初恋は小学1年生の春だった
初恋は小学1年生の春だった。
休み時間、真っ先に教室から廊下に出ると、同じタイミングで、隣の隣の教室から女の子が廊下に出てきた。
隣の隣の教室なので、距離は離れていたが、そのとき、まだ廊下には誰もいなくて、その女の子とばっちり目があった。
現在の私の視力は0.01だが、当時の視力は2.0。間違いなく目があった。もちろん、これは彼女の視力も良くなければ成立しないのであるが、きっと彼女の視力も2.0あったはず(笑)
彼女は、線の細い、色白の、目のくりっとした、オカッパの女の子だった
「一目惚れ」なんて言葉は知らなかったが、目があった瞬間、胸がキュンとした。あれが、私の人生で最初の、そして、きっと最後の「一目惚れ」だ。
それから9年間、私は彼女と同じ学校に通った。小学校と中学校を合わせて9回のクラス替えがあったが、一度も彼女と同じクラスになることはなかった。同じ部活になることもなかった。一言も言葉をかわすことはなかった。
廊下ですれちがったりするとき、たまに目が合うことはあったが、それも数回程度。9年間で数回だ。きっと彼女は僕に興味がなかった。
僕にしても、幼かったのか、もしくは、硬派だったのか(笑)中学生になっても付き合うという発想はなく、よって告白するなんてこともなく、たまに彼女を見かけてはキュンとしたり、切なくなったりするだけだった。
一言で言えば彼女との間には何もなかった。こんなに何もないことがあっていいんだろうか、と思うぐらい何もなかった。僕は彼女の声さえ知らなかった。知っているのは彼女の零(こぼ)れ落ちそうな瞳と、透きとおる白い肌。
そんな彼女を、僕は、ただただ一方的に想い続けていただけ。ただそれだけ。でも、それが今は、良き思い出になっている。
こんなことを言うのは恥ずかしいが、おじさんになった今でも、たまに、そのときのことを思い出して、キュンとしてみたり、切なくなってみたり……
もしかすると、私の初恋はまだ終わってないのかもしれない。
人との距離感が分かりません あべまきと @tkoki777
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