。
「お、来たか。」
普通に返事をすればいいだけなのに、それができない。
「いただきます。」
私は一目散に昼食を口に放り込みます。
早く食べ終わって部屋に戻ろう。
「あっはっはっはー」
父はテレビを見ながら笑っています。
そんなにおもしろいか?
父の笑いのツボはよくわかりません。
よし、食べ終わった。
部屋に戻ろう。
「ごちそうさまでした。」
お!
席を立とうとした時、ちょうどテレビに私の好きな芸人さんが出てきました。
その芸人さんのトークに私は思わず声を出して笑ってしまいました。
「あっはっはっはー」
ん?
私の声とは別に野太い声がしたぞ。
もしかして。
私は父と全く同じタイミングで笑ってしまいました。
気まずい。
父は特に気に留めていません。
でも、私はものすごく気まずい。
すぐに食器を片付けて部屋に戻りました。
「はー。」
世の反抗期の女子たちもみんなこうなのかな。
私と父が普通に会話をする日は来るのでしょうか。
「あー気まずい。気まずい。」
佐々木さんちは今日も平和だ。
佐々木さんち マツゲン(シアターペリカンズ) @theaterpelican
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