星恋ロマネスク

存思院

恋々として清廉

 さあ神の気配に満ちる中今の夢境、心臓で跳ねる狂い咲きの歌に恋々として清廉、如何に帽子の陰影あるとも、不条理にも惹かれて落ちる先に何もないことは知り尽くし、いくつかの偶然が人をめぐり合わせるのか、立ち止まり得ぬ今日この瞬間には、甘い夢を遠景に来るはずない連絡を待つしまつ。

 恐るべきことは、君に魅せられる理由に一寸も心当たりのないことで、はじまりは個人的なフェティシズムによるにしても、薔薇の蕾にひらくすべてが内包されるように、そこにこの想いすべてがあると断じては性的に過ぎ、静かなる湖の囁きの波と君の声を重ね聴いてなお! 愛欲の園に至る決意は満たされまい。

 華文で飾り立てるのも、幻酒に酔うような二重の酩酊があるからこそ、油の跳ねた傷跡の細腕に耐えがたい美を見出してしまうとは、私は主観的な生き物であって、世の中は解釈の可能性に満ちた未然で充満し、ある絶対先天的構造に囲われた此処、花壇の砂粒のひとつは、言祝がれ、十方の神々に礼拝され、蓋然性の波に洗われて透き通る。

 三重の花束を贈る日の来ることを、守灯馬陸がお慕い申し上げ、祈りに代わり奏し奉る由。

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