12,21 春
春になりたいと思いました。
あなたが好きだと言った季節でさえも羨ましくて、羨ましくて。毎日春になりたいと切望しました。
なので桜の木の下に穴を掘って、その中で眠りにつきました。
スコップをさすと固い根っこが沢山出てきてなかなか手こずりました。
桜の木の下はなんだか暖かい、人肌くらいの湯煎に浸かったように心地よくてふう、と息が漏れました。
しばらくすると聞こえてくるのです。たくさんのすすり声が。
これが春でしょうか、そう思い耳を傾けるとなにか言っています。
「ならなかった、かなしい」
悲しい。
悲しい?何故?桜の木の下に埋まって春になるのを待つことがそんなに悲しいことなのでしょうか。
「ならない、なれない」
ああ、そうか。なれない、春にはなれないんだ。
どんなに切望しようとも、喉から手が出てしまうほど渇望しても春を装ってみても所詮わたしは偽物で本物になる事は出来ない。
あなたが好きだと言うので春になろうとしました。
でも出来ませんでした、春じゃない私でも愛してくれるでしょうか。
ぽつり 揺蕩う @yurushi10
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