am11:03 目覚める前に

気づいたらシチューをコトコト煮込んでいた。煮込む効果音をコトコト、と言った人は天才だと思う。こんなに可愛い擬音を思いつくだなんてと微笑みながら鍋の中を見つめた。2人分のお皿にシチューを盛り付けて仕事から帰ってきてパジャマに着替えた彼女に渡した。

「いただきます」

手を合わせた後、スプーンでシチューを掬いふうふうとそっと息を吹きかけて大きめに切ったにんじんを口に運ぶ。

シチューのにんじんが一番好きだから美味しくなるようにじっくり煮込んだ。それをわかっているかのように1口目に選んでくれたので嬉しくて思わず笑った。

「おいしいね」

ゆっくり味わった彼女もそう笑った。

冬に衣替えした風がしろいレースのカーテンを揺らしている。

テレビつけてと言われたので電源を押すとテレビショッピングが流れた。

こんな時間だから何もやってないねと言ったら後ろからぽそっと呟く。

なんて言ったのか、確認したくて彼女の方を見ると美味しそうに頬張っている。

なんて言ったのか、聞き返さずその顔をじっと余すことなく見つめた。

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