第15話 最高の誕生日
「よし」
寺島さんが帰ったあと。
俺は早速今夜ご飯に取りかかった。
と言っても、まだ夕方にもなってない。夜ご飯には早いので下準備だけ終わらせ。
暇だったので俺は優々と一緒にソファで寛ぎ、アニメを見ていたのだが。
ふとあることに気づいた。
俺って夜ご飯は作ったけど、誕生日プレゼント準備してなくね?
「っ」
まずい。どうしよう。
今までも優々に誕生日プレゼントをあげてたけど、あれらは全部人と選んでた。一人で選ぶのって変に緊張しそう。
とりあえず今すぐ家を出れば夜ご飯を作る時間には間に合うはずだ。
行く、か。
「? どこか行くの?」
「あー……ちょっと新しい漫画でも買いに行こうかな買って」
「ふぅん」
俺は優々に嘘をついたことに若干罪悪感を覚え、良い誕生日プレゼントを考えながら家を出た。
■■
「ハッピバースデートゥーユー。ハッピバースデートゥーユー。ハッピバースデーディア優々ぅ〜。ハッピバースデートゥーユー!!」
俺が歌うはずだったのに、自分で歌われちゃったんだけど。
「……誕生日おめでとう」
「ありがとぉ〜!」
優々は勢いよく息を吐いてロウソクの火を消した。
見栄えを意識していちごケーキをワンホール買ったけど、多分これ食べきれないな。
優々の目はもうケーキから外れている。
「いやぁ〜いやぁ〜。このピザとかお肉とか全部、夕方理央くんが準備してたやつだよね?」
「まぁね」
「す、すご。私もいつかこういうの作れるようになるのかな……」
「調味料を間違えたり焼き加減を間違えたりせず、レシピ通り作ればできるよ」
「それができないから難しいのっ」
なぜか機嫌を損なわせてしまい。ぷいっと顔をそらさらされた。
俺はただ当たり前のことを言っただけなんだけどな。
「じゃあいただきます」
優々は少し不機嫌になっていたが。
俺の手料理を口にした瞬間。ワナワナと不自然なほど体を震わせ、俺の存在を忘れたかのように食べるのを再開した。
何も言われなくても。美味しくできたんだなってわかる。
「おいしい!」
余程美味しかったのか、口の周りにピザソースがベタベタついてる。
子供かっての。
「顔、すごいついてるよ」
「……へ?」
優々は手で顔を確認し、すぐティッシュで拭いた。
が、まだ顔についてる。
「どう? 取れた?」
なんで。なんで今度はついてなかった鼻の先端についてるんだよ。
「はははっ!」
「ちょっと笑わないでよ! まだついてるのかな……」
そうして楽しい夜ご飯の時間は過ぎていき。
夜ご飯を食べ終え、優々がソファでゆっくりし始めたのを見て。
俺は自分の部屋から夕方買いに行ったものを持ってきた。
「?」
ラッピングしたはいいものの。
少し大きいせいで、何を持ってきたんだと疑いの眼差しを向けられてる。
「これ一応、俺からの誕生日プレゼント」
「えっ!」
疑いの眼差しから一変して、嬉しそうに飛びついてきた。
「見ていい? 見ていい?」
「いいよ」
優々はラッピングをきれいに剥がし。
中の物を見て、満面の笑みを浮かべた。
「この家になかったから、ちょうどホットプレートほしかったの!」
「そっか。よかった」
早速ホットプレートを出して写真を撮ってるのを見て、ホッとした。
ここで「いらない」なんて言われたら、優々の手料理以上のトラウマになるところだった。
「ありがとう」
その声は喜びで少し震えている。
「最高の誕生日だよ」
一人暮らしを始めたはずなのに幼馴染が送られてきた。独占欲が強くて困ってます でずな @Dezuna
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