第21話(絵あり)地下の「迷宮の迷路」へ遊びに行こう! 前編

近日ノートの★17★、ルタの写真~サンクの迷宮の迷路~に挿し絵があります。




2週間の衣服講座が終わった次の日、

朝起きると、

「おはよう。クレイも今日は休みだよね?」

ガレットが言った。

「おはよう。うん、休みだよ」

僕が言うと、

「やったぁ」

アイザックとガレットが、とびはねて

喜んだ。

「どうしたの?」

ジュノーに聞くと、

「みんなの休みが重なるのってあまりないから、みんなで『迷宮の迷路』に行こうかって話をしていた」と言った。

「迷宮の迷路?」

「クレイ、聞いたことない?」

「何を?」

「ラビリンスや地下の迷宮、洞窟とかオーパーツ、都市伝説だよ」

ジュノーが、小さな声で言った。

「う……ん? そう言えば、スカイが生活感のない洞窟とか、古代の核戦争? 敵から逃れるための避難所みたいなものがあるって言っていたような気がする。具体的には、どんか感じなの?」

「そう、それだよ。生活感のない複雑にいりくんだ地下の施設がオーパーツの中にあるんだけど、それは、核や敵から逃れるためではなくて、実はただの娯楽施設だった、と僕はサンクに来てから、思っているよ」

「そうなの? え!? オーパーツになっている場所にいけるの?」

僕が驚いて聞くと、

「実際のオーパーツではないけど、それ風な場所かな」

ジュノーが、ニコッとした。

僕はスカイと再会した時に、「オーパーツのような場所に行ったよ」と話したい、と

ワクワクした。


僕達は、洗顔タオルで顔を拭いて、髪の毛を

整えて、新月塔のエンヴィルに入って、

1階へ行き、接続通路を通って、中央塔へ

行き、また接続通路を通って、公共塔へ

行った。

公共塔の3階に「迷宮の迷路」があるので、

エンヴィルに入って、みんなで、

「3階」と言った。

僕達の体がふわっと動き出して、

3階で止まった。


エンヴィルを出ると、数人の人が、

迷宮の迷路の出入り口の前に、並んでいた。

その列の一番後ろに、僕達は並んだ。

「ここに来たことはある?」

3人に聞くと、

「今日が初めてだよ」

「そうなの?」

「来てみたかったけど、なかなか休みが合わなくて」

「そうだったのか」

話をしていると、僕達の順番が来た。


「こちらをご覧ください。これは、迷宮に住んでいる、迷宮仕様のリルです」

迷宮の迷路の案内係をしていた、レラルが、

特殊な映像でできた模型のリルを指さして

言った。

「これが……リル?」

「面影はすごくあるけど、なんだかダークな雰囲気だし、とても危ないものを持っているよ」

「まったく危なくないですよ。これは、偽物というか、アクセサリーです。迷宮の怪物! という雰囲気を出したくて、持たせてみました 」

レラルが得意げに言った。

「アクセサリー?」

「余計なものを持たせているよ」

「アクセサリーなの、と気軽に言える代物ではないよ、あれは」

僕達が、模型のリルを見ながら、文句を

言っていると、

「ルールを説明していいですか?」

レラルが、様子を伺うように僕達に向かって

言った。

僕とアイザック、ガレットには、聞こえて

いなかったけど、

「お願いします」

ジュノーには、聞こえていた。

「ほら、ルールを聞こう」

ジュノーが、模型のリルに注目していた

僕達の肩を優しくたたいた。

「ルールを説明しますね。時間内にゴールまでたどり着いてください。制限時間を過ぎると……たぶん、恐ろしい展開になります。迷路の中に、『おやすみキャンディ』というアイテムが特殊なエアボウルに入って、置いてあります。これは、迷宮に住むリルの大好物です。リルに見つかって食べられそうになった時に、キャンディをリルの口へ投げ込むと、袋に記載されている時間だけ、リルが眠ります。この間に逃げてください」

レラルが、ニコッとした。

「リルに食べられるの!?」

ガレットが、目を丸くした。

「この危険なアクセサリーに、刺されるのかと思った」

アイザックが言うと、

「あれは、あくまでも演出のためのものなので、刺さりませんよ。安心してください」

レラルがまた、ニコッとした。

「刺さらないのは、よかったけど、食べられるのも嫌だな」

「うん、どっちの展開も嫌だよね」

「制限時間は、3時間です。知恵を絞って、頑張ってください」

「あの、リルに食べられたらどうなるの?」

恐る恐るガレットが聞いた。

「それは、食べられてみてからのお楽しみですよ。次の人が待っているので、さっさと進んでください」

レラルが言うと、

通常の姿をしたリルが、僕達の背中を

しっぽでまとめて押してきた。


強制的に、迷宮の迷路の入り口をくぐった

僕達。

「ねぇ、レラル……」

「あれ? いない」

「入り口って、扉なかったよね?」

「壁しかない……」

リルに押されて、扉のないアーチ状の

入り口をくぐって、すぐにふりかえったはず

なのに、僕達の目の前にあったのは、ただの

壁だった。

「一度入ったら引き返せない、お化け屋敷パターンだね、これは。つなぎ目すらない」

ジュノーが冷静に、壁をさわりながら分析を

した。

「そうか……だとしたら、おやすみキャンディが欲しいね、念のために」

ガレットが、周りを見渡しながら言った。

「うん、欲しい!」

アイザックが、激しく同意した。

「とりあえず、進む?」

僕が言うと、

みんながゆっくりとうなずいた。


一本道の薄暗い通路をしばらく進んで行くと

3方向の分かれ道が現れた。

「さっそく分かれ道だ。どれにする?」

アイザックが人差し指をなめたあと、

人差し指を立てて、分かれ道の入り口に

順番に立った。

「何をしているの?」

僕が聞くと、

「僕が思うに、左の道がいいと思う」

アイザックが、ニコッとした。

「どうして?」

ガレットが聞くと、

「漫画で見たことがあって。風、空気の流れを感じていた」

アイザックが、人差し指を立てた。

「あぁ、なるほど。空気の流れか。僕も冒険系の話で見たことがある」

「では、アイザックを信じて、左へ行こう」

通路を少し進むと右に曲がっていて、

しばらく進むと行き止まりだった。

「よし、ここは予想通り、違うことが確かめられたから、戻って、隣の通路へ行こう」

アイザックが、大きな声で言った。

「ごまかしている、間違ったことを」

ガレットが笑うと、

「素人だから、仕方ないだろう」

アイザックが頬を膨らませた。

「ひとつ、ひとつ確認してみよう」

僕が言うと、

アイザックがうなずいた。


僕達は、来た道を戻って、隣の通路へ

進んだ。

しばらく直進だったけど、分かれ道が

現れた。

「どちらに行く?」

「ちょっと待って。僕がみんなを導くよ」

ガレットが、人差し指を立てた。

「ん……ん。分かった! こっちだ、左へ行こう」

ガレットが言った。

「本当に大丈夫?」

アイザックが、目を細めた。

「もちろん、博士を信じなさい」

ガレットが、自信満々に言った。

「博士って」

僕とアイザック、ジュノーが笑うと、

ガレットは照れ笑いをした。


左の道を歩いていると、

ザーザー。

急に雨が降ってきた。

「通路というか、トンネルのような感じなのに、雨!?」

ズズズズズ……。

「何か言った?」

雨の音がすごくて、お互いの声が聞こえな

かった。

横にいたジュノーが、僕の肩をたたいた。

「どうしたの?」

僕が、ジュノーの耳元で叫ぶと、

「何かいる」

ジュノーが、ガレットを指さした。

「何? ガレットがどうしたの?」

僕が言うと、

「違うよ、僕達が通ってきた通路を見て。何か光っていない?」

ジュノーも、僕の耳元で叫んだ。

「……本当だね、何か光っている。見に行ってみよう」

ズズズズズ……。

「見つけたぁ」

雨の音が一瞬、止まって、

低い声が聞こえた。

「え?」

何かが大きな口を開けて、近づいて来ている

ことに気がついた。

「みんな、逃げよう! 何か分からないけど、やばそう」

僕は、ガレットの手をつかんで走った。

ジュノーは、アイザックの手をつかんだ。

「どうしたの? あれは何?」

「分からないけど、『危険』だって、本能が言っている」

僕達は雨の中、一生懸命、一本道の通路を

ひたすら走った。


「うわぁ」

「え、どうし……うわぁ」

僕達は足元をよく見ていなかったので、

穴の中へ落ちたようだった。

「大丈夫?」

「こんなところに落とし穴を掘ったのは、誰?」

ガレットが不機嫌そうに言った。

「誰って……それはもちろん、さっきの……」

アイザックが話すのを途中でやめた。

「まさか……」

僕達は顔を見合わせた。

「さっきのやつが、ここに来たら終わりだよ」

僕達は、恐怖におののきながら、穴の上を

見上げた。

しばらく見ていたけど、何もやってくる

気配はなかった。

雨もいつの間にかやんでいた。

「よかった、……どうにか逃げきれた」

「この穴は、さっきのやつの仕業ではないみたいだね」

「とりあえず、ここを出よう」

這い上がれる場所がないか、円形の穴の中を

探っていると、

「みんな、こっちに来て」

アイザックが、叫んだ。

「どうしたの?」

「これ、見て」

「手の形に見える」

ガレットが、おもむろに手のひらをくぼみに

置いた。

ガコンッ、ガタガタ。

「何!?」

落とし穴全体が揺れ始めた。

「手のひらを置いたら、駄目なやつだったのかな!?」

「迷宮の罠に、まんまとはまったのかも!?」

僕達は4人で抱きしめ合いながら、その場に

かがんで、目を閉じた。


揺れがだんだんおさまってきた。

恐る恐る目を開けると、壁の一角に、先ほど

まではなかった、奥へと続く通路があった。

「秘密の通路?」

「もしかしたら、おやすみキャンディの隠し場所とか!?」

ガレットの瞳が、キラキラしていた。

「よし、貰いに行こう。お宝を」

アイザックが、いきおいよく立ち上がった。

「大丈夫かな?」

なんの疑いもなく、得体の知れない通路へ

入って行ったガレットとアイザックを見て、

僕が言うと、

「ここにいても仕方ないし、進んでみよう」

ジュノーが、ニコッとした。

僕とジュノーは、手をつなぎながら通路へ

入った。


通路には、ところどころに照明器具がついて

いたけど、薄暗くて、不気味だった。

「どこまで続いているのかな?」

ズズズズズ……。

ドンッ。

アイザックが急に立ち止まったので、

僕は、ぶつかってしまった。

「ぶつかって、ごめん」

「ねぇ……何か、聞こえない?」

アイザックが、振り返って、歩いてきた

通路を見た。

僕達は、周りを見渡しながら、

耳をすませた。

ズズズズズ……。

「あぁ、聞こえた!」

「何の音かな?」

「時々ある、この壁からしみでている地下水? 水の音かな?」

ガレットが、壁を指さした。

「水の音……なんか、違う違う気がする……何かを引きずっている?」

音は、少しずつ、はっきりと聞こえてくる

ようになっていた。

「クレイの言うとおり、何かを引きずっている音に、僕も聞こえる」

ジュノーが言った。

「な……何を引きずっているの?」

ガレットの顔が、青ざめていた。

「何だろうね……」

僕達は、手をつないで、歩いてきた方向を

不安げに見つめた。


薄暗い通路の中に、何かが見えた。

「人影?」


「みぃつけた」


おどろおどろしい声が聞こえた。

「逃げよう!」

ジュノーが叫んだ。

僕達は、つないでいた手をはなして、

走り出した。


「待ってぇ」


おどろおどろしい声が、また聞こえた。

「待てと言われて、待つやつは、いないよ!」

「逃げろ!」

僕達は、叫びながら、一生懸命、走った。

得たいの知れない物体が、追いかけてきた。

「めちゃくちゃ怖いよ。ねぇ、あれ何!?」

「分からないけど、どこに逃げればいいの!?」

僕達は、すさまじくパニックだった。

「あ! 分かれ道!」

「どっちに行く!?」

「ふたてにわかれる?」

「みんなで、一緒がいい!」

「右と左、どっちに行く!?」

どうするか、考えているうちに、わかれ道に

到着してしまい、僕達は、思い思いの方向に

進んだ。


得たいの知れない物体は、僕とジュノーでは

ない方向へ進んで行った。

「あの2人、大丈夫かな!?」

「分からないけど、きっと大丈夫……だよ」

「そ、そうだよ……ね」

僕とジュノーは、薄暗い通路を、ひたすら

走って進んだ。

「ここに穴があるよ」

「入ってみよう!」

僕とジュノーは、通路の途中で見つけた

小さな穴に入ってみた。

体をよじりながら、なんとか通過すると、

少し広い6角形の部屋に出た。

「ここはなんの部屋かな? あれは何?」

部屋の6つの角に、拳くらいの大きさの

球体が浮いていた。

「何だろう?」

「エアボウルかな?」

ひとつに近づいて、さわろうとした時、

ボワンッ。

音がした。

その方向を見ると、部屋の中央の空間に、

立体映像のスクエアが現れた。

「やぁ、挑戦者のお2人さん」

「僕達のこと?」

「そうだよ。ところで、あの2人を助けたい?」

スクエアの横に、オクヴィディギーロが

出現して、得たいの知れない物体から

必死に逃げているガレットとアイザックの

姿が映った。

「ガレット! アイザック!」

僕とジュノーは、オクヴィディギーロに

近づいて、叫んだ。

すると、

「クレイ? ジュノー? どこにいるの!?」

「無事!? 助けて!」

2人の声がした。

「これ……リアムタイム?」

「オクヴィディギーロって、ただの画面じゃないの? 相互通信できるの?」

僕とジュノーが聞くと、

「そうだよ。今、現在、起きている光景で、ここのオクヴィディギーロは、相互通信ができる」

スクエアが、うなずいた。

「今の光景!? た、助けてよ!」

「そもそも、あれは何?」

僕とジュノーが、焦って困惑しているのに、

「あれは、リルだよ。この迷宮の迷路に住む。入る時に見なかったの?」

スクエアがは、落ち着いたようすで言った。

ガレットとアイザックを映していた

オクヴィディギーロに、リルが映った。

「本当だ……入り口で見た、あのリルだ」

「あの、危ないアクセサリーも、持っている」

僕とジュノーが言うと、

「あれに刺されたら、ゲームオーバーになるよ。追われることから解放されるから、いいんじゃない?」

スクエアが笑った。

「刺される!? あれに? でも、レラルは、刺さらないって、言っていたよ」

僕とジュノーが、驚いて言うと、

「痛くはないから、大丈夫」

スクエアが、ニコッとした。

「いや、いや……痛くないとか、そういう問題では、ないよね」

僕の顔は、こわばり、

「うん……出現させたもので、痛くないとしても、すごく怖いよ」

ジュノーの顔は、ひきっつた。


「あの2人を、助けて」

僕とジュノーが言うと、

「助けられるよ」

スクエアは、軽い感じで、即答した。

「どうやって? 2人はどこにいるの?」

「この壁の向こうを、ぐるぐる回っているよ」

スクエアが、壁を指さした。

「この壁の向こう!?」

僕とジュノーは、壁に近づいた。

壁のところどころに、小さな窓がついて

いた。

「どこでもいいから、開けてみて」

スクエアが言った。

僕は、目の前にあった窓のつまみを持って、

ひっぱってみた。

すると、

「うわぁ!」

ドタドタ、ズズズズズ……。

スクエアの横にあった、オクヴィディギーロ

から聞こえてくる音声が、窓の向こうからも

聞こえてきた。

ジュノーも、近くにあった窓を開けた。

「ガレット! アイザック!」

開けた窓に、2人の姿が見えたので、

僕とジュノーは、叫んだ。

「どこにいるの!?」

ガレットは、走りながら辺りを見渡した。

「ここだよ!」

僕とジュノーは、片手を窓から出して、

手をふった。

「壁から手が出ている!?」

アイザックが、叫んだ。

「クレイとジュノー!」

ガレットが叫んで、近づいて来た。

僕の手をガレットがにぎって、

ジュノーの手をアイザックがにぎった。

「クレイ! ジュノー!」

「よかった、無事で」

「スクエアによると、ガレット達は、ぐるぐる通路を回っているみたい。さっきの分岐点を僕とジュノーが行った方向に来て」

僕が言うと、

「うん、分かった」

ガレットとアイザックが、力強く、

うなずいた。


僕達は、なんと言うか、大冒険に出ている、

パーティーのような気分になっていた。

着ていた服は、いつもの服だったけど、

みんな、勇者に見えた。

ガレットとアイザックを迎えに行くために、

部屋を出ていこうとしたら、入ってきた

小さな穴が、鉄格子で塞がれていて、

中央にイイイイスターの輪郭をしたくぼみが

あった。

ガンガンガン。

僕は、鉄格子を両手で持って、揺らした。

「自力では、開かないよ。部屋にあるエアボウルのどれかに、この部屋の鍵が入っている。間に合うといいね、頑張って」

スクエアが、ニコッとした。

「えぇ!? ちょっと待って、それ、どういう意味?」

スクエアは、オクヴィディギーロとともに、

消えてしまった。

「僕達は、閉じ込められたってこと?」

「そうみたいだね……クレイ、とにかく、ここを出ないと」

ジュノーが、鉄格子をつかんでいた僕の手を

持って、はずしながら言った。


僕とジュノーは、部屋の角で浮いていた

エアボウルを持って、鉄格子の前に

集まった。

エアボウルはいつも、エメラルドグリーンの

ような色をしているのに、

ここにあるエアボウルは、カラフルな色で、

月や星、惑星のような模様があるものも

あった。

「これ、本当にエアボウルかな?」

僕は、カラフルなエアボウルのひとつを、

指でつっついた。

「本当だね。指が入らないし、押し擦れない」

「聞き間違いだったのかな?」

「いや、確かに、スクエアは、『エアボウル』と言っていたよ」

「この中に、鍵があるんだよね? どうやって、取り出せばいいのかな?」

「切れ目のような部分もなさそう……」

僕とジュノーは、カラフルなエアボウルを

観察した。


「あ!」

ジュノーが、突然、叫んだ。

「開いた!?」

僕が言うと、

「ごめん、開いてはいないけど、何か映った」

ジュノーは持っていた、緑系の色をした

エアボウルを僕に見せてくれた。

ジュノーの言うとおり、エアボウルの表面に

文字があった。

「何だろう?」

「クイズかな?」

エアボウルには、「四次元と時空とは?」と

いう文字があった。

「四次元と時空? どういうこと?」

ジュノーが、僕の顔を見た。

「四次元、時空……そのまんまの意味だったら、時空は、時間と空間を同列に扱う概念で、四次元は、時間を含めた言い方のやつかな?」

僕が言うと、

「何に、『時間』を含めるの?」

ジュノーが、首をかしげた。

「デカルト平面って分かる? X軸とY軸の座標平面のことで、哲学者のデカルトが発明したものだよ」

「座標……中学の時かな? 習ったね。でも、苦手だったな。ところで、それと四次元は、どうつながるの? 」

「デカルトの座標は、X軸とY軸の2つの方向があるから、二次元で、一般的に『線』が一次元、『平面』が二次元で、僕達の目には、『前後・左右・上下』という3つの軸があるから三次元で、ここに、『時間』という軸を含めると、四次元になる」

僕が言うと、

「おぉ、なるほど。四次元だ……『時間』という軸を加えると、四次元だね」

ジュノーが、興奮気味に言った。

「これで、答えになっているのかな?」

僕が、不安げに言うと、

ジュノーが持っていたエアボウルが、眩しく

光を放ったあと、すぐに暗くなった。

「正解!」

どこからか、声が反響して聞こえた。

しばらく目がチカチカした。

「うわぁ! 助けて」

先ほど開けた窓から、

ガレットとアイザックの声がした。

僕とジュノーは、手探りで、声がする方へ

向かった。

「ごめんね、分岐点に行けなくて。部屋から出るのに、鍵がいると言われて、今、探しているところだよ」

僕が言うと、

「そっちも!?」

「入る時にはなかったのに、鉄格子があって、イイイイスターの輪郭をしたくぼみがあって、スクエアに鍵がいると言われたけど、どこにあるのか分か……」

ガレットとアイザックの声が、遠ざかって

いった。

ズズズズズ……。

「うわぁ!」

剣山のような盾を持ったリルが、窓の前を

通過したところで、目が見えるように

なった。

「ガレット達の方にも、鉄格子があるって……全員、閉じ込められている。しかも、向こうには、怪物もいる」

「早くここを出て、2人を助けよう」

僕とジュノーは、顔を見合わせて、

うなずいた。


「クレイ、これ」

ジュノーの手のひらの上に、

イイイイスターが描かれているものが

あった。

「変な形。これが鍵なの?」

「鉄格子に、はめてみよう」

「うん」

ジュノーは、持っていたものを、

くぼみにはめた。

「これで、助けに行けるね」

僕とジュノーに、希望の光がさした。

でも、はまらなかった。

「向きが、違うのかな? 僕にもやらせて」

ジュノーから受け取って、くぼみの形を

見ながら、合いそうな向きを探した。

「本当だね、はまらない」

「もしかしたら、これではないのかも」

「偽物、ダミー?」

「そうかもしれない。本物と偽物を入れているのかも。残りの5個のどれかにあの鉄格子の鍵があるんだよ」

「そして、エアボウルは、クイズを解かないとだめってことか?」

「どうやら、そういう仕組み、みたいだね」

僕とジュノーは、残りの5個のエアボウルに

書かれているクイズを探した。

でも、どこにも文字は書かれていなかった。

「すべてが、クイズを答えると鍵が貰える、ということでは、ないのかな?」

僕が言うと、

「クレイ! クレイ!」

ジュノーが、僕の背中をたたいた。

「文字を見つけたの?」

「うん、分かったよ。このエアボウル、温めると、文字が浮き出てくる仕組みになっているみたい。ほら、見て」

ジュノーがしばらく、両手でエアボウルを

包み込むように持ってから、指をひろげると

ジュノーが温めた場所にだけ、文字が

現れた。

「おぉ、すごい! ジュノー、大発見だね」

僕が、興奮気味に言うと、

「そ、そうかな。ありがとう」

ジュノーが、照れ笑いをした。

「なんて、書いてあるの?」

「8000年に一度、アイルランド沖に姿を表すと考えられていた、1870年まで真剣に捜索されていた、黒ウサギが住む幻の島とは? と書いてある」

「何それ? 聞いたことないよ」

「8000年に一度、黒ウサギ……幻の島……そうだ、あれのことかも」

ジュノーが言った。

「あれとは?」

「オーパーツが、たくさん載っている本に、似たような記述がされている島があった。『ハイアフンルパラ』という幻の島」

ジュノーが言うと、

「正解!」

またどこからか、声が反響して聞こえて、

エアボウルが、眩しい光を放った。

2度目だったので、僕とジュノーは、

目をとじた。

「さすが、ジュノー。頼りになるね。オーパーツに詳しい人がいると、心強い」

僕が、尊敬の眼差しで言うと、

「あ、ありがとう」

遠慮がちに、ジュノーが照れ笑いをした。

ジュノーの手上に、イイイイスターが

描かれている物があった。

「さっきと形が違うね」

「はまるか、試してみよう」

鉄格子が開く、そんな希望は、

また打ち砕かれた。

「これも、違うみたい」

僕が、残念そうに言うと、

「やり方は分かったから、大丈夫。温めて、クイズに正解して、鍵を手に入れよう」

ジュノーが、励ましてくれた。

「うん、そうだね。がっかりしている場合ではないよね」



○次回の予告○

地下の「迷宮の迷路」へ遊びに行こう! 後編







































































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THE HUMAN LEVEL ~地球人と地球の過去編「クレイと秘密都市」~ まよよてらーの。 @ruyoyo

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