一卵性双生児

健さん

第1話

俺は館恭兵。っていうか”芸名”である。そうなのだ。俺は俳優。刑事ものとか、恋愛ものとかで、今や引っ張りだこだ。あと、お笑い番組も、レギュラーで出演している。本名は柴田ひろし。双子の兄弟がいて、ヤツの名は柴田たかし。共に、40歳だ。たかしは、普通のサラリーマン。俺たちは、40だというのに独身。ある週刊誌に”館恭平に隠し子が、いてその女性は、元モデル。”という根も葉もない記事を書かれたことがある。全くのガセネタ。どこからこんなネタが、出てくるのか。この出版社を、告訴しようと、思ったが、やめた。それだけ騒がられるってことは、人気のバロメーターだと思ったのだ。”火消し”に大変だったが、人の噂も75日だ。いつのまにか、自然消滅した。両親は、早くに亡くし、俺は2年前に3階建ての家を購入した。この家に俺たち2人で住んでいる。しかし、独身と言ってもいかんせん俳優でイケメンだもの。女は、”何人か”いる。隠し子はいないが。自分で言うのは、なんだが、金もあるし、名誉もあり、しかもイケメンだからもてないわけがないのだ。誰に似てるって?少し古いけど、自分では”杉良太郎”に、似ていると思っているが。芸能界という所は、売れれば稼げる。一般サラリーマンとは、ちと、違う世界だ。お笑い番組に、”ちょこっと”でただけで、200万円なり。しかも、収録に2時間だけで、だから恐れ入る。他の仕事やってられまへんわ。しかも難しいことはない。コメントしたり、あまり面白くなくても、ただ笑ってればいいのだから。短期間で、何億と、稼げるのだから、やめられまへんわ。その分、税金で持っていかれるけどね。一方たかしはというと、俺と、全く同じ顔しているが、性格は、全く違う。どちらかというと、引っ込み思案で目立つことが、嫌い。俺のこのタレント業をバカにしていて、よくけんかする。あいつに言わせれば、”芸能人なんて、何も保障が,ないじゃないか!水商売と同じで、銀行からも、借りれないだろう。俺は、コツコツと細く長くサラリーマンとしてやるのが、性に合っている”と。輝いているのは、今のうちだと。まあ、間違ってはいなく、一理あると思うが、まあ俺から言わせれば稼いだ者勝ちだ。1回、”ザ・たっち”のように双子タレントで、一緒にやらないかと、事務所も承諾してくれてヤツに話したことが、あるが、けんもほろろで、断られた。せっかくのチャンス与えてやったのに。馬鹿なヤツだ。金も儲かるし、女にも、モテるというのに。まあ、せいぜい、サラリーマンで、頑張ってくださいよ。俺の1日というのは、ドラマで、外でのロケもあるが、だいたいスタジオの仕事が主だ。スタジオの中にこもりっきりと、いう日もある。まあ、だいたい終わるのが、夜の10時、11時だ。マネージャーに行きつけの銀座のスナックまで送ってもらい、飲み終えて、タクシーで、女の家へ行くのが日常だ。だから、家には、ヤツが留守番。まあ、1か月に2,3回帰ればいい方だ。ヤツのために家を購入したようなものだ。そして、本日の仕事は、T〇Sで、ドラマの収録で、”渡る世間は、老人ばかり”の収録だ。終わってから、いつも行く銀座のスナックへ行く。今日は、ママさんの誕生日だというので、ビトンのバックを、プレゼントしようと思っている。しかし、この日に限って、マネージャーは休み。だから、今日は俺の愛車のフェラーリでスタジオ入りだ。”お疲れ様でした!”と、終わり、フェラーリで、銀座へ。(いつも、検問なんて、やっているの出くわしたことないし、大丈夫だろう。)ママさんにプレゼントを渡し、盛り上がって、結構飲んだなあ。結局2時まで居た。そして、そのまま、フェラーリで、女の家へ。出発進行!でも、フラフラ。大丈夫だあ!いや、大丈夫じゃなかった。え!!いつもやってないじゃん!?そう、検問だ。(飲酒検問です。息してくれますか?)「はあ~。」(んん、飲んでますね。ちょっと、パトカーまで来て頂きますか?)そして、検知器で、0.25出てしまった。(だいぶ飲んでますね?あれ、ひょっとして、舘恭兵さんですよね。)もう俺は、観念した。「そうですが、ひょっとして、俺逮捕ですか?」(履歴みたら、10年前にも、飲酒運転で、検挙されてますよね。常習ということで、残念ながら、逮捕します。)「おまわりさん、一つお願いが、あるのですが。」(何でしょう?)「マスコミには、黙っていてくれませんか?こんなこと知れたらもう、俺は、終わりです!お願いします!」(タダで?)はあ?俺は、耳を疑った。俺は、3万円”袖の下、通した。(わかった。黙っておくよ。)日本の警察が、こんなことでいいのか!!アジアのどこかの警察と、変わらないじゃないか。と、言っても3万でなら、安いものだが、、、。何か複雑だな。そして、留置場について、警官に頼んだ。「”弟”がいるのだが、電話させてくれないか。」承諾を得て、たかしに電話した。「ごめん。夜中に。」「どうしたのよ。今頃?」「実は、飲酒運転で、捕まってしまって、今〇×警察署の留置場にいるのだが、端的に言うと、世間にばれたら大変なことになるし、俺も終わりだ。それで、俺の影武者になってくれ。」「え~!!その前に警察だって黙ってないだろう?」「いや、賄賂渡してあるので、大丈夫だ。」「だいち、俺に芸なんてないのだから、できるわけないだろう?」「2週間は、ドラマの撮影はなくて、全てお笑い系の仕事だ。てきとうに、コメントしたり、ただ、笑ってりゃあいいんだよ。頼む!俺が、留置されている間だけでいいからよ。お礼に500万やるから。」「しょうがないな。俺はどうしたらいいんだ?」「マネージャーに電話しておくから、家に迎えに行かせる。そして、しばらく有休でも使って会社休んでくれ。」案外、すんなり応じてくれた。本当は、あいつ、この仕事やりたいんじゃないのか?まあ、引き受けてくれたから、よかった。今日は、タモリさんの司会だ。俺は、言われた通りただ、笑っていた。てきとうに、コメントして。2時間で、200万?凄いな。サラリーマンじゃ考えられないな。終わってフ〇テレビから、出ると、ファン?サイン責めだ。俺は、しょうがないから、適当に書いた。結構もてるじゃん。さすが、舘恭兵だ。何か、サラリーマンやってるの馬鹿馬鹿しくなってきたな。結局、ひろし、本物の舘恭兵だ。10日で、釈放された。ばれなくてよかった。俺は、家に帰った。夜11時にヤツは、帰ってきた。「本当にありがとう。恩に着るよ。約束通り500万だ。」と、5つの札束を、ヤツに出した。「いらないよ。」「え?いらない?」「10日間やってみて、とても気に入ったよ。俺が、明日からも、”舘恭兵”だ!」「え!!じゃあ、俺は、どうするんだよ?」「サラリーマンとして、俺のいた会社で頑張ってくれ!嫌だというのなら、マスコミに、この事ばらすゾ!!」

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