【短歌】孤独になれなかった人のために

テイル

孤独になれなかった人のために

孤独とはひれ 騒がしい水に沈むすべ 深く深く、深く、まだ深く


孤独とは死 近いようで遠いから疲れたフリで「ほしい」だなんて


孤独とは猫 めくってもめくっても猫 かわいけりゃ文句もなかろう


孤独とは火をけることでタールを含む煙を発する種類のたばこ


孤独とはかじかむ手 傷ついたことに気づかず粘つく赤黒い汚れ


孤独とは造花 朝露に濡れながら鮮やかに咲く乾き切った花


孤独とは魔法のランプを踏みつけて進んだ足の曲がりくねる跡


孤独とは流星 願いの尾を引いて意味もないまま燃え尽きる星


孤独とは荒波の中を上下する、すっとぼけたつらをした鴨


孤独とは酷薄なまでの寛容さ ゆるす 赦さぬを望まれても


孤独とはあかぎれ 潤った分、渇いて割れる しょっぱい味


孤独とは恋の矢を捨てて言う強がり「お前の思うようにはならない」


孤独とは一方通行 満ち足りた人は二度と孤独になれない


孤独とは幽霊 「人は独りでは生きていけない」ということなので


孤独とは持て余す生 震える手に赤い花が咲き白い花が香る


孤独とは雨の降る朝 黙々と歩く人々 独りの大勢


孤独とは寝過ごした昼 鈍痛の響く頭が真理を悟る


孤独とは夜の曇天 月をおぼろに彩る程度ならいてもいいでしょ


孤独とは寝そけた夜更け カラスすら鳴けば答えるものがいると知る


孤独とはろうの翼 どこまでも羽ばたいていく 憧れるまで

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