13
僕と双葉は、最初の事件の被害者の母校、鳴滝館学園に情報を得るため訪れていた。
「あー、教祖さまね。あまりいい噂は聞いてなかったな。ああいう殺されかたはあんまりだと思うけど、どっかで仕方ないかも、なんて、ね」
教祖さま?
「そうそう、七条教。みんなはセブンって呼んでたよ」
被害者の彼女の名前は、七条奈々見だった。その名字をとって、七条教。しかし、教祖さまねえ?
その子は言う。「セブンに入信してた子は、少なくない額のお布施を支払ってたみたい。結局さ、心の幸福とか癒しなんて建前で、お金儲けが主眼だったってわけ。これも噂なんだけど、やってたことって、気に入らないやつを不幸に陥れるために呪いをかけてたとかなんとか」
きな臭くなってきたな。宗教に呪い、か。殺される要素、恨まれる理由としては、まあ、あるってわけだ。それからも噂をその子から聞き出して、情報料の三万円を渡し、ありがとうと言って、別れた。
僕と双葉は、鳴滝館学園の廊下を歩きながら、話し合った。最初に思い描いていた展開とはかなり異なってきたが、進展したといえばしたといえる。しかし、
「新興宗教ねえ。しかも教祖さまだって。女の子は占いとか好きだけど、その延長線なのかねえ」双葉は言う。「呪い、か。だけど、白か黒かで言えば、限りなく黒に近いわけだ。その呪いを受けた子ってのにも話を聞いてみよーぜ、伸二くん」
そんなことを言いながら歩いていると、急に空気が変わった。それは鋭い刃を当てられたような痛みを伴う気配だった。いつからそこにいたのか、僕と双葉の前にそいつはいた。
顔の上半分を仮面で覆った怪人が。
そいつは、口が裂けたような、そんな笑みを口許にたたえていた。
僕は悪寒を覚えながら、それに抗うように叫んだ。それは言葉にならない慟哭のような叫びだった。
怪人はそんな僕たちの様子に頓着することなく、笑みを浮かべながら、静かに言った。
「わたしは、ジョーカーですよ、黒崎伸二くん」
それが僕とジョーカーとの長いながい戦いの始まりの邂逅だった。
反逆のラビリンス 椎名まじめ @sheena175
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。反逆のラビリンスの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます