第10話 最下層のボス戦のはずが
「よっし、案外早く最下層に着くことができたな」
リリィに血を与えてから、数日後。俺たちは無事にダンジョンの最下層に来ることができた。
その道中、モンスターを倒しながら進んできたのだが、そこまで強いモンスターに遭遇することもなく、案外簡単に最下層に来ることができた。
「リリィ、気をつけておいてくれよ。多分、ラスボスはかなり強い可能性があるからな」
「承知しました。ですが、なぜそう思うのですか?」
「多分だけど、このダンジョンに自然発生していた鉱石状のアイテムは、この先にいるこいつの魔力から作られたものだと思う」
俺がレベルやステータスを上げるために使用した数々のアイテム。今さらだが、あれだけのアイテムが自然に発生するのはおかし過ぎる。
可能性として考えられるのは、ダンジョンが大量の魔力を摂取して、消化できない分を鉱石状のアイテムとして精製した可能性だ。
そうなると、あれだけのアイテムを作ることが可能なほどの魔力を持ったモンスターがこのダンジョンの主ということになる。さすがに、一撃で倒してきたモンスター達とは格が違うだろう。
「自然発生したアイテム、ですか」
「よし、それじゃあ行くか」
もしかしたら、すでに早乙女達が倒しているかもしれない。そんな一縷の希望を胸に、俺はダンジョンの最下層の部屋の扉を開け放った。
「ギシャァァアァ!」
俺たちが扉を開ける前から、俺たちの気配に気づいていたのかもしれない。八メートルほど肉食の恐竜のようなモンスターが俺たちに向けて威嚇するような声を上げてきた。
早乙女達が倒してくれているなんて、そんなご都合主義的な展開ではなかったらしい。
「とりあえず、俺が斬りかかるからサポート頼むぞ!」
「承知しました、京也様」
俺はそんな言葉をリリィに残すと、地面を強く蹴って走り出した。それと同時に『モンスター攻略法』を起動させて、俺が斬りかかるべき箇所と体の動きを任せることにした。
「『中級魔法攻略』。『肉体強化』、『斬刃』」
『モンスター攻略法』が『中級魔法攻略』を使用して、中級魔法を使用した。筋力の増強と短剣に斬撃の強化を付加させる魔法。それらの発動を確認して、俺は短剣を引き抜くと同時に、強化された脚で地面を強く蹴った。
「ギャアア?」
モンスターも理解できない程一瞬で、俺は肉食の恐竜のようなモンスターの首元に跳んでいた。そして、俺は少しだけ皮が薄くなっていたそいつの首元に、力一杯に短剣を振り抜いた。
「ギャアアッ!」
そして、俺の斬撃をもろに受けたモンスターの首は吹っ飛んで、その場にモンスターは倒れ込んでしまった。
「……え?」
倒れた? え? 俺の一撃でか?
「お見事でした、京也様」
「え、ああ。ありがとう」
後ろからやって来たリリィは俺が一撃で倒したことに対しても特に驚かず、当たり前のことが起きたような顔をしていた。
「どういうことだ? なんで俺の一撃で倒れてんだよ、最下層のボスだろ?」
すぐに復活してくる系のモンスターということもなく、俺に首を切られたモンスターはその場に倒れ込んでいて立ち上がる素振りを見せようとしない。
あれだけのアイテムを精製するほどの魔力を持っていると思っていたが、思い違いなのだろうか。
「もしかして、本当のボスは早乙女達が倒していて、こいつはその後に湧いて出ただけの弱いモンスターなんじゃ……」
「いえ、紛れもなくこのダンジョンの主かと思われます」
「でも、それだとアイテムがあんなに発生していた説明がつかないだろ?」
「多分、そのアイテムが発生していた原因は私です」
リリィは顔色一つ変えずに、平然とそんなことを口にした。俺がリリィの言葉に返答できずにいると、首を小さく傾けて俺の返答を静かに待った。
「え?」
ようやく発することができた言葉は間が抜けたような一言だった。これ以上待っても俺から言葉が出てくることはないと思ったのか、リリィは静かに言葉を続けた。
「ですから、私の魔力が源です。私の魔力が強すぎたんでしょう。まさか、そんなアイテムを作ってしまっていたなんて知りませんでした」
「……とりあえず、ダンジョン出てから話を聞こうか」
こうして、俺達は肩透かし感満載のダンジョンの主を撃破して、地上へと帰還したのだった。
『攻略本』を駆使して、異世界で生きていく。~はずれスキルのはずだったのだが~ 荒井竜馬 @saamon_
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