3話呼び出しの内容

呼び出された黒野は日本ダンジョン教会本部の一室でその理事長と向かい合って座っていた。


「久しぶりだな、黒野。元気にしてたか?」


「武藤。まさか君が教会の会長になっていたなんて、ビックリしたよ」


黒野の向かいに座るのは武藤狩人むとうかりひと15年前は黒野の同僚だった男だ。

Sランク冒険者の黒野に対して武藤はAランク冒険者。ソロの黒野とは違って武藤は5人組パーティのリーダーを勤めていた男だ。


「出世したなあ」


黒野はしみじみと言葉を漏らした。

当時25歳だった黒野は40になり、武藤は23だったから38歳か。

その年で理事まで出世するのは並大抵のことではないだろう。


「そんな事ないさ。面倒事を押し付けられただけだ。お前は、あの後の事知ってるのか?」


「いや…」


正直、冒険者のことについて調べる気にはならなかった。調べても、意味がないと思っている。

もう一度冒険者をしようとしても、過去の経歴から審査が通らないだろう。


「やっぱりか。お前が逮捕された後な、あの頃の有力冒険者はみんな海外へ行っちまったんだ。

理由は簡単でお前に罪を背負わせた日本の上層部への不信感が原因だな。

海外へ上位の冒険者が流出したことで日本各地の各地の高ランクダンジョンの攻略が滞り、モンスターの進化が起こったりしてダンジョンランクが上がったりした。各社のギルドマスター達は溢れるのを恐れて無理に封印処置をしたりしたんだ。その結果、更にランクが上がり手を付けられなくなり、封印を破るモンスターが現れれば日本が終わるのではないかと言われている。

それを知った前教会理事達は逃げ出したよ。日本のわ捨てて一目散にな。

今はまだ封印があるから一般市民に知られてはないが、これからどうなるか…

俺が理事を引き継いでからは各所のギルドマスターが逃げられない様に俺のクラメンに監視させている。

そこで、なぜお前を呼んだかなんだけどな、」


武藤は一呼吸おいて続きをはなす。


「お前は、俺の知る中で最強の冒険者だ。

だから俺の権限で日本にあるどのダンジョンへの入場も許可する。冒険者登録は冒険者協会意外の政府も関わってくるから再発行は難しいけど、探索はできる様にする。

だから、日本を救ってくれないだろうか」


武藤は、ソファから降りて床に膝をついて土下座をした。


「武藤、俺は___」


「虫のいい話だとは俺も思う。お前を犯罪者にした国を救ってくれだなんて。でも、お前に縋るしかないんだ。この国は」


「…俺が日本を守るか。夢物語だな」


「そんな事はない。お前は一度、日本を守ったんだ」


しかし、それを罪とされて今がある。


「…わかった。だけど、ここまでの話にしたギルドマスター達に責任をとらせる。俺に依頼をする場合、ギルドマスター達の私財で払ってもらう。通常のダンジョン報酬の100倍の値段でだ」


「ありがとう。必ず払わせる。勿論、俺もできる事はやるつもりだ。この国を、よろしく頼む」


武藤は更に頭を下げて地面に額を擦り付けた。


日本に最強の無免許冒険者が誕生した瞬間だった。







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