4話埼玉ギルド長

埼玉にあるダンジョンを総轄するギルドのギルド長は今朝全国のギルドに通達されたある通知書と睨めっこしていた。


その通知書の内容とは、ある条件を飲む事によって現在規制が引かれている上級ダンジョンの攻略を依頼できると言う物。


これは、全国のギルド長に取って朗報だろう。

ここ埼玉でも閉鎖されたダンジョンが数多く存在し、その閉鎖方法により中の魔物を押し込めている状況だ。

そう遠くはない未来には魔物達に食い破られ、通常のスタンピートとは比べ物にならない数の魔物が溢れ出すだろう。

それも、多分だが蠱毒の様に共食いをして進化した通常では考えられない強さの魔物が。


こんな事になったのも15年前に日本最強の冒険者を犯罪者に仕立て上げたのが原因だ。

自分は反対していたのだが、周りのギルド長や政府の圧力に負けて合意してしまった。


あの頃の政府は冒険者の政治進出等の理由から冒険者というブランドに傷を付けたかったのだ。

当然、ギルドの役員というのはその政治家天下り先という事もあって冒険者排他の方向に動いた。

甘い蜜を吸うのは自分達だけでいい。冒険者から吸い上げる立場の自分達を脅かされたくないと言った目先の未来しか見えていなかったのだろう。


その結果、冒険者は日本を離れ、ダンジョン協会長は冒険者に奪われた訳だ。


そして攻略されなくなったダンジョンは今自分達の首を絞めている。

自分が死ぬまでスタンピートが起こらないのを願うばかりだった。


しかしこの通知が本当ならそれが解決する。

通知元は日本ダンジョン協会。

協会長は元冒険者ながら騙してくる様な人間ではない。最後まであの冒険者の無実を叫んでいた冒険者だが、だからこそダンジョンの現状を知ってこんな低俗な嘘を付かないと思える。


何にせよ、崖っぷちのわしは縋るしかないのだ。これが本当なら日本滅亡の問題が解決するかも知れない。


藁にもすがる気持ちで誰か他のギルド長が連絡を入れる前に埼玉ギルド長は日本ダンジョン協会に連絡を入れるのだった。

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もぐりの冒険者生活〜高難易度のご依頼承ります〜 シュガースプーン。 @shugashuga

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