第9話 愛されたい
『じゃあ、桜は光太郎のことが好きなんだ』
電話越しから黒宮さんの声がする。
家に帰ってきて、俺は自室のベッドで横になりながら今日のことを連絡するために電話した。
「はい、好きだって言ってました」
『そっか……』
これで黒宮さんも佐藤と別れる決心がついただろう。
黒宮さんは俺のものになるに違いない。
「桜のためにも早く私、別れなきゃだね」
自分の恋より親友の恋のために自分が辛い思いをする。
そんなのダメだろうけど、二人は浮気しているわけだ。
それに、俺が黒宮さんと付き合うために。
「あと、いきなりごめんなさい……あんな方法で桜と会わせちゃって」
申し訳ない、という気持ちが伝わってきた。
「いや、大丈夫ですよ。少しだけ手荒でしたけど……」
だいぶ強引だったが、神崎さんが佐藤のことが好きということがわかっただけいい。
神崎さんと協力して二人を別れさせるという約束もできたわけだし。
『最近は光太郎とは話すことどころかラインすらしてないの、多分、もうすぐ別れられるかな……』
まだ黒宮さんは俺のことが好きではないはずだ。
とにかく好きにさせてから振られなくては意味がない。
「もっと俺を愛せば別れると思います」
俺を愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛しまくれば、黒宮さんは俺のことが好きになるはずだ。
『はい、頑張って隼人くんを愛します』
ああ、早く黒宮さんと付き合いたい。
『とにかく、今は光太郎を無視することに専念します。あと、隼人くんを愛することに』
「ああ、お願いします」
もっともっともっともっと、黒宮さんから愛されたい。
○
「なんかいいことでもあったの〜?」
夜ご飯である秋葉の手作りカレーを秋葉と二人で食べていると、ふとそんなことを秋葉が言ってきた。
「え?」
「顔、ニヤけてるから」
どうやら、今日あったことの嬉しさのあまり、ニヤニヤしてしまっていたらしい。
「な〜んか、最近の隼人って機嫌良くない?」
「そうかな」
当たり前だ。
なんせ、黒宮さんに愛されて、付き合うチャンスもあるのだから。
嬉しくないはずがない。
「そうだよ、何があったの? 教えてよ、気になるじゃん」
「大したことじゃないよ」
「そんなはずないよ! ねえ、教えてよ」
教えるはずがない。
教えてしまったら、そもそも秋葉の好感度は下がり、付き合うチャンスがなくなってしまうのだから。
キープとしてしっかりとっとかなくては。
「いや、本当に……」
「ほら、またニヤけた!」
「やっべ」
秋葉はスプーンを置いて、俺を下から覗き込むかのように見る。
「教えてよ〜」
「いや、マジでなんもなかったから……」
そう言うと秋葉はぷくりと両頬を膨らませて。
「嘘つきぃ〜。めちゃくちゃ気になるなあ〜」
「言わないぞ」
「ケチ〜。私たち、兄妹みたいなもんじゃん? かくしごとしないで教えてよ〜」
「なら、お前こそ、好きな人が誰なのか教えてくれよ」
すると、秋葉はボワっと顔を真っ赤にして。
「む、無理だよ……それは……」
チラチラとこちらを見ながらそう言う。
本当にわかりやすいやつだ。
それだけ使いやすいやつというわけだ。
使えるものはしっかり使ってやる。
俺は秋葉の瞳をじーっと見ていると。
「むむむ無理だから! そんなにじーっと見られてもさ!」
「ほらな? 言いたくないだろー」
「う、うん……」
まあ、言わなくてもわかってるけどな。
「ってことだよ。だから、内緒」
「ぐぬぬっ」
下唇を噛む秋葉。
「まっ、俺の好きな人は案外近くにいる人だよ……」
なんて、思わせをさせるために言ってみた。
彼氏に浮気されて病んでいた学年一可愛い女の子を助けた結果、責任を取る形でシてしまった件 さい @Sai31
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。彼氏に浮気されて病んでいた学年一可愛い女の子を助けた結果、責任を取る形でシてしまった件の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます