第11話 人外の転生者があまりに可愛すぎるので贔屓していたら全俺が泣いた話 その2
「ペス………お前、どんだけすごい事やってきたんだよ」
ペスはちょっとドヤ顔でしっぽをふりふりして嬉しそうにしている。可愛い。写真撮りたい。
「………」
何やら強い視線が突き刺さっているので、ぐっと我慢するけど。
「うーむ………。これ、転生させた先の世界は大丈夫か?文字通り、最強の生物じゃね?」
たぶん魔王とかいてもワンパンよ。犬だけに。
「獣神の寵愛は神から与えられたものだからな。変な事をしたら取り上げる事も出来ると思うぞ」
バカヤロー!!こんな純真無垢なペスが変な事をするはずがないだろう!なーー!ペスーー?
「今日のこいつ腹立つな………」
「それには同意します。撃っておきますか?」
女同士でひそひそ会話してる。何話しているだろうなーペスー?
さて、何故かリリーとルナにボコボコにされたんだが、そろそろペスを転生させなければならない。
えっ。ペス、転生させちゃうの?
「お前、今まで何千回と転生させてきたのに、ペスだけ妙に渋るな」
じとーっとした目でルナが見てくるけど、しょうがないじゃないか!今までチートくれくれはよしろみたいな奴ばっかで、出来ないっていうと逆切れする奴らばかりだったんだぞ!お前が今まで積み重ねてきた善行を数えてみろヒャッハー!って言うと大人しくなってたけどさ。たまには癒しがあってもいいじゃん。
「………その、何だ。そんなに疲れているなら僕が………」
「きゃんきゃん!」
えっ?ペス、お前、俺を慰めてくれるのか?うっうっ。お前は本当に良い犬だな。
それでルナ、今さっき何か言い掛けてたけど何?
「おのれペス………!!」
急に怒り出した!?やめて!ペスは悪くないの!俺を慰めてくれていただけじゃないか!
「全く、調子が狂う………。ペスはどうやら僕の世界に転生するみたいだぞ。悪いようにはしないと約束する。だからあんまり駄々をこねるな」
母性溢れる優しい声でルナがそう言った。………確かに俺の我儘だよな。ペスには会いたくてたまらないご主人様がいるっていうのに。
「きゃん!きゃん!」
元気出して。そう言ってでもいるかのようにペスが吠える。ありがとよ。俺も馬鹿な事を考えてないで快く見送る事にする。だからペス、あっちの世界でも元気にご主人様と幸せに暮らすんだぞ!
「あいつ、あれからやっぱ少し元気がないようだな」
「大丈夫ですよ。普段から調子が良いのですから、しばらく放っておけば治ります」
「リリーはこういう時なんかちょっと冷たいな。時間が解決するという事もあるが………よし!僕は僕であいつを元気づけてやるか!」
ペスが転生してからの数週間、ルナが頻繁に俺の所に遊びに来るようになった。ペスの事について細かく報告してくれるようになっていたのだ。
「ふ、ふん!たまたま近くに来たから寄ってきてやったぞ!」
相変わらず遊びに来ている事を認めないのがルナらしい。だから俺も余計な事は言わず、ルナの優しさに甘える事にした。
ペスはあれから無事にご主人様と再会出来て、そのチート能力でご主人を守っているようだ。まぁあのペスならどんな敵だろうと敵わけがない。だけど、元気にしているようで安心した。
それとこれは俺も驚いた事だが、ご主人の方もペスがペスであるとわかったらしい。不思議だ。ご主人の方は別に記憶が引き継がれているわけじゃない。再会するまでに数々の人生を過ごしていただろうに、それでもペスの事を思い出したようなのだ。奇跡だなんて言葉にまとめてしまうとあまりに軽いが、それ以外に言いようもない。
「ちょっとだけ心配していたんだが………大丈夫なようだな」
ペスはあの世界では規格外だ。生物の中で頂点に達しているといっていい。だからそんなペスをご主人が受け入れてくれるかどうか。それだけが心配だった。ただの杞憂だったようだけどな。良かったなぁ。二人とも末永く元気でいろよ。
「神様、買い物のついでにこれ安かったので買ってきました。食べきれないのであげます」
それともう一つ、変わった事がある。それはリリーが妙に俺に優しくなった事だ。お土産を買ってきてくれたり、それがしかも俺の大好物だったり、疲れてつい寝てしまっていたら、起きたら毛布が掛けられていたりと、今までそんな事をされなかっただけに嬉しいというよりも怖さを感じてしまう。
「今もずっと見られている。こ、これは監視されているのか?何かしたか俺!?」
お前はもう終わりだから、最期にちょっとだけ優しくしてやる的な?うおおおおお。もうちょっと真面目になるから、許してくれーーーーー!!!!
転生神は突っ込みたい! ~お前ら死んだからって何でも簡単に貰えると思うなよ!?~ 物草コウ @monogusa_kou
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