9/1 深夜

もう私はここにはいれないと思った。

月がまん丸で綺麗だった、この世界で唯一の希望はこのお月様だと断言出来る。

地球は丸いと言ったのは誰なのだろう、私は今地球の縁に立っている。

手を伸ばせばその希望の光に手が届きそうだ、でもやっぱり届かないから背伸びしないといけないんだと思う。

背伸びをしてしまったら、つるりと足を滑らせて宇宙に浮かぶかもしれない。

それはそれでいいだろう。だってそろそろ新しい世界も見てみたいし、色んな人に出会ってみたいと思う。

後ろをふりかえってみると奥に橙色の光が灯っていた。家のリビングだ、リビングと言っても和室にこたつとストーブが置いてあってじいちゃん、ばあちゃんがみかんを囲んでバラエティー番組を見ている。

暖かくて恋しいと思った。

新しい世界も魅力的だが、ここを去るにはあまりにもくるしい。

苦しいけれど選ばなければならない、両方手にすることは我儘だ。

誰にも追いたてられていないのに焦りで汗が吹き出す。手がびっしょり濡れて足の裏がぬるぬるとした。

「ねえ、疲れているのね」

声が、澄み渡った声が耳を通る。

「遊びにおいで、誰も怒らないから」

怒らない、否定されない?

そう聞こうと顔を上げると月夜であるはずなのに負けじと星たちがきらきら輝いて踊り朗らかに歌を歌っていた。

「今までいい子にしてたんだね」

そのままふわりと宙に舞った。


ああ、もう私はここにはいないと思った。

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