第14話 男の匂いがする……
◆寺島視点◆
今日、柏原ちゃんの誕生日だって聞いてプレゼントを渡しに家に入れてもらったんだけど……。
「にしても、まさかたまたま開けちゃった部屋が呪われてた部屋だったなんて思いもしなかったよぉ〜。マンションの最上階に住んでるだけあって、スリルあるんだね!」
「あ、危ないところだったんだよ。今度から部屋には勝手に入っちゃダメだからね」
「りょーかいっ」
口ではそう言ってるけど。うちはさっきから気になってることがあって、全然会話に集中できない。
誕生日だからこの家に入ったときから気を遣って何も言ってないんだけど。
玄関に明らかに柏原ちゃんが使わない男物の靴があったんだよね。
あと食器の数をよく見ると、家族で住んでるんじゃなくて誰か他にもう一人いるっていうのがわかる。
男の匂いがする……。
それはもうプンプンする……。
「あっ」
熟考してる私をよそに。
柏原ちゃんはいきなりテレビの前に行き。両手に持ってる何かを後ろに隠した。
「どどどどうしたの? 私の顔なんか付いてるかな?」
「んーや。そういうわけじゃないんだけど……って」
柏原ちゃんは顔にシワを寄せうちの目線をそらした隙に、手に持っていたであろうものを廊下の方に放り投げてしまった。
大事にしてて見られたら恥ずかしいものってわけじゃなさそう。
となると、今投げたものはここに住んでいるであろうもう一人の男のもの……。
って、いやいや。大事なことを考えに入れ忘れてた。
柏原ちゃんは大好きな人がいるんだった。
男と二人で住んでるわけがない。お父さんのものかなにかだろう。
うちってつい考えすぎちゃうなぁ〜。
「柏原ちゃんっ」
「は、はい!」
「なんでそんな強張ってるのさ。はい。これ、誕生日ブレゼント」
「え? ありがと……」
柏原ちゃんは拍子をつかれたようにビックリし、紙袋を受け取った。
「まだ出会ってから日が浅いからどんなものがいいのか悩んだんだけど、やっぱ柏原ちゃんと言ったらこれってものにしたから喜んでもらえると嬉しいなぁ〜」
「メ、イド服……?」
「ふふふ。ただのメイド服じゃなくて、それ猫耳メイド服だから」
「私ってメイドみたいなの?」
「いんや。これを着て大好きなあの人にアプローチすればいいんじゃないかなぁ〜って」
「…………天才」
「でしょ」
柏原ちゃんが猫耳メイド服に夢中になっているとき。
私の目は廊下を向いていた。
誰かがこっちを見ている。
呪われてる部屋に入ろうとしたから幻を見てるのかと思ったけど。
廊下にいる人をよく見ると。
そこには見たことある人がいた。
その人は私たちのことを不安そうな目で見守っている。
服装はラフな部屋着。寝起きのように髪の毛がボサボサ。
……あぁ、なるほど。そういうことだったんだ。
◆理央視点◆
誕生日プレゼントを渡した寺島さんは用事があったらしく、帰るらしい。
「今度はゆっくり遊ぼうね」
「うん。でも、お邪魔虫は早々に退散するよ」
優々は何を言われてるのかわからず、首を横にしていたが。俺はすぐわかった。
なんだ。上手く誤魔化せたと思ってたのに……。
「じゃまた学校でねぇ〜」
「うん。またね」
扉が閉まるその瞬間。
寺島さんが俺の方を見た気がした。
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