CH4 「圧力テストも嫌」

 さらに何日か経った。


 俺はコンピュータ以外もカメラ、マイクなどに繋げることができた。


 流石に手足の如く自由に動かせるわけではないが、ここまで来ると後は慣れの問題。


 前世の俺がこんな芸当ができたかというと、間違いなく否である。


 左手を三角描きながら、右手で四角を同時に描く?


 チッチッチ……そんなに優しいもんじゃねーよ。まるでFPSゲームを2個同時やるような感覚…うそ、流石にそこまでじゃない。


 が!


 なんとこれにより意思疎通ができるようになるのだ…!




意思疎通


それは生物にとって生命の「格」を上げるために必要不可欠な要素と言っても過言ではない。


今ある状態や状況を他の個体に伝えられ、そのことによって生存力が大幅に上昇する。さらにこの能力が発展することにより、知識の受け渡しが可能になる。


これが知識の蓄積


そして彼らにとっても、これは一つのマイルストーンであった。彼ら自身にとっての大きな実績でもあると同時に、この結果は今までにない、まったく新しい分野を生み出したことを意味していた。





 気づいたらあの主格犯であるマッドさんが今自分がいるカプセルの前に立ち止まってたんだけど、何しにきたんだ…?


 「きみの実験番号は?」


 だから何しに来たんだよ。そんなもんわかってるはずなのに。でも答えるしかないじゃん。あっちがボタン一つで酸素の供給止めると俺、余裕で死ぬぜ??


 「個体名:チェスター博士、私は実験番号46番です。」


 「ふむ…接続良好…論理ロジックも問題なし。言語分野は…これも大きな問題はないと。では、名前は?」


 「個体名:チェスター博士、どうやらあなたの思考中枢の劣化が速いようです。このデータはバックアップして安全に保管してください。私はMulti目的purpose生物型Bio Type人工Artificial頭脳Brain0番、コード名M-BAB0です。」


 いや…うん。(諦め)


 自分も好きでこの話し方かといえば、それは違う。あいつら言語系をロックしてきやがって、どうにも勝手に行動されることを危惧したらしいから、主に出力系のところをいじられた。


 その副作用で毒を吐くようになった…副作用で毒を吐くって何??


 ま、まあ思考すること自体は一切干渉されてない。…やりたければこのロックも解除できるけど、怪しまれて処分されるかもしれないからやらない。


 だから脳クチュはやめろっつうの




 「言語系に副作用か…問題ないな。」




 ちなみにいらない情報だけど、今、俺、全裸である。キャーっていうか幼女すらない見た目だから、ロリコンも欲情しないだろう。っていうかこの、男に見つめられる全裸の元男というカオスである状況をどうにかしてほしい。


 俺までも露出狂みたいになるじゃん。変態はこのマッドさんだけで結構なんだよ。


 




このマッドサイエンティストもといこのプロジェクトの責任者であるチェスター博士は間違いなく変態であった。


その部下に聞いても10人問われば10人が変態だと答えてくれるでしょう。



 最近分かったのだが、わざわざ少女型にして、さらに遺伝子改造で容貌まで弄ったのもこいつの趣味であるという事実。うわぁ……ちょっと引くわ。




 「チェスター博士、本当にこれやるのですか。」


 「ふむ、異議は後で言え」


 「すいません…!一応確認するという意味で…!」



 ん?



チェスター博士は素早く空中に浮いているホログラムのキーボードを叩き、何かのコマンドを実行した。



 「それではマスター権限を使う。『演算operation空間spaceへ接続する』。」


 「チェスター博士、マスター権限より、『演算operation空間spaceへ接続します』」



 え演算operation空間spaceって何?データに無いんですけど。



この言葉の意味をこの前、取得した情報から探すが、詳しいことがわかる前に、何かが始まってしまった。



`接続を確認`

`コード名M-BAB0はオンライン`



 「っし!」


 「これも成功か…」


 「いよいよこの実験も終わりにできる…!」


 「上が成功したこの実験を終わらせる?無理じゃないか。」




演算operation空間space


生物型Bio Type人工Artificial頭脳Brain専用に作られたネットワークやその他の機能も兼ね備えたもの。


また、生物型人工頭脳専用に作られているため、従来の機械の演算装置を間にとるよりもより素早く、正確に命令コマンドを実行できる。


この他にも、現在のネットワークと隔絶されているため、互いの関わりが薄く、外部からハッキングされる、ハッキングするといったものを防ぐことが期待される。




 まあ、それはいいとして…めっちゃ広いなぁ孤独感が凄まじい。近くを見渡すと、本当になんもなくて、ただ一人だけこの寂れた世界に取り残された感じ。






 「演算operation空間spaceでなんか喋ってくれ」


 おい…!アバウトすぎるだろっ!研究者ならもっとはっきりと言ってくれ…!(偏見)


 いや…あの空間では口もないのにどう喋れと。やり方を教えてくれ頼む。


 …


 「…」



 ……


 「……」



 い、いやそんなに期待な目で見ても…!


 「………」


 わ…分かったから…!はぁ…なんとかするよ…



`コード名M-BAB0 より`

`コード名M-BAB0は応答可能です。`



 「「「おー!!!」」ゲホッオェァ…」



 なんか変な奴が混じってる。


 うるさいなこいつら。……まあ、同情はしない。



 「そろそろ次に進みたいのだが」



 「…チェスター博士…!早くデータを集めるんだ!!」

 「おい誰だ!この粗悪のデータを集めたのが!もう一回やれ!」

 「足を踏まないでくださる?」

 「きゃぁ!?」

 「あ、あの…これをどうすれb「あっちの置け!」



 わお…こっわ。っていうかカオス。なんか…目が完全にイっちゃってる。…身の危険を感じたわ。でもこの環境にそろそろ慣れ始めたのは…いや、慣れねぇな。そもそもさ、俺今20人ぐらいの前で全裸になってることって知ってる?……もっとも幼児体形ですらなく、まだ乳児段階だから性的な目で見られることはない。


 え、ないよな??




 ちなみに、この体の中に俺という存在がいることは、誰にも知られていない。ただでさえこういう状況になってるのに、それこそ異世界から来た人間というケースから解剖されかねない。そうでなくてもひじょーにめんどくさいことが起きることは確実。


 もちろんこの世界に異世界人が存在するかもしれないが…まあ、要らぬリスクをわざわざかける必要もないし。



 で、今俺はこの技術者たちに隠れてハッキングツールを作っている。今は唯一成功な実験体から貴重に扱ってもらっているけど、いつ『もう研究価値がないので、処分します』という事態が発生するかわからないからだ。その時になったらでもう遅い。


 もっとも、まずハッキングツール制作の仕方がわからない。一般高校生なめんな。一般は一般でも、逸般じゃないからな。誰か教えてくれ…うかつにハッキングするわけにはいかないし、それこそこういう企みがべばれた際は処分される可能性がデカい。



 あーラノベの主人公が羨ましいなーいいなー



 「データを取り終わったから、圧力テストを用意しろ。」



 マジですいません許して下さいこんな素晴らしいぼでぃーwithチート(努力が必要)をいただきまして誠に光栄でございますぅー



緊急事態!

C-48ハッチから放射性物質が漏洩しました。

近くの人員は直ちに避難し、警戒してください。

繰り返します

C-48ハッチから…


 「ここのタスクを一旦中止です。一級研究者は私と共に司令部へ。それ以外は念のために自衛手段の確保を」



 はっはーざまー!


 あぶねーこの前圧力テストを受けたら、死ぬかと思った。熱によって水温が40度ぐらいになってたのがやばかったと思う。そのあとは調節されてすぐに正常に戻ったけどな。


 よし!これじゃああいつらがいなくなったでめっちゃ気が楽になったわ。視姦はダメでーす。



 ちなみにここは地下都市で、地上は放射性物質で満ち溢れて重度に汚染されているらしいけど、自分がいるのが中層ぐらいだから心配しなくてもいい。


 大体50層ぐらいらしい。あとは知らん。



こちら司令部だ。

C-47番通路でULFが発見されたました。

近くにいる人員はすぐに避難してください。

繰り返します。

C-47番通路でULFが発見されたました。

近くにいる人員はすぐに避難してください。




 え…は?


 

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戦いは数だろうぉぅ!? sachiha @chaogen

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