第5話 旅立ち

「我らの偉大な戦士! ドンガに! 祈りを!」


 セーバーがズラリと広場に並び、頭を伏せてお祈りを捧げる。

 ドンガに試験官をして貰ったセーバーの数は数百人にも及ぶ。


 十年の間、ギルドを支えて試験官とA級セーバーを兼任していた。

 時には街のために戦い。

 時にはギルドで試験官としてセーバーという誇り高い仕事に送り出す手助けをした。


 本当に命を落としそうな者は試験で落としてある程度強くなるまで育ててから試験を受けさせていた。

 新人セーバーはドンガによって救われていたようなものだった。


 だから、あえて手加減はしない。

 それがドンガの流儀だった。

 誰もに慕われていたセーバーだった。


 皆、涙を流し。

 この結末を信じられないといったふうに話していた。


「まさかドンガさんがやられるなんてな」


「でもよぉ、守護魔将と相討ちだったんだろ?」


「ドンガさんはA級だろ?」


「……そうか。守護魔将が一体生まれるのか」


「あぁ。それって……」


「無駄じゃねぇ。無駄にはさせねぇよ。一緒に居たやつが居たんだよな!? 誰が一緒だった!?」


 その問いに心臓がドキリと跳ね上がる。

 悪いことをしているような。

 そんな気分になってしまう。


 少し俯きながら手を挙げた。


「俺です……ドンガさんに助けてもらいました。自分が死ねばよかった! 自分なんかが生き残ってすみません!」


 思わず口に出てしまった。

 こんなこと言ってもどうにもならないのに。

 懺悔を聞いて欲しくて勝手に話してしまった。


「バカヤロー! ドンガさんは新人を死なすような人じゃねぇ! 名前は?」


「クーヤです……」


「クーヤ、よく生き残ったな」


 俺の肩に手を置きそう言ってくれた。


「最後に何か言ってなかったか?」


 頭にあの時の事が蘇る。


「はい。守護魔将の毒は吸わなくても侵されるから全身を何かで覆い瞬殺するしかない。と言ってました」


「くっ……ちゃんと対策まで伝えて……分かってたんだよな。復活するって…………よしっ。それは共有するんだ。俺達で毒の字力じりきの守護魔将を倒すんだ」


「そうですね」


 守護魔将を倒すのはいいが、いつ来るかなんてわからない。

 という事は、こっちから攻めるしかない。

 俺は、もっと強くなるために旅に出る。


 字力じりきを使いこなして絶対倒してみせる。

 あの時やった技は遠距離から効いた。

 場所によっては仕留められたはず。


 ドンガさん。

 アイツは必ず仕留めます。


「行くのか?」


 そのセーバーは真剣な顔で聞いてきた。


「はい。俺は鍛錬しながら守護魔将を倒すための旅に出ます!」


 これからドンガさんの思いを胸に、クーヤの守護魔将を倒す旅が始まるのだった。

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事故で全身麻痺になった空手少年が異世界行ったら全快して無双しちゃった話 ゆる弥 @yuruya

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